ハリーポッターと何も知らない転生者   作:シャケナベイベー

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すみません、今回だけでは終わりませんでした……次回には終わってるはずです……はい。


因縁は絶たれる

「久しぶりだねピーター──いや、ワームテール」

「パ、パッドフッド……ムーニー……」

 

 スキャバーズが変身した──否、元に戻ったというべきか。ともかくスキャバーズとして活動していた男、ピーター・ペティグリューは冷ややかに自分を見つめるリーマスとシリウスに引きつった笑みを見せる。

 

「友よ……懐かしの友よ……」

「酷いじゃないか。友達だと言うのならこの十二年何故会いに来てくれなかったんだい?」

「こ、こいつが!アズカバンから脱獄して、わた、私を殺そうとしたから!」

 

 ピーターは震える指でシリウスを指し、そんなシリウスの杖腕が上がったのをリーマスが宥めた。

 

「そのために十二年間もネズミに身をやつしていたと?いまだあの監獄を抜け出した者はいなかったというのに?」

「こ、こいつは私達ですら敵わないような強大な闇の力を持ってる!!それがなければ、どうやってあそこを出られる?き、きっと『名前を言ってはいけない例のあの人』がこいつに術か何かを教え込んだんだ!!」

 

 上擦りながらそう叫ぶペティグリューを見ていたシリウスの口から笑い声が響く。

 

「ヴォルデモートが俺に術を?」

 

 心底可笑しいと言ったように吐き捨てるシリウスにペティグリューはビクリと体を震わせる。

 

「どうした? 懐かしいご主人様の名前を聞いて怖気づいたか? 無理もねぇな、ピーター。昔の仲間は君の……いや、お前のことをあまり快く思っていないようだ。違うか?」

「シリウス……君が何を言っているやら……」

 

 シリウスが戸棚を思いきり蹴飛ばすとペティグリューは「ひえっ」と声を漏らし縮こまる。

 

「お前は十二年もの間、俺から逃げていたんじゃない。ヴォルデモートの昔の仲間から逃げ隠れしていたんだ。アズカバンでいろいろ耳にした、ピーター……皆お前が死んだと思ってる。さもなきゃ、お前は皆から落とし前をつけさせられた筈だ。俺は囚人達が寝言でいろいろ叫ぶのをずっと聞いてきた。どうやら皆、裏切り者がまた寝返って自分達を裏切ったと思っているようだった。ヴォルデモートはお前の情報でポッターの家に行った。そこでヴォルデモートが破滅した。ところがヴォルデモートの仲間は一網打尽でアズカバンに入れられた訳ではなかった。そうだな? まだその辺にたくさんいる。時を待っているんだ。悔い改めたフリをして……ピーター、その連中が、もしお前がまだ生きていると風の便りに聞いたら──」

「何のことやら……何を話しているのやら……リーマス、君は信じないだろう? こんな脱獄犯の戯言など……」

「昔ならばそうだっただろう。しかし今はとてもお前の言うことを信じる気にはなれないな」

 

 吐き捨てるようにルーピンが告げた。その声にもまたペティグリューは身を竦ませる。

 

「ヴォ、ヴォルデモート支持者が私を追っているなら、それは、大物の一人を私がアズカバンに送ったからだ! スパイのシリウス・ブラックだ!」

「よくもそんなことを!」

 

 ブラックは般若の形相で叫んだ。

 

「俺がヴォルデモートのスパイだと? 俺がいつ、自分より強く力のある人達にヘコヘコした? しかしお前は……ピーター、お前はいつも、自分の面倒を見てくれる親分にくっついているのが好きだった……自分を守ってくれる、より力のある方を見極めるのが上手かった……かつてはそれが俺とジェームズだった。で、今はヴォルデモートだということか?」

「私が、スパイなんて……正気じゃない、どうして、どうしてそんなことが言えるのか、私にはさっぱりだ……」

「ほう? 理由を聞きたい? なら教えてやろうじゃないか、ピーター・ペティグリュー。ジェームズとリリーの『秘密の守人』はお前だからだ」

 

 それを聞いたハリーが息を呑む。同じくフランクとアリスも今までよりさらに鋭くペティグリューを睨んだ。

 

「……やっぱりそうだったんだ……」

 

 そしてリオンの呟きが閉じられた部屋に響き渡った。

 

「俺は当時のことを詳しく知っている訳じゃないですけど確かにペティグリューを『秘密の守人』にするのは敵を欺く目的として大いに役に立ったでしょう。実際にルーピン先生の話では死喰い人達はシリウスさんを狙ったみたいですし」

 

 シリウスとペティグリューを交互に見ながらリオンは自分の考えを語る。そしてそんなリオンの顔を見たペティグリューが凄まじい勢いでリオンの足元にすがった。

 

「……あぁ、あぁ……リオン、リオンだろう?私だ、ピーターだ!君は覚えていないかもしれないが産まれたばかりの君を抱っこしたことだってあるんだ……お願いだ、私を助けて……」

「……よくもリオンにそんなことが言えたな裏切り者が」

 

 情けなくリオンにすがり付くペティグリューを見たシリウスが地の底から響くような声を漏らす。

 

「お前がその子にすがれるような立場だと思っているのか?お前の行動が原因でレックスがどれだけ追い詰められたのか知らないとは言わせんぞ」

「……どういうことだシリウス?」

 

 シリウスの言うことが分からず、その場の全員が首を傾げた。いや、ペティグリューだけは心当たりがあるのかガタガタと体を震わせていた。

 

「……そうか。フランク達は知らなかったな。いいさ、知る権利があるんだ。ピーター(コイツ)はな、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「───は?」

 

 その衝撃の告白にフランクやアリス、リーマスやリオンは呆けたような声を出し、誰のことか分からないハリー達は疑問符を浮かべる。

 

「リオン、エドガーとマーリンって?知ってる人?」

「……エドガー・ボーンズとマーリン・マッキノン。二人とも父さんの学生時代の親友だった人達だ……死喰い人に殺されたって聞いてた……あ」

 

 ハリーの疑問に答えていたリオンは何かに気付いたように声を漏らした。

 

「彼らはそうそう見つからないような場所に隠れてたって聞いたけど、その場所を明かしたのか……?」

「その通りだ。コイツはな、エドガーとマーリンの居場所を死喰い人に伝えた。その結果彼らはあんな悲惨なことになった」

「……そう、か……そういうことだったのか……」

 

 シリウスが怒りを抑えられないとばかりにペティグリューを睨みながら吐き捨てるとフランクが目を伏せながら呟く。

 その中で今まで一言も喋っていなかったハーマイオニーが「ルーピン先生」と声を上げた。

 

「あの……聞いてもいいですか?」

「どうぞ、ハーマイオニー」

 

 おすおずと尋ねるハーマイオニーにリーマスは笑顔で答える。

 

「スキャバーズ──いえ、この人、三年間ハリーと同じ寮の寝室に居たんです。この人が本当に『例のあの人』の手先ならどうして今までハリーに手を出さなかったんですか?」

「そうだ!」

 

 ハーマイオニーが呈した疑問にペティグリューが救いの神に会ったような顔をして声を張り上げる。

 

「ありがとう!聞いたかい?私はこの三年間、ハリーの髪一本だって傷付けていない!!」

「その理由を教えてやろう」

 

 嬉しそうに語ったペティグリューの耳にシリウスの冷たい声が響いた。

 

「お前は、自分に得がなければ絶対に何もしない奴だ。ヴォルデモートは十二年も隠れたまま、半死半生の状態だと言われている。ダンブルドアの目と鼻の先で、力を失った残骸のような魔法使いのために人殺しなんてするか? お前が。そもそも魔法使いの家族に入りこんで飼ってもらってたのは何のためだ? 情報がすぐ手に入る状態にしておきたかったんだろ? ヴォルデモートが力を取り戻し、またその下に戻っても安全だと確信できるまで」

 

 しん、と不自然なほど場が静まり返る。唯一の反論を潰されたペティグリューは口をパクパクさせていた。

 

「信じてくれ」

 

 シリウスはハリーの顔を見て、掠れた声で言う。

 

「信じてくれ、ハリー。私は決してジェームズやリリーを裏切ったことはない。友を裏切るくらいなら、私が死ぬ方がマシだ」

 

 その言葉を聞いて、ハリーはようやくシリウスを信じることが出来た。頷いたハリーを見たシリウスは歓喜に打ち震え、瞳を輝かせて涙さえ浮かべた。

 そして一連の話を聞いていたペティグリューは体を震わせていたが、やがて顔を上げシリウスに近付いた。

 

「駄目だ!……シリウス……私だ……ピーターだ……君の友達の……まさか君は……」

「私のローブは汚れてしまった。これ以上お前の手で汚されたくはない」

 

 シリウスが足を向けると、ペティグリューは声を漏らして後退り、次にリーマスに近寄った。

 

「リーマス……君は信じないだろうね……君は私の、一番最初の友達だった!」

「今ではそれを後悔しているくらいだ。あの日、私が君をジェームズとシリウスに紹介していなければジェームズとリリーは死なずに済んだしシリウスもアズカバンに入ることなどなかったろうに」

 

 リーマスが蔑むように告げると、ペティグリューは悲しげに顔を歪め、伸ばしていた手を引っ込めた。

 

「フランク、アリス!生きていたんだね……君達が拷問されて廃人になったと聞かされたときは生きた心地がしなかった……学生時代、君達は私を助けてくれた……だからもう一度私を助けて……」

「残念だわピーター……貴方を捕まえなければならない日が来るだなんて」

「僕らはもうお前を可愛い後輩とは思わない。ジェームズとリリーだけでなくエドガーとマーリンさえ奴らに売ったお前に相応しい末路が訪れることを願うよ……お前は永遠に赦されることはない」

 

 両手を合わせ、まるで神に祈りを捧げるかのようにフランクとアリスに近付くペティグリューだったが、二人の心底冷たい声に後ずさってしまう。

 

「ロン……私はいい友達、いいペットだったろう? 私を殺させないでくれ、ロン。お願いだ……君は私の味方だろう?」

「自分のベッドにお前を寝かせてたなんて!」

「優しい子だ……情け深いご主人様……殺させないでくれ……私は君のネズミだった、いいペットだった……」

「人間の時よりネズミの方がサマになるなんていうのは、ピーター、あまり自慢にはならないな」

 

 ブラックが冷たく言い放つ。

 ロンは痛みを堪えながらも、折れた足をピーターの手の届かないところへと捻った。

 

「優しいお嬢さん……賢いお嬢さん……あなたは、あなたならそんなことをさせないでしょう? 助けて……」

 

 ハーマイオニーは怯えた顔で壁際まで下がった。

 その場にいる全員がペティグリューを見下ろす中、ペティグリューは次にハリーにすがった。

 

「ハリー……私を助けて……ジェームズなら私を助けたはずだ……彼は誰よりも優しく勇敢だった……だから今度も許してくれるはずだ……」

「どの面下げてハリーにジェームズの話をしてやがるピーター!!」

 

 その、あまりにも身勝手な物言いに口調が崩れたシリウスがハリーからペティグリューを引き剥がす。

 先程よりもさらに強い殺意を目に宿したシリウスとリーマスが蹲ったピーターに杖を向ける。

 

「さよならだピーター……向こうでジェームズとリリーに死ぬほど詫びてくれ」

 

 リーマスが冷たく言い放ち、杖先に魔力が凝縮する。そして呪文が放たれようとした瞬間───

 

「やめて!!」

 

 ハリーが二人の前に立って制止する。

 

「殺しちゃ駄目だ。アズカバンに連れていこう。コイツに相応しい罰を受けさせるんだ」

「しかしハリー。このクズのせいで君は両親を失ったんだぞ」

 

 ペティグリューを見下ろしながら言うハリーにシリウスが思い直すよう言い募る。

 

「あぁハリー……ありがとう。君は……」

「勘違いするな。僕のお父さんは自分の親友が誰かを殺して犯罪者になることを望まないはずだ」

 

 顔を上げたペティグリューにハリーが冷たく言い放つ。ペティグリューはガックリと崩れ落ち、リーマスとシリウスはハリーに感化されたのか杖を仕舞った。

 

「これに関してはハリーが決める権利を持つ。我々はそれに従おうじゃないかリーマス」

「……そうだね。しかしハリー。もしもピーターが妙な動きをすれば、やはり殺す。それでいいね?」

 

 リーマスの確認にハリーが頷くとフランクがピーターをロープで縛り上げ魔法で浮かせる。アリスも気を失っていたスネイプを浮かせる。

 そしてリーマスの指示に従い、全員がここを離れることとなった。

 

 

 

 

 

 

「そうだね……念には念を入れておこうか」

 

 道中、そう呟いたフランクが杖から守護霊を出してどこかに向かわせる。

 

「どこに向かわせたの?」

「魔法省さ。今回のことを伝えておかないとね。万が一コイツに逃げられでもしたらシリウスの無罪が証明できなくなってしまう……それと引き渡しのための人材派遣を頼んだんだ」

 

 ハーマイオニーの問いかけにフランクは笑みを浮かべて答える。

 一方で彼らの後方ではハリーとシリウスが何かを話しており、時折ハリーの嬉しそうな声が聞こえることから随分と打ち解けているようだった。

 

「……ありがとうリオン。君の言葉がなければ私は疑うことをしなかったかもしれない」

「いえ、そんな……きっとルーピン先生なら俺の言葉が無くても同じ考えに行き着いたはずですよ」

 

 リーマスとリオンも並んで話し合っていた。リーマスとしてはリオンのお陰でこの考えに行き着く事が出来たのでお礼をしたのだがリオンはそれを否定する。

 

 

 と、リオンの隣にいたルーピンが突如として蹲る。

 

「ルーピン先生!?」

「うっ…ぐぅ……逃げ……ロ……!!」

 

 異常を感知した全員がこちらに駆け寄ってこようとするのをリーマスが苦しげな声で押し留める。

 

「なんでこんな……いや、まさか!!」

 

 リオンが顔を上に向ければそこには夜空と真ん丸の満月があった。

 

「人狼化か!脱狼薬を飲んでないんですか!?」

 

 そんなリオンの驚愕の言葉を裏付けるようにリーマスの体が徐々に狼のものへと変わっていく。

 

「アリス、子供達を下がらせろ!!」

「えぇ!みんな後ろに行って!!」

 

 アリスの言葉通りリオン達四人は後ろに下がる。

 そして眼前でリーマスが完全に狼人間へと変わり、その口から咆哮が響く。

 手始めに近くにいたフランクに襲い掛かるリーマスだったが黒犬へと変わったシリウスが飛び掛かり、互いにもつれ合う。

 そしてシリウスを援護するように、なるべくルーピンを傷付けないような魔法でリーマスを攻撃するフランクとアリス。

 

「ねぇ……なんだか寒くないかしら……?」

 

 状況を見守っていたハーマイオニーが腕を擦りながら呟く。

 

「何言ってるんだよ。夜だから寒いのは当たり前だろ?」

「……違う……この寒さ……もしかして!!」

 

 怪訝な顔をするロンと反対に何か気付いたように空を見上げたハリー。他の三人が空を見ると、そこには十体はくだらない吸魂鬼(ディメンター)の群れがいた。恐らくシリウスという餌を求めてやって来たのだろう。

 シリウス達も気付いたのか空を見上げるが、どうにもリーマスの対処で手一杯のようだった。

 

「ど、どうする!?」

「三人は先生の対処でこっちに来れる余裕がない。……なら俺がやる!」

 

 わらわらと群がるディメンターの群れを前に杖を抜いたリオンが立ちはだかる。

 

守護霊よ、来たれ(エクスペクト・パトローナム)!!」

 

 そう唱えた瞬間、リオンの杖から青白い光となった八咫烏が現れ、ディメンターの群れに突っ込む。

 何体か退けることには成功したものの、やはり全てのディメンターを撃退するには至らなかった。もう一度守護霊の呪文を唱えようとしたリオンの耳に後ろから悲鳴が聞こえる。

 振り向くとそこにはロープから抜け出し、奪い取ったのかロンの杖を手にしたペティグリューが焦点の合っていない瞳でリオンを見つめながら杖先を向けていた。

 

「やめろ!!」

切り裂け(セクタム・センプラ)!!」

 

 吹き飛ばされたハリーとロンがペティグリューに飛び掛かるが、一瞬早くペティグリューの呪文が放たれ、リオンに向かう。

 

「ガッ───」

 

 ディメンターが現れたことで精神を削られていたことも手伝ったのかリオンはそれを防ぐことが出来なかった。

 今まで感じたことがないほどの激痛がリオンを襲い、その体が地面に倒れる。

 微かにハリーとロンがペティグリューを押し倒すのが見えたのとハーマイオニーの悲鳴が聞こえ、さらにはここにはいないはずの父親(レックス)の自分を呼ぶ声が聞こえたところでリオンの意識は急速に沈んでいった。


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