跡部の悩み・2
「鬼先輩は俺のこと『跡部』って呼びますよね」
「ん? ああ」

「…で、入江さんは『跡部くん』って」
「そうだね」

「でも俺…徳川さんには名前を呼ばれたことないんです;」


あまりに予想外な悩みに入江も鬼も目をぱちくりさせた。


「え? そう?」
「はい。一度も」
「そうかあ? じゃあ一体いつもなんて呼ばれてるんだ?」

「『おい』…とか; あと、特に呼びかけずにチラッとこっちを見て、用件だけ話すとか…;」


入江と鬼は普段のこのテーブルでの会話を思い出す。
徳川は元々あまり話さないし、特に跡部にはあまり話しかけない。
だがたまに話しかけるときの彼は確かにそうかもしれない。


「…プッ!」

入江が思わず吹き出した。


「あはは(笑) 言われてみればそうかもね。なに跡部くん、それが気になるの?」

「なんか…嫌われてんのかな…って; まさか、名前呼ぶ価値も無い…とか;」
「いや、それはないだろう」

「ええ…。割と親切にしてくれたりするんで嫌われてはいないだろうけど…と思いつつも、でも実は徳川さんは皆に親切な人で、俺がおかしな事ばかりするから見かねて助けてくれるのかなぁ…とも;」

いつもコートで自信たっぷりの姿を見せる跡部からは想像できない姿だ。
免疫が無いだけに、ある程度身近な年上にはかなり弱いらしい。


(3に続く)
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