ハリーポッターと何も知らない転生者   作:シャケナベイベー

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今回も短いです。
閑話、みたいな感じかな?


雪の日の想い

「失礼しますルーピン先生。入っても良いですか?」

 

 ダンブルドア先生の助言に従い、ルーピン先生の部屋を訪れる。しばらくして「入ってくれ」と聞こえたので扉を開けて中に入る。

 

「やぁリオン。ダンブルドア先生から話は聞いてるよ。守護霊の呪文を習得したいんだって?」

「はい。ハリーの助けになってほしいからと。後は個人的にディメンターへの対抗手段が欲しかったからですかね?」

「なるほど……確かにディメンターに対抗できるのは守護霊の呪文だけだからね。分かった、力になろう」

 

 そう言ってルーピン先生は近くにあった書物を仕舞い、こちらに顔を向ける。

 

「リオン。守護霊の呪文を習得する上で重要になるのはなんだと思う?」

「その人の幸福な記憶や希望───そういったプラスの感情でしょうか」

「そう!正解だ。守護霊は人のプラスの感情から作り出され、その良い感情を餌とするディメンターに対する唯一の対抗手段だ。だけどこれを習得するのはOWL試験より難しい。有体の守護霊を作り出せる魔法使いもほんの一握りしかいない」

 

 ルーピン先生の言葉に頷く。この呪文はとても高度であり、これを扱えるものはウィゼンガモットや魔法省に優先して選ばれると父さんから聞いたことがある。

 

「今までこの呪文を練習したことはあるかい?」

「はい。それでも中々上手くいかなくて……」

「最初から完璧に出来ることなんてないさ。さぁ、一度やってみよう」

「分かりました」

 

 ルーピン先生の言葉通りに杖を構えて頭の中に幸せな記憶を思い浮かべる。

 友人と話す光景、両親が初めて魔法を見せてくれた時──

 

エクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)!」

 

 杖で円を描き呪文を唱える。すると杖先から銀色の靄が飛び出し辺りを駆け回る。

 ほんのわずかに体が温かくなった気がしたものの、靄はすぐさま消えてしまった。

 杖を下ろし、肩で息をする。

 

「……どう、でしょうか…?」

「いや、その歳でここまで出来ているのなら上出来と言って良いだろう。私が君くらいの頃ならここまで出来なかった筈さ」

 

 感嘆したように先生が声を上げる。とはいえほんの少し術を行使しただけで息切れだ。まだまだ練習あるのみだ。

 

「リオン。君は守護霊を呼び出すときどんなことを思い浮かべる?」

「え?…えーと、両親が初めて目の前で魔法を見せてくれた時とか、友人と何でもない日々を過ごす光景とか…です」

 

 ルーピン先生からの質問に少し戸惑いながら答える。それを聞いた先生は頷くと、笑みを絶やさないまま口を開いた。

 

「確かにそれらは君の幸せな記憶だろう。でも守護霊を生み出す時には決して昔の記憶を思い出す必要はないんだ」

「えっ…と、どういうことですか?」

「そうだな…例えば君や君の友達が笑い合えるような幸せな未来。それを実現させる強い信念。それでも守護霊を呼び出すことは出来るんだ」

「強い信念……」

 

 先生からアドバイスを受け取り、改めて杖を握る。

 思い起こすのは父さんに母さんにマークやランス、ハリー達にドラコ、ブレーズやセオドール。そしてダフネ。俺にとっての大切な人達が笑顔でいられるような世界。そんな世界を実現させたい───そしてそんな未来に進むために俺は彼らを守りたい!!

 

 

 

「エクスペクト・パトローナム」

 

 

 

 心とは反対に落ち着いた声で呪文を唱えた。杖先から銀色の光が溢れ、一つの形になっていく。

 

 

 

 ───これは烏、だろうか?足が三本ある烏が俺たちの周りを飛び俺の肩に乗って一声鳴くとその姿を消した。

 というかあれは日本神話の八咫烏じゃないか?え、八咫烏って実在するのか?ルーピン先生が俺の守護霊を見ても驚いた反応を示さなかった辺りいるのかもしれない。

 

 フッと霞のように消えた烏を見送ると、ルーピン先生が拍手しながらこちらにやって来た。

 

「よくやったリオン!まさかあれだけのアドバイスで守護霊を完成させるなんて凄いじゃないか!」

「いや、それほどでも……それにまだ一度出せただけですよ」

「一度でも出せたのなら大丈夫さ。後は感覚を忘れないように体に染み込ませることだ」

 

 先生の励ましに頭を下げる。ここまで付き合ってくれたことには感謝しかない。

 ルーピン先生も「君に教えることが出来て良かった。」と満足そうに言っていたので交流としては十分な成果だろう。

ちなみにルーピン先生によれば八咫烏は日本に実在するらしい。実物を見たことは無いがこういうのがいると世界の魔法生物の本で知ったらしい。

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 あっという間に時は過ぎ、クリスマス休暇も間近に迫ってきた週末の今日。

 俺はある人物を探して辺りを歩いていた。

 

「談話室には居なかったし大広間にも居ない……さて、一縷の望みをかけて図書室に来たわけだけど……」

 

 呟きながら辺りを見回す。本棚の間を通りすぎ、机を見る。

 

 

 ビンゴ。目的の人物の後ろ姿が見えた。足音を立てずに近付き、声を掛けた。

 

「ダフネ」

「わっ…!!……リオン?」

 

 そっと声を掛けると目的の人物───ダフネは肩を揺らし、恐る恐る振り返った。

 

「もう……脅かさないでよ。どうしたの?」

「ちょっと二人きりで話がしたいんだけど……いいかな?」

「えっ」

 

 俺がそう言うと、ダフネは顔を赤くしたものの小さく頷いて立ち上がった。

 

「だ、大丈夫よ。ちょうど本も読み終わったところだったし」

「良かった。なら付いてきてくれ」

 

 本棚に本を戻しながら笑いかけるダフネの手を取ってスタスタと歩き始める。

 

 

 

 

 

 

 ホグワーツの外に出て雪が降り積もる中を進んでいく。何度か足を滑らせそうになったダフネを支えながらようやく目的の場所に到着した。

 

「……着いた!ここだよ」

 

 ホグワーツにある森の奥。その開けた場所にある湖にダフネを連れてきた。

 夕焼けに照らされた雪の結晶と湖がキラキラ輝き、幻想的な雰囲気を醸し出していた。ダフネは目をキラキラさせながらこの幻想的な景色を眺めていた。

 

「辺りを散策してるときに見つけてさ。いつか連れてきたいって思ってたんだ」

「……えぇ。本当に、本当に綺麗」

 

 感動したように呟くダフネの横顔を盗み見る。夕日に照らされてキラキラと輝く白金色の髪にアイスブルーに輝く目がどこか儚げな印象を与える。

 

「……あの時の返事、今返しても良いか?」

 

 俺の言葉に、ダフネは弾かれたようにこちらを見たが、数秒して「……うん」と蚊の鳴くような声で囁いた。

 俺達にとってあの時と言えば一つしかなかった。

 

「あの時、正直に言えば嬉しかったんだ。だけど、どうしてもすぐには返事を返せなかった。怖かったんだ。返事をして今の関係から変わるのが。ダフネから言ってきたんだから断られることはないだろうとは思っていたけどどうしても踏み出せなかった。そしたらダンブルドア先生やドラコに発破かけられてなぁ」

 

 そう語る俺を、ダフネはどんな顔で見ているのだろうか。

 

「意気地無しって怒ってくれたっていい。臆病者って笑ってくれたっていい。それでも、この気持ちだけは嘘じゃない」

 

 向き直り、その目を真っ直ぐ見つめる。頬が赤く染まり、瞳が波のように揺れている。そうだ。俺は彼女を、ダフネのことを───

 

 

 

「俺は君を愛しているよ、ダフネ」

 

 

 

 言った。俺の思いを。ここでなんと言われようとも俺はダフネのことが好きなのだ。どうしようもないほどに。

 俺の言葉を聞いたダフネは胸の前で手を組み、涙を一つ溢すと問い掛けてきた。

 

「……私で、いいの?」

「君が良い。君じゃなきゃ嫌だ」

「私、きっと重いわよ。もう歯止めが無いんだって嫉妬深くなるかもしれない」

「どんと来いだ」

 

 俺の言葉を受け止めたダフネは、涙を流しながら俺に抱き付いてくる。それを受け止め、彼女の頬に右手を添えるとダフネもその手を握り返してくる。

 

 

 

 

 

 

 

 そして誰も居ないこの場所にある唯一の二つの影が、一つに重なった。




八咫烏に関してはこちらの独自設定となります。

八咫烏は日本神話に登場する導きの神、又は太陽の化身とされ、神武天皇を熊野国から大和国まで案内したとされます。


そしてついに!ついに!!リオンとダフネの想いが一つになりました!!!

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