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「虎に翼」解説 三淵嘉子と“男女平等”

初回放送日:2024年4月2日

今月から始まった連続テレビ小説「虎に翼」の主人公のモデルは日本初の女性弁護士の1人、三淵嘉子さんです。三淵さんとドラマのテーマ「男女平等」について解説します。

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出演者・キャストほか

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    清永 聡
    解説委員
目次
  • 『虎に翼』解説 三淵嘉子と“男女平等”

『虎に翼』解説 三淵嘉子と“男女平等”

今回は4月1日から始まった連続テレビ小説「虎に翼」を取り上げます。主人公のモデルで日本初の女性弁護士の1人、三淵嘉子さんと、ドラマのテーマの一つ、「男女平等」についてお伝えします。

【三淵さんは女性初の弁護士の1人】

Q:昨日から始まった「虎に翼」私も楽しみに見ています。

A:主演は伊藤沙莉さん。猪爪寅子・通称トラちゃんが女性法律家として活躍するストーリーです。そのモデルがこの方、三淵嘉子さんです。

Q:清永さんはこのドラマの制作にも参加しているそうですね。

A:私はふだん司法担当の解説委員ですが、初の女性弁護士の1人だった三淵さんについて取材をもう8年ほど行ってきました。このため今回の連続テレビ小説でも、制作に参加しています。

「みみより!解説」では、この「虎に翼」の背景や舞台となった事件、そして当時の司法の世界を、定期的に解説していきます。

1回目は、三淵さんと“男女平等”がテーマです。

彼女は日本初の女性弁護士なのですが、女性は戦前、裁判官や検事にはなれませんでした。

この方が三淵さんです。昭和54年、横浜家庭裁判所の所長を最後に退官した際のニュース映像です。

(昭和54年のニュース映像)

三淵さん「私は戦前に弁護士になったんですけれど、その当時は女性は裁判官にも検事にもなれなかった。どうして同じ試験を受けていながら、女性はなれないのかと悔しかった。もともと私は法曹の中では裁判官が一番合っているという気がいたしましたので、戦後憲法が変わるとともに、すぐに裁判官を希望したわけです」

【嘉子と寅子その人生】

Q:戦前、女性は弁護士にしかなれなかった、司法の世界も男女差別があったのですね。

A:三淵さんは1938年に現在の「司法試験」にあたる試験に合格し、1940年に初の女性弁護士の1人になります。

戦後は、女性も裁判官や検察官になることができるようになります。

1949年に判事補。1952年に判事になり、1972年に新潟家庭裁判所、その後横浜家庭裁判所の所長など務めました。

女性で判事になったのも、所長になったのも、三淵さんが初めてでした。

女性のキャリアアップを邪魔する目に見えない壁のことを「ガラスの天井」とも呼びます。

彼女はいうなれば「司法の世界で“ガラスの天井”を次々と打ち破った女性」というところでしょうか。

【女性が法律を学ぶことの大変さ】

Q:ところで、ドラマのことです。1日に第1回の放送がありましたが、寅子は、お見合いがいやだったのですね。

A:はい。昨日の放送でも、学校で得た知識を社会で生かしたい、というセリフがあります。

Q:ドラマでは「はて?」と繰り返し言っています。

A:これ、納得できないときの彼女の口癖です。ドラマではこの後もたくさんの「はて」が出てきますよ。

このシーン、三淵さん自身も同じ考えだったようです。自分の力で生きていきたい、社会に出たい、という気持ちを抱いていました。

Q:なぜそうした気持ちを持てたのでしょう。

A:それは、父親の存在が大きかったようです。こちら三淵さんの家族の写真です。

旧姓は武藤さんです。お父さんは貞雄さん。お母さんはノブさん。そのほかは弟たちです。ドラマだとお父さんは岡部たかしさん、お母さんは石田ゆり子さんが演じています。実際の貞雄さんは台湾銀行に勤めていて、アメリカ勤務の経験があります。

このため娘に「何か専門の仕事を持つための勉強をしなさい」と勧めたんです。彼女は1932年に明治大学専門部女子部法科に入学します。当時、東京で女性が「正規の学生」として法律を学ぶことができる学校だったということです。女性の法的な立場は当時とても弱く、そんな女性が法律を学ぶというのは、とても珍しいことでした。

Q:お母さんはどうだったんですか。

A:母親は、ドラマと同じように早く結婚してもらいたかったようです。ちなみに、彼女が法律を学ぶと知った母親は「これで娘は嫁に行けなくなった」と泣いたそうです。

Q:法律を学ぶから母親が泣くというのは、今では大げさですが、当時はそれだけ大変なことだったんですね。

【憲法で生きる力を得る】

A:男女平等というテーマは、昨日の第1回の冒頭から出てきます。

Q:主人公が日本国憲法の新聞記事を見ているシーンがありました。

A:冒頭は戦後のシーンです。彼女は身近な人を数多く失って、つらい日々が続きます。

しかし、新しい日本国憲法ができて、そこには「男女平等」が明記されたことを知ります。そこで彼女は歩き出す力を得る、ここは象徴的な場面なんです。

Q:冒頭のシーンには、そうした思いが込められているんですね。

A:ここも想像だけで作っているのではありません。憲法の男女平等を知ったときの思いについて、三淵さん自身が戦後、ラジオ番組で語っている内容があります。お聞きください。

三淵さん「私の一生の中で一番素晴らしい瞬間でしたね。男女平等だって言われたときに。本当に憲法が女性のためだけじゃない、人間が平等になったということは、今の方には分からないと思うわよ。本当に平等じゃなかったんですもの。だからあれだけでも本当に憲法というのは日本の社会を新しい人間らしい社会にした大きな力だと思いますね」

【“ガラスの天井”をどう突き破っていくか】

Q:憲法の男女平等を知ったときの喜びですね。

A:三淵さんはこの時の感激を、生涯忘れませんでした。

ドラマも時に差別と闘いながら戦前・戦後と司法の世界を突き進んでいきます。

トラちゃんがこれからどう奮闘していくのか、そして「ガラスの天井」をどう突き破っていくのかが、見所の1つです。

これからもぜひご覧ください。そしてトラちゃんを応援してあげてください。