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12 CBF in Australia・五日目、蒼天貫く四条の鉾

2012.06.12 (Tue)
さて、そういうわけでCBFinオーストラリア、五日目に入りました。

「アクチュエーターの設定どうなってんだ!!」「ショックアブソーバーのチェックが抜けてるぞバカヤロウ!!」「PICの設定が成ってないぞ!!」「耐圧特殊スーツの設定どうなった!!」「あれ? ウエストのサイズが微妙に増えあがぎぎぎぎぎいいいいいいいいいぎゃああああああああああああああああああああああああ」「――す、スーツのチェックおっけー!!」「「「おっけー!!!!」」」「重量バランスどうなってる!!」「完了してます。へへ、彼女の体重はコンマ一グラムも違えずしっかり記録してますげぶはっ!!」「まて、死ぬならせめてスリーサイズを残して死ね!!」「お前はすぐ死ね!!」「し、死にたくないやつは真面目に働け!」

みんな必死だ。

現在早朝の午前六時。眼前では各チームの整備班の面々が慌しくVOBと接続したISの調整に取り組んでいた。
どうやら大会運営の思惑通り、全てのチームがVOBを使用する事を決定したらしい。まぁ、VOBは正しく運用できれば、従来のIS運用理論を一変させ得るほどの代物だ。どちらにしても早い段階で実用しておきたい、と言う思惑もあるのかもしれない。
まぁ、事実政府は既にVOBを秘密裏にとはいえ運用していたらしいし、今後VOBは必ず使われるのだろう。

「然し、嬢ちゃんも大変だね。妨害役に救急救護にシステムアドバイザーまで兼任するなんて」
「いえいえ、コレも仕事ですし」

何時も通りのフェイスマスクを被りつつ、トーラス社から派遣されていた整備員のオッサンに答える。
今現在の私の仕事――つまりは、VOB運用に関する技術的アドバイザーだ。そういう理由から、各企業のピットに対して簡単な助言をしているのだ。

「セカンドちゃん、こんな感じの設定で?」
「うーん、IS本体の電源は全部PICに回しちゃうと簡単ですよ?」
「でも、それだと機体制御が――」
「そっちの電源はVOBのやつを引っ張るんだよ。VOB稼働中はどうせ火器なんてほぼ絶対に当たらないんだし、出力は出来る限り機体制御にまわしたほうが良いよ」
「ふむ、なるほど」

VOB時の最大加速度は、大体2000km毎秒。ISの最大瞬間加速度が、イグニッションブースト使用を考えても、精々400~500km毎秒。実にISの想定速度の4~5倍の数値をたたき出すのだ。
そんなVOBを運用するのだ。ISの素の設定のままこんなモノを使おうものなら、間違いなく次の瞬間其処にはトマトケチャップしか残るまい。
だからこそ、通常のISがVOBを使うなら、全ての電力を持ち、最大出力でPICを全力稼動させるしかない。

「――こんな感じで?」
「そうそう。コレならいけると思うよ」
「そうか、有難うな嬢ちゃん!」

礼の言葉を述べて走り去るトーラス社員。それを見送って、今度はピット内の全体を見渡す。
うん、進行状況的には丁度いいぐらいではないだろうか。

現在、ピット内の状況が一番進行しているのは、やはりと言うか予想通りというか、AMIのコアラ改二機、特に二号機のほうが順調に進行している様だった。

矢張りさすがの量産機。幾ら壊れようと、予備パーツは幾らでも量産されている。壊れた部分を修理するのではなく、丸ごとパージして新しいパーツに取り替えるという荒業で、コアラ改二機はあっという間に修復作業を終えてしまった。フレームの歪みさえパーツ交換とか、舐めているとしか思えない。

しかもAMI、VOBの設定も妙に慣れている。
AMIはオーストラリア・ミリタリー・インダストリー。国から仕事を請け負って開発を行う国営軍事企業だ。そういう点と、つい先日手に入れた情報を考えると、彼等は既にVOBの運用データをある程度持っていると考えるべきだろう。

二号機の方は既に準備を追え、一号機の準備が完了するのを待っている。
矢張り第二世代一機で突っ走るのは無謀だと自覚しているのだろう。
――まぁ、問題はそれ以前に、空中分解しないか、と言う点なのだが。



さて、次に進んでいるのが、我等が姉気味、トーレ姉率いるリガズィーのパーティーだ。
といっても、リガズィーはその整備性の悪さから、折角得たリードを大分消費してしまっている。

うん、さすがZ系。そんな欠点まで引き継がなくても良いのに。

そういう状況で、漸く修復の終わったリガズィーは現在弾薬を補充中。リガズィーは仕込み火器を大量に保有している所為で、弾薬の補充にも時間が掛かる。
まぁ、リガズィーの整備が終われば、間違いなくアレは一気にトップに躍り出る。何せ飛行形態でVOBを使用すれば、あの機体は中距離の殲滅型だというのに、この高機動専用ISであるRAYに追いついてくるのだ。多分、他のISとか問答無用で抜かされるだろう。

問題は、整備性の悪さだけ。うん。


で、最後にトーラスのアルギュロス。
此処は整備こそ手早く終わらせたものの、VOBに対するデータが一切無く、その所為で設定にかなりの時間を食われていた。
このままではゲームバランスが崩れるという事で、急遽私が運営側アドバイザーとしてここに派遣されたのだ。
といっても、私が派遣されてから2~3言アドバイスしただけで、大体の事を把握した彼等トーラス技術半はさすがだと思う。

まぁ、後は其々が発進するのを見届けるだけかな?








「コアラ改1号機、発進します」
「コアラ改二号機、発進するぜ!」

二人の掛け声と共に、轟々と橙色の炎を吹き出すロケットブースター。
カタパルトに接続された両機は、文字通り撃ち出される様にして、一気に大空へ向けて飛び立った。

「では、後はお任せします」
「はい、セカンドさんも無茶をなさらぬよう」
「あはは、無茶はしませんよ――――セカンド、RAY、出ます!!」

ガチョンと音を立てて接続するカタパルトデッキ。
蒸気圧式カタパルトが機体を一気に前へと押し出し、其の勢いに乗ってVOBが轟音をがなりたてた。
相変らずの超加速。身体にかかる重力は、即座にPICにより軽減される。

――ふと思ったのだけれども、私はPICの入力も三割くらい手動だ。コレってAICに成るのだろうか?

「――さて」

今回の――というか、今日の私の任務は、選手達の妨害ではなく、選手達の安全確保のための監視が第一目的だ。
VOBは、正直なところまだまだ不安定な技術だ。事故が起こる確率は低いとはいえ、絶対とはいえないのが現状。
である為に、私がいざという時のために、何時でもフォローできる位置に陣取る。
うん、何時も通りといえば何時も通りだ。

『トーラス社、アルギュロス発進』
『続いてナンバーズコーポ、リガズィー発進しました』

轟音に紛れてとどく通信音声。其の情報を確認しつつ、ハイパーセンサーで真後ろのデータを確認。
背後から眩い光を撒き散らし、東へ向かって進む高熱源体。紛れも無くリガズィーとアルギュロスだ。

そんな様子を、選手に定められた限界高度のはるか上から見下ろしていると、あっという間に四機のISはガジェットドローン1型改の防衛エリアに突入したようだ。

ガジェットドローンのほうは、接近する熱源が自分達のFCS(火器管制制御)では処理不可能だと判断すると、即座に壁たる障害物としての本分を果たすべく、全身に設置された各種砲等による弾幕攻撃を開始。一体に分厚い弾幕の幕を張った。



さて、此処でISのPICと言うものについて考えよう。
PICとは、パッシヴ・イナーシャル・キャンセラー。ISの基本システムであり、これによりISは浮遊・加減速などを行うことができる。
つまり、ISがISたる基本的なシステムの一つだ。
このシステムの優秀な点としては、ISの3次元起動は勿論、ISの運用する武器に関してもいえる。
このシステムがあることで、ISは実弾火器を使用する際、其の反動の大半を相殺する事が出来るのだ。

例えば、コレが戦闘機だったとしよう。
戦闘機にISが搭載するような大口径砲を搭載して、それをいきなり機首から90度ほどずれた方向にぶっ放すとする。するとどうなるか。戦闘機は間違いなく自壊する。
コレはつまり、戦闘機が大口径砲の反動によりバランスを崩し、自らの加速に押しつぶされてしまうという事だ。

大してISがコレと同じことをした場合どうなるかと言うと、放たれた大砲の反動はPICにより相殺され、ISは前後の挙動を問題なく継続させることが出来る。
PICとは、それほど優れ、かつ重要なISの機関技術なのだ。

――さぁ、以上を踏まえた上で。
現状、PICの性能を限界までVOBの慣性相殺に使っている今。果たしてPICは攻撃の反動を殺せるほど余裕を残しているだろうか?

――答えはNOだ。

『『『『――――――!!!!』』』』

通信機から響く4つ其々の悲鳴。
回避しか許されず、その回避すら侭成らないという悲惨な状況だし、悲鳴だって上げたくも成るのだろう。
まぁ、私はその光景を上空からニヤニヤしつつ――

――ズキュゥゥン!!!

「――って、えぇっ!?」

とか思ってたら、予想外に反撃する猛者ISが。
あれは――って、またアルギュロスとトーレ姉かい!!

なるほどリガズィーは確かに最初から高速戦闘をも想定している。と言うか、ウェーブライダー形態ならば余分な挙動を捨てている所為で、PICに余裕も出来る。
アルギュロスに関しては、見たところそもそも大出力機の様だし、最初から高性能なPICを搭載していたのだろう。
トーレ姉の放ったピンク色のビームは、1型改を打ち抜いて爆破。アルギュロスに関しても、元に比べれば幾らか見劣りする緑色のビームだが、それでも容易く1型改を打ち抜いて魅せた。それを見たコアラ二機は、即座に自分達では突破不可能と判断したか、VOBを瞬間的に減速させる。
その隙にあっという間にコアラ二機を追い抜くリガズィーとアルギュロス。幾らかの弾幕を被弾しながら、それでも1型改を打ち抜き、弾幕の壁に小さな穴を開けてみせた。

そして、その二機が通り抜けた後の小さな穴を、文字通り針の穴に糸を通すような神業で通り抜ける二機のコアラ改。
もうあの二機のパイロット二人、実は国家代表だろ? と言うほどの腕前である。正直私以外のオリ主だといわれても納得してしまうほどの腕前だ。

――弱機体で強者に追いすがるオリ主――カッコイイ!!

『セカンド、状況報告を』
「――っとと、此方セカンド。現在四機は最初の包囲網を突破した模様。データを転送します」

そんな妄想をしていたら、突如としてコマンドポストから通信が掛かる。その通信に慌てて応答しつつ。

「んじゃ、私も行きますか」

様子見のために少し出力を落していたVOBの出力を常態に戻し、東に向けて再び加速するのだった。
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