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28 チョロイのとツンデレ咆え、腐女子前へ進み、チッパイ現る。

2012.06.15 (Fri)
祝勝会、と言うのだろうか。
その日、食堂の一角で、派手にパーティーが開催されていた。
壁にべったりと貼られた張り紙には、『織斑一夏クラス代表就任パーティー』とでかでかと記されている。

「いやさ、一組のパーティーでしょ? なんで私たちまで来てるのさ」
「え~、だって織斑君だよ? せっかくのお近づきになるチャンスなんだし!!」
「そそ。それに他組の子だっていっぱい来てるし、私たちが入ったくらいじゃばれないよ~」

そんなクラスメイトに乗せられて、何故か食堂に訪れる事になってしまった。
因みに私のクラスは3組。原作では一切目立つ事のなかった哀れなクラスである。

「いいじゃない。それに、スバルはあのオリムラクンと友達なんでしょ?」
「いや、イリーナ……」

えぇぇええええ!!と声を上げる三組のクラスメイト達。

「いや、中学時代の友達だから」
「でも、スバルってオーストラリアの操縦者じゃなかった?」

そういえば、と不審そうに首をかしげる。そりゃ、オーストラリアのISパイロットが何故日本で中学生をやっていて、その上初の男性操縦者である織斑一夏の友人をやっているのか。
うーん、こうして考えると相当不審人物だな、私。

「いや、オーストラリア国家代表じゃなくて、オーストラリアの企業所属。中学が何で日本かっていうと、姉が同じく此処に入学してね。土地に慣れるために入学一年前にコッチに引っ越してきてたんだよ。で、私もそれに付き添いでこっちに。元々血筋的には日系だし、治安もコッチのほうが良かったし」

第一、魂の日本人としては、水資源の豊潤な日本には是非住んでいたいのだ。
何せオーストラリアは水に関して風土的に物凄く節約する。神経質なくらい節約する。
洗剤まみれの食器を水洗いしないとか、私としては我慢できない。風呂がオマケでシャワーがメインとかありえない。
今の生活? くくく、そりゃもう水なんて使い放題ですよ!!

「なるほどね。でも、何でそれでオリムラ君と友達に?」
「んー……話してもいいけど」

前置きを置いて、私たちとイチカたちとの出会いを話す。
日本に引っ越してきて、生活用品を買いに待ちに出た事。
その先で、古いタイプのナンパ君に絡まれてしまった事。
で、その最中イチカとその友達のダンに助けられた事。
友達になって分かれたその翌日、転校先の学校で再び顔を合わせて、それから良く遊ぶようになった事。

「と、そんなかんじ」
「「「「…………」」」」

なんだろうか。何か物凄い視線でコッチを見てきてるんだけど。
しかも何? なんでコッチを見てる視線が増えてるの!?

「何それ何処の王子様!?」「凄い。ピンチのときに颯爽と現れてくれるなんて」「其処に痺れる憧れるぅ!!」「織斑君かっこいい!!」「お姫様のポジションいいなぁ」「寧ろ私が織斑君を颯爽と助けたい」

駄目だコイツラ。

「で、スバルちゃんは格好いい織斑君に惚れちゃった、と」
「は? なんで?」
「…………………………いや、なんで、って」
「助けてくれたのはまぁありがたいけど、それだけだし」

正直な話、あんなナンパ君如き、殺ろうと思えば瞬殺出来るレベルの相手でしかない。まぁ、確かに頭部に受けた打撃の所為で、若干ピンチではあったけれど、あの程度は訓練でも良くあるレベルだ。
第一、私の中身は嘗の男が混ざっているのだ。そうそう『夢見る乙女がファンタジー!』な展開でポット惚れてしまうほど簡単な中身ではない。

「……そう」

そんな考えを、もう少しオブラートに包んで語ってみたところ、クラスメイトのイリーナは、何か残念な物を見るような目で此方を見つめてきた。
なんだよ、そんな目で見るなよ。照れるじゃないか。

「「「……はぁ」」」

ええい鬱陶しい!!
とりあえずイチカにアプローチをかけるよう周辺の女子をそそのかして、妙な視線から開放されるべく手を回したのだった。

なにやら黛先輩の声が聞こえるが、無視。
個人情報流出な質問されてあたふたしているイチカと顔真っ赤な篠ノ之箒も無視。
なにやら睨まれているけど、当然無視!





と、いうわけで。現在少し学生寮から遠く離れた場所に位置する、IS用整備格納庫へと赴いていた。

「はろー簪。元気ー?」
「う、うん。……スバルは相変らず元気そうね」

そうして訪れた整備用格納庫。その隅で、一機のISをいじくる青い髪の少女。
所謂原作キャラ、件の『生徒会長の妹』こと、更識簪ちゃんだ。

「で、調子如何?」
「うん、スバルのくれたデータのおかげで、なんとか稼動常態にまでは……」

そういって、嬉しそうに微笑む簪。
うーん、いい笑顔。此処まで気を許してもらえるようになるまで、結構私頑張った。

と言うのも、最初に私が簪に接触したのは、件の放置されたIS、打鋼弐式というISを見てみたいが為というのが大きかった。
だって、気になるじゃない? 純日本産のISなんて。技術大国にして、ISの産み出された国。その国が産み出す、次期主力機。
白式みたいな篠ノ之博士の段階的にぶっ飛んだ技術なんて、国益的に考えれば後に自分達の首を絞める代物でしかない。それに比べ、私の知っている打鉄弐式という機体は、とても汎用性が高く、完成度も素晴らしい機体だったはずだ。完成していれば。

と言うわけで、その操縦者たる更識簪に接触を取ってみたのだけれども。

「IS持ってるんだよね。見せてくれない?」
「――(プイッ」

であった当初のやり取りだが、事実こんな感じだった。
後で聞いた話だと、この手前に丁度姉ともめた直後だったとかで、私が声を掛けたのはまさに最悪のタイミングだったのだそうだ。
でも、だからといって遠慮するような私でもない。
その後も、暇を見ては積極的に話しかけるようにしているその最中、打鉄弐式が高機動型だという事をひょんなことから聞きだした。

「そういえば、私が前に乗ってた機体って、超高機動型で、マルチミサイル搭載機だったよ」

で、思わずポロリと口から零れたそんな言葉。
そう、考えてみればとても似ているのだ。RAYと打鉄弐式という機体のコンセプトは。
といってもRAYは既に10年近く昔の機体。速射荷電粒子砲こそ搭載していないが、超振動兵器搭載の超高速型。それもミサイルをばら撒くとか。

「そ、そのデータ頂戴!!」

で、見事に簪が釣れた。
ただ、無条件に渡してしまうと簪の為にならないと判断して、何等かの交換条件を設定した。
だって、「交換条件の成果として手に入れた」という建前が無ければ、「温情でもらえた」とか後々彼女が落ち込む原因に成りそうな気がしたし。

結局「貸し三つ」で手を打つことにした。あまり無茶は言わないという約束で。
で、その結果として現在、打鉄弐式は原作よりも完全な状態で完成に向かっていた。

「……で、スバルは何しに来たの?」
「んー、差し入れとお手伝いにね~」

言いつつ、手に持ったバスケットを差し出す。
適当な食材をはさんで斬っただけの簡単なトーストサンドイッチ。
ソーセージとバター、玉子マヨネーズとレタスと、そんな簡単な品揃えだ。

「設定見ておくから、簪はそれ食べておくこと。どうせゴハン食べてないんでしょ?」
「……うん」
「まったく。ちゃんと休憩しないと作業効率も落ちるよ?」

言いつつ、簪と入れ替わるようにしてコンソールパネルに手を伸ばす。
私のカオスタスクは伊達ではない。脳内で情報を高速処理させつつ、それをさらに指で打ち込み続ける。
情報の入力速度に関しては簪に劣る私だけど、情報の入力効率に関しては私は簪を圧倒している。
脳開発、ひいてはドクター様様というわけだ。

「ふーん、やっぱりRAYと似てるんだねぇ」
「うん……貰ったデータも、殆ど触るところが無いぐらい相性良かったし」
「まぁ、荷電粒子砲があるから、出力情報をちょっと弄らないと駄目だね。まぁ、RAYほど速度に出力をまわす必要も無いから、ちょろっと弄ればすぐに……」
「あんまり魔改造しないでね?」

前にミサイルを気化爆弾に積み替えていたのがそんなに気に喰わないのだろうか。
いや、確かに実戦で使うと自分ごとフッ飛ばしてしまうけど。高威力兵器って素晴らしくない?

とりあえず、簪が普通に部屋で寝れる程度の余裕が出来るよう、常識的な範囲でのデータ調整を行うのだった。




そうして、放課後。
日も暮れて、そろそろ整備格納庫から引き上げようかと屋外へと足を踏み出して、何処かからとも無く聞こえてくるイチカと篠ノ之箒の叫び声のような物が聞こえてきた。

「相変らず元気だなぁ」
「スバルに言われるのは、アッチも不本意だと思うけど……」
「ふむ、簪はこの『特装版 エガレンジャー ~二時間五十分の戦い~』は見ない、と」
「あっ、あの幻の同人映画っ!? 見たいっ!!!」

とか、そんな話をしながら寮へと移動する。
予断だがこのエガレンジャー、誰かのピンチの際、突如上空から落ちてくる鞄の中から現れるヒーローが、助けを求める人たちの前で踊りまくるという意味不明な作品だ。一応ヒーロー物に含まれる……らしい。

と、ふと気づいた。
なにやら、校門の方に、人影が見えるのだ。
こんな時間に人影と言うのもかなり珍しく、思わずその方向を見つめていると、そのシルエットが何処かで見たものと不意にダブって見えた。

この影は――まさかっ!!

「ちっぱい!! ちっぱいじゃないか!!」
「誰が無い胸チッパイかああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

何かが顔面に突き刺さり、私の身体は吹き飛ばされた。
私が最後に見たもの――それは、闇夜に煌くツインテールのツンデレ少女の姿だった。
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