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19 Intermission 5 Next VS NMSS

2012.06.12 (Tue)
「ちっ!!」
『おぉぉぉぉおおおおおお!!!!』

叫び声と共に吶喊してくるA-10を水平移動で回避し、すれ違い様に脇腹に頭部9mmバルカンを叩き込む――のだが、やはりPAで威力が減衰しているのだろう。網膜に投影されている戦況情報――
コア・ネットワークを介して表示される適正バリア値は、目立った減衰をみせない。

「ち、やっぱりPAは反則だ……」
『は! そのPAの上からでも徐々に削る化物に言われたくねーな!!』

失礼な。誰が化物か。
返答の変わりに再び頭部バルカンを放つが――矢張り駄目。赤いPAに阻害された弾丸は、大きなダメージを与える事が出来ずに居た。

「ち」

困った。技術的な面では同等を自負できるのだけれども、彼女のIS、A-10が完成系の量産機であることに対して、此方のνGは未だ未完成。スッピンの、ファンネルの一機も積んでいないνGでは、あらゆる局面を想定して開発されたA-10に対して聊か火力不足なのだ。

『然し、さすがだねアンタも。前は機体の性能で手も足も出なかったけどさ、今回は同じNEXT、勝たせてもらうよ!!』
「んふふ、そう簡単には負けませんよ! それと、この子はNextじゃありませんよ!!」
『え? ――そういえば、PAが無い……?』

放たれる30mmガトリングをバレルロールで回避し、その最中にSLMk2で狙撃を試みるのだが――命中はするものの、芯を外されたレーザー光は僅かなシールドエネルギーしか削れずにいる。
さすがは近接戦闘のプロ。そして国家代表選手。第三世代型を手に入れたその姿は、まさに水を得た魚。嘗てのコアラ改二号機を思わせるその挙動は、然し嘗てのそれとは違い圧倒的な機動力と破壊力を持って攻め立ててくる。

「そもそもなんですかそのバンカーナックルって!!」
『いいだろ、バンカーバスターを参考に作った装備で、殴った後に発射されるミサイルだ!!』

その言葉と共に放たれる、マリア女史の左手の鉄拳。
装甲で強化されたその拳を、咄嗟に引き抜いたビームサーベルで受け止める。――って、ビームが圧される!!

「え、AIC!? 拳を加速させてる!?」
「完全なマニュアル操作のAICはまだ無理だけどな、コマンド登録した所定の動作を補助させるくらいなら出来る!!」

慌てて後退、そのまま距離をとろうとするのだけれども、それを追撃するようにマリアさんの左腕から放たれたそれが追走してくる。
銀色の鉄の杭。バンカーナックルと呼ばれたそれは、バンカーミサイルを腕に装着した、ただそれだけの代物。でも、それこそが近接格闘戦では本当に怖い武装となる。

「ぬ、ぐ!!」

ガクン! と派手に揺さ振られる機体。バリアの上からでもわかるほど、派手に機体が揺さ振られる。
ISはPICにより飛行している。が、それは実際にはかなり不安定な飛行だ。
バンカーナックル――そのバンカーミサイルは、推力部分以外はほぼ金属で出来た純鉄ミサイル。いわば純質量兵器だ。そんなものが、不安定なISに直撃すれば――当然空中の機体はバランスを崩す。

「きゃ――っ」
『とる!!』

右手のガトリングを乱射しつつ、勢い良く此方に突っ込んでくるマリアさん。
何が恐ろしいかって、此方の射撃を何時でも回避できるように、両足と腰に遊びを作っているのだ。
例えば此方がこのタイミングでSLMkⅡを放ったとする。その途端マリアさんは確実にそれを回避してくる。ISの性能云々ではなくて、肉体を用いたAMBACで。脚と腰で産み出した回転運動で軸をずらし、こちらのレーザーを回避するのだ。
遠~中距離からの高速制圧戦闘を得意としていた私には必要の無かった技術。けれども、今現在私を追い詰めつつある技術。

もう本当、あれ本当に人間なのかと問いたい!!
というか、あんな化物が生で居るなら、遺伝子強化体とか戦闘機人の存在意義って何!?

「ちぃっ!!」
「見えた!!」

だからなんで見える!!
案の定回避したマリアさんのA-10。然しその回避先はちゃんと感じ取れている。
即座にその方向に向かってサーベルを凪ぐ。咄嗟にバックしたマリアさんに向い、更に一歩踏み込み、そのまままわし蹴りを叩き込む。

『ちっ!!』
「くそっ!!」

面倒くさい話だけど、矢張りNEXTを攻略する最も簡単な手段は、近接格闘戦に限るらしい。
今の蹴り、此方のシールドエネルギーも若干削られはした物の、今までで一番効果的なダメージを与えているのがわかる。

――のだけれども。

格闘戦を挑もうという相手は、よりにもよってIS近接格闘戦のプロフェッショナル。銃器も使うがそれはほぼ弾幕用で、基本的に格闘最強の猛者だ。
そんな相手に対して、遠近両用の汎用型、言ってしまえば器用貧乏の私が挑む!?

無理無理無理、絶対無理!!
幾らこの身体が近距離格闘に向いているとはいえ、中身はどちらかといえば遠距離オンリーで行きたいチキンな私。その上νGにある武装は背部BS、左腕BS、格納SLMkⅡのみっつのみ。

手数で戦う私には、全く手段が無さ過ぎる!

この機体には、嘗てのRAYのような超高速戦闘が出来るわけでもなし、推力と小回りこそ向上しているものの、RAYの衝撃砲は継承していない所為で振動砲も撃てない。
如何考えても火力不足!!

「――ええい、侭よ!!」

悩んだ結果、もう知るかとばかりに背部スラスターを噴射した。
どうせコレはデータ取りの訓練だ。敗北は悔しいけれど、何事も経験だ。第一、チキってはいるけれど、まだ私が近距離戦でマリアさんに敵わないと実証されたわけではない!!

「はあああああああああああああ!!!」
『いい覇気だ!! でも甘い!!』

瞬間延びるビームサーベルを、やはり殴って弾き飛ばすマリアさん。だからなんで――っ!!

咄嗟に身体を捻ってその一撃を回避する。

『おっ、AMBAC回避』
「近くで何度も見れば、そりゃ覚えもします。――それに、その拳の手品、漸くわかりましたよ」

言いながら、ビームサーベルを構えなおす。
もうあの機体にレーザーライフルで挑む気は起きない。SLMkⅡを格納し、空いた左手とあわせて両手でビームサーベルを握る。

「PPB――ピンポイントバリア。指定空間に粒子を圧縮支えて、一時的にPAを上回る粒子装甲を顕現させてるんですね。――トーラスの変態どもめ、そんなのはスペックシートに載ってなかった!!」
『当然! 何せコレは、アタシが変態技術者共に頼んで作ってもらった技術だからな!!』

なるほど納得。もうこのA-10はマリアさん専用機として大分弄られているのだろう。
いや、流通していない装備とか、A-10は本来中距離機なのに、格闘戦用にセッティングされているのを見て先ず最初に考えるべき事項だった。

ああもうと内心で唸りながら、再びマリア機に向かって吶喊。

PPBは此方のビームサーベルと同じ粒子技術。
粒子を流動させているサーベルと、粒子を圧縮固定しているPPBではPPBが幾分有利。しかしPPBは対ビーム性能こそ持つが、当たったところで普通の砲撃を当てられた程度のダメージしか入らない――それでも大ダメージなのだけれども――ハズ。此方のビームサーベルは、あたりさえすれば一撃必殺なのだ。まだ十分チャンスはある!!



-------- Side Other


「おおおおお!!!」
『く、かああああああああああああ!!!!』

気勢同士のぶつかり合い。
放たれた拳を蹴脚術でいなし、隙を作ってビームサーベルを叩き込み。
然し当然のようにそれは回避され、そのまま流れに乗って近距離からガトリングを放たれる。
そんなものに当たるわけにも行かず、即座に回避運動。今度はその隙を狙われ、再びPPBの一撃が近付く。
そうして放たれた拳を蹴脚術で往なし……と、気づけばそんな一連の動作が無限ループ。
半ば根競べのように、互いに同じ動作を、然し徐々に精度を上げて続ける。

そうして、その繰り返しが始まって、どれ程の時間がたったのか。
ドン、という音と共に、それまで互いに手のとどく距離で演舞のような動きをしていた二機が勢い良く離れた。
ついに繰り返しの均衡が解け、最後が来たのだと、その両者が、その両者を見つめる研究者達ですら理解していた。

――っ

「「りゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」」

引き絞られた弓矢の如く、互いにはかったかのように揃って飛び出す二機のIS。
一つは瞬時加速による赤い光をたなびかせ。
一つはオーバーブーストによる閃光を撒き散らして。

そうしてすれ違う二機。
一呼吸遅れて、試合終了の合図が鳴り響いた。



-------- Shide Other End




「結局、相打ちか」
「いや、同じ第三世代なら勝てると思ったんだけどなぁ」
「累計搭乗時間的に、負けられない戦いだったんだけどなぁ」

リプレイに表示されているのは、互いの一撃が同じタイミングで直撃する瞬間。
超スローモーション、コマ送り、どれで見ても全く同じタイミングで叩き込まれた両者の一撃。
同時に尽きたシールドエネルギーから、結局出された判定は相打ち。

「ち、今回こそはとおもってたんだけどなぁ。ま、またそのうち戦ろうぜ。次はアタシが勝つけどな!!」
「――クス、ええ、また戦りましょう。でも、次は私も勝ちますからね!!」

ジッと互いの顔を見詰め合って、不意におかしくなって破顔して、ガシッっと腕を組んでいた。
戦いあった者同士にしか解らない共感、とでも言えばいいのだろうか。

なんだか解らないまま嬉しくなって、結局その日その後は、マリアと友好を深める事に費やしたのだった。
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