安定的な皇位継承をめぐる議論は、各党の意見が出そろい、今月中にも調整に入る。議論の焦点は、国会決議に基づき設置された「皇位継承に関する有識者会議」(座長・清家篤元慶応義塾長)の報告に基づいた、①愛子さまや佳子さまが本人だけ結婚後も皇室に残れる(単独残留)②皇族が旧宮家の子を養子にする(旧宮家養子)の2案だ。
立憲民主党は、女系にこだわる野田佳彦元首相らの抵抗で煮え切らない。だが、公明党と日本維新の会、国民民主党が「旧宮家養子案」に賛成しているので、大勢は決したと言うべきだ。
誤解があるが、いま議論されているのは、「愛子天皇」の是非ではない。すでに法律で、秋篠宮殿下を皇太子とまったく同格の皇嗣殿下とすると定め、立皇嗣礼まで行われている。皇太子が空席というのは不適切だ。議論は悠仁さまに男子がいないときのためのものだ。
いま提案されている2案は、女系継承の可能性も全面的には否定しないにせよ、旧宮家による男系継承の道を確実に確保するものだ。ここでは、男系派の人を念頭に、女系派の旧宮家養子案への反対にどう反論すべきか説明したい。
女系派の主張で一番悪質なのは、一度皇族でなくなった人の子孫の皇族復帰を憲法違反として根絶したがっていることだ。
女系派は「悠仁さま、佳子さま、愛子さまの女系子孫にも皇位継承権を認めたら皇統は維持できる」と言うが、何世代か後には断絶している可能性が何割かある。それでは、天皇制廃絶となってしまう。女系を認める場合でも、旧宮家の復帰も必要なのだ。
「伏見宮家系の旧宮家は現皇室から遠すぎる」と言うが、幕末や明治にも常に皇位継承候補として扱われていたし、北白川・朝香・竹田・東久邇の各家は明治天皇の、東久邇家はさらに昭和天皇の女系子孫という補強材料がある。
「民間人をいきなり天皇にするのは無理がある」という意見もある。ただ、天皇になるとすれば養子になる本人でなく、悠仁さまの子とか孫の世代であって、生まれながらの皇族になる。
また、「希望者はいるのか」と言う人がいるが、旧宮家の人々の最大公約数的意見は、「自分たちが希望する話でないが、頼まれたら最終的にはお受けするしかない」ということである。
「どうして旧宮家の復活でなく、皇族の養子なのか」といえば、民法との整合性もあるが、年齢、家庭状況、本人の資質や意向、そして現皇族との血縁の近さなどを総合的に考慮して選ぶということだ。大変よく考えられた欠陥のない提案だと思う。
■八幡和郎(やわた・かずお) 1951年、滋賀県生まれ。東大法学部卒業後、通産省入省。フランス国立行政学院(ENA)留学。大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任し、退官。作家、評論家として新聞やテレビで活躍。国士舘大学大学院客員教授。著書・共著に『安倍さんはなぜリベラルに憎まれたのか―地球儀を俯瞰した世界最高の政治家』(ワニブックス)、『日本の政治「解体新書」世襲・反日・宗教・利権、与野党のアキレス腱』(小学館新書439)、『民族と国家の5000年史』(扶桑社)、『地名と地形から謎解き 紫式部と武将たちの「京都」』(知恵の森文庫)など多数。