跡部の悩み・7
「別に嫌ってはいない」
「……ぁ…」
ありがとうと言えばいいのか何なのか…言葉が見つからず、何も言えない。
単に興味ない…という可能性もまだ消しきれない。
「…言葉が足りないと言われたから一応言うが、どうでもいいと思ってるわけでもない」
「え…っ」
「たぶん鬼さんや入江さんと同じだろう。中学生の中では一番身近にいるし…後輩か…弟か…そんなようなものに近い気がするが…よく分からない」
「あの…」
「他に言うことはない。お前も食事を続けろ。料理が冷める」
「は…はい」
混乱している時は冷静な人の指示通りに動くに限る。
跡部は既に冷めかけた料理に手を伸ばした。
「ふふっ…鬼くんも紅茶どう?」
「ああ、貰おう。だが、何だその笑いは;」
鬼はカップを受け取った。
「うん? やっぱり一度も名前呼ばないなぁ、と思ってね」
入江は楽しそうにカップに口を付けた。
「徳川。跡部くんの名前知ってるよね?」
「知ってますが」
「じゃあ、言ってみて?」
「『跡部景吾』でしょう?」
何を今更…と言うように、徳川は怪訝そうな顔をする。
ふと目を移すと跡部がまた真っ赤な顔をしていて、更に不思議になった。
「ごめんね。別に知ってればいいんだけど」
徳川には入江の言葉の真意が分からなかったが、跡部もまた徳川が自分の名前を呼ばない理由が分からないままだった。
跡部の悩みはまだ続く…。
(おわり)
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