FC2ブログ

07 CBF in Australia・二日目

2012.06.08 (Fri)
と言うわけで、日が変わりまして二日目のCBFです。
相変らず爆走し、立ちふさがる障害の尽くを力押しで叩き潰すアルギュロス。
軽やかな回避機動で、空戦専用の名に恥じぬ活躍を見せるリガズィーのトーレ姉。
驚いた事にコンビネーションで1型改を相手取り、そこそこの得点を稼いでいるコアラ改’s。

コアラ改の奮闘が意外ではあったけど、だが然しさすがはIS。全機良い調子でオーストラリアを横断している。
現在トップを走るのはトーレ姉。CBFは数日続く。当然、適時睡眠をとるのはパイロットの自由だ。

――が、トーレ姉……というか、私含む戦闘機人は、正直2~3日は普通に不眠活動が可能なのだ。

正直、トーレ姉ならISを装着したまま最後まで飛び続けることも不可能ではないだろう。が、それでは流石に不公平という事で、トーレ姉にはドクターから24時間中最低でも3時間の休眠を申し付けられている。

で、現在二位のアルギュロス。此方はトーレ姉が休眠モードに入った後も、暫くそのまま飛び続けていたのだが、トーレ姉よりも2~3キロほど東寄りの地点でキャンプに入った。
然し、あのトーラスのバリアシェルって言うのは凄い。一定空間にエネルギーフィルターを作って、その中の温度を一定に保つとか。
何でも行軍時の士官用装備なのだとか。何でそんなものを、とか思っていたら、どうもあれはトーラス社の目玉商品の一つらしい。
侮り難し、トーラス。

さて、そうして第三位四位のコアラ改の二人。
あのお二人は凄い。頑張った。

私があの二人を追い回して苛めたその後、彼女達は件のドローン……ガジェット・ドローン1型改の集団と行き当たってしまったのだ。
彼女達の走るルートはアルギュロスと同じで、アルギュロスの掃除したルートは基本安全。だというのに、アルギュロスが潰した穴を埋める為に全方位から集結していた1型改に、彼女達は運悪く囲まれてしまったのだとか。

で、彼女達がどうしたかと言うと、なんともテンプレートな撹乱戦闘。
巨大な1型改に接近し、味方撃ちを防ぐ為の遠距離攻撃を防ぎ、2号がバリアを削り、1号がトドメのグレネードというコンビで、なんとか1型改の群れを突破したらしい。
まぁ、良くあんなISでアレを倒せたなぁ、と。

さて、ソレで私は今何をしているかと言うと、一度パースに戻り、武器弾薬の補給と整備、セッティングの変更やらをしつつ、用意されたホテルでフカフカのベッドに埋もれて寝ていました。

んふふ、私のRAYなら、VOBを使えば1時間くらいで先行組みに追いつける。あまり急く必要は無いのだ。

「にょほほ、今頃アッチはレーションかにゃ?」

左手にミルクと砂糖アリアリのコーヒーを飲み、右手に焼きたてのクロワッサンを握り。

「――全く。貴女、本当に私たちの後発機なの?」
「ん? あ、おはようドゥーエ姉!」

砂漠の真ん中でレーションを齧るISスーツの女性、と言うものを想像してニヤニヤしていたら、何時の間に部屋に入ったのか、呆れたような顔で此方を見るドゥーエ姉がいた。
珍しく素顔のドゥーエ姉。何時もの変装じゃなくていいのかな?

「まぁ、此処は個室だしね」
「ふーん。まぁ、いいや。ドゥーエ姉もコーヒー飲む?」
「頂くわ」

うん、為らば折角だ、私の淹れるコーヒーと言うものを、ドゥーエ姉に味わってもらおう。
私は前世では、軽いコーヒーマニアの類だった。普段からコーヒーを愛飲し、家では豆を轢いてコーヒーを淹れる程度の愛飲家だ。まぁ、豆の保存環境が今一だったので、精々数日分の豆しか保存していないのだが。

さて、そんな私が、この世界に生まれてから一番悲しかったのは、コーヒーが飲めなかったという事だ。
正確には、コーヒーは手に入っても、私の味覚に会わなかった、と言う点が問題なのだ。
何せ私が自意識を得たのが4歳の身体。物凄い子供舌だったのだ。

もう、全私が泣いた。

この私が、コーヒーを飲めない、と。
もう、全世界が終わったかのような失望感で一時ほど寝込み、その後コーヒー牛乳をがぶ飲みした程度にはやぐされた。

で、結局その後、ミルクと砂糖をたっぷり入れれば今の舌でもコーヒーを飲める事が解り狂喜乱舞したのは思い出に新しい。

「と言うわけで、どぞどぞ~」
「頂くわ――――うん、ドクターの言ってた通り、本当に美味しいわね」

よしっ、と内心でガッツポーズ。
今のところ私のコーヒーを飲んで、ホッとした表情をしなかった人間はいない。
まぁ、流石にギン姉はコーヒーを飲んで、苦かったらしく顔をしかめたが。物凄く可愛かった。ミルクと砂糖をプラスしたら、美味しそうに飲んでくれた。愛が鼻から溢れ出したのは良い思い出。

「で、スバル。今日の予定はどうなってるの?」
「うん? 何時も通り行き当たりばったりの心算だけど――」

と、不意に話を切り出してきたドゥーエ姉。何時も通りの返事を返したのだけれども、矢張りソレでは納得しないか。ドゥーエ姉も、姉と言うよりはゲームキーパーの一人として、ゲーム内ジョーカーである私に話を聞きに来たのだろう。

「まぁ、今日は真正面からぶつかるのは止めておこうかな~と思ってるよ」
「あら、どうして?」
「流石にあの第三世代型を相手取るには、今のRAYじゃちょっと力不足なんだよね」

RAY。私の超高速巡航試験型第三世代IS。
一応イメージインターフェイスだとか、マルチロックオンシステム、衝撃砲みたいな第三世代兵器も搭載している事はしている。のだが、残念ながらその攻撃力はかなり低い。
IS同士の戦闘では、ミサイルと言うのはどうしても決め手にはなり辛い。幾ら威力が高くても、速度で劣るミサイルは精々牽制くらいにしかならない。
で、ショットガンは距離をとられると途端に威力が無くなり、そもそも射程が短いので当たらない。
ならば衝撃砲はどうかと言うと、ぶっちゃけRAYの衝撃砲は、私の振動破砕と組み合わせた振動砲として運用する事を前提に考えて有る為、衝撃砲単発の威力はIS用ハンドガンにも劣る。

と為れば、私に取れる攻撃手段と言うのはもう無い。
速度に傾倒しすぎて、火力がほぼ皆無な機体。それがRAYという存在なのだ。

「あー――――まぁ、第二世代開発過渡期に完成してる試験先行型第三世代なんだし、今開発が進んでる第三世代過渡期型に比べて性能が落ちるのは仕方が無いこと――なのかしらね」
「悔しいけど、単純な機体の総合性能としては、アタシのRAYはあのコアラに――――は流石に勝ってるけど、あのラファール・リヴァイヴってのには多分負けてるよね」
「あぁ、ニュースでやってたデュノア社製の第二世代? まぁ、バランスは良さそうな機体だったわよね」

火力が無いだけならばまだマシだ。
RAYは、その低スペックCPUで処理しきれない情報を、イメージインターフェイスを通じて、パイロットが代理演算しなければならないのだ。
多分、私以外の戦闘機人の中では、クアットロくらいしかこの情報を処理しきる事は出来ないのではないだろうか。
まぁ、クアットロでは肉体強度的について来れないと思うけど。

話が逸れた。

「えっと、今日の予定は、とりあえず間接戦闘の指揮かな。今日は最初からモゲラー装備で飛んで、1000キロくらい飛んだらそのまま地下に潜んで周辺の1型改に接続。そのまま遠隔操作であそぼうかなーって」
「ふむ、なるほど。まぁまぁね」

何が

「アンケートの結果、アンタの戦闘は派手さに欠けるって」
「ぬがっっ」

じ、地味だと!? このアタシの戦闘が、地味?!
別に魅せる戦闘をやってた心算はないけど、地味……。

「ほら、アンタって手数が決まってるじゃない? 確かにミサイルの掃射は派手なんだけど、正直ミサイルだけなトーレのリガズィーのが派手だし、それ以外のアンタの戦いは――」
「近接してショットガン乱射――ハァ、まぁ、確かに地味――か」

ショットガンでの近接格闘銃撃。アクション物の映画とかなら、確かに見栄えするのかもしれない。
然し今現在私たちがやっているのはISでの戦闘。ルール無用のキャノン・ボール・ファスト。野太いビームを乱射したり、ビームとミサイルを乱射したりする相手に比べて、確かに私の攻撃手段は地味だ。

「ほら、人気投票」
「ちょ、コアラ改のペアにも負けてる!?」
「コアラ改は二人一組のペアで人気が有るから――。個人ならアンタのが上回ってるんだけどね」

言って、記入済みのアンケート用紙らしきものが渡される。
何々、『チートワロス』『格下フルボッコワロス』『格上相手に尻尾巻いてワロス』『武装ヘボ』『確かに兄貴は速さを尊んでいたけど、それだけありゃ良いってわけじゃないと思う』――って。

「ぬ、ぬぐぐぐ!! 事実だから反論は出来ないけどさ!!」

――お前に足りないものは、それは~ 情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ! そしてェなによりも――――――速さが足りない!!――

そんな兄貴の格言が、何処かから降りて来た気がした。

「まぁ、確かにアナタのRAYってスピード狂だものね」
「うぅ、攻撃力が足りないとか――」
「まぁ、予想ではこのCBFはあと数日は続くんでしょ? なら、その間に少しでもその評価を挽回しなさいな」
「はーぃ」

とりあえず、今日の目標は目立つ事だ。
と為れば、少しセッティングを変更しなけりゃなるまい。

「あ、もしもし? 私ですセカンドです。はい、D装備からM装備に――え? 使い捨てなら併用できる? なら是非お願いします!!」

とりあえず、今日は目立つ!!







と言うわけで本日のRAYの装備。
先ず目立ちますのは、機体の先端を覆うコーン型の三角錐。
ねずみ色に輝くソレ。円錐をなぞるように伸びる日本の螺旋が、そのコーンに特徴的な螺旋を描いている。

――所謂一つのドリルです。

まぁ、普通に考えてナンセンスなドリルです。漫画ドリルというヤツで、実際にこんなモノを使えば、摩擦の関係で地面に穴が開く前に本体が回転してしまいます。
まぁ、今回の場合は回転で穴を開けるというより、寧ろ振動破砕の超振動で砂漠の砂を液状化させ、その中を一気に突き進む為のシールド、と言うほうが主な役目だ。

で、次。何時もお世話になってますVOB。
今日のVOBはNC社の汎用型ではなく、オーストラリア軍で廃棄処分にされる分のミサイルを再利用した代物だ。
VOBは名前こそブースターだが、正直な話本体をミサイルで無理矢理飛ばしているのと大差ない。
推力こそ並みのミサイルでは足りないが、弾頭を外し軽量化したミサイルを数本束ねれば――。
というわけだ。

さて、この二つ、本来のISの装備である量子化パッケージと言うやつではない。
正直、RAYのイコライザでは、この装備を量子化するほどの余裕が無いのだ。

そこで今回取った方法と言うのが、何の事は無い、パッケージ化せず、ハードそのままISに取り付けたのだ。
量子化とか出来ず、使い切るまではこのままの形、使い終えると爆発ボルトでパージする為二度は使えない。
色々制約は大きいが、とても合理的な運用だったりする。
――コスト面以外。

まぁ、些事を悩むのは私の役目じゃない。
機能と同じく、赤くて三倍速な角突きに類似したマスクを被り、展開して追いたISに身体を滑り込ませる。同調率好調。何時でもいける。

「それじゃ、RAY、出撃します!」
『精々観客を魅せて来なさい』

空間を撓ませて浮き上がるRAY、次いで火を噴くのはVOB。
旧巡航ミサイルを軸に、それを囲うように取り付けられた車載ミサイルの束。
急造品感アリアリのVOBだが、推力性能自体はNC製品に引けを取らなかったり。
オーストラリア軍の廃棄品を安く出引き取れたからと、ドクターが一晩で仕上げてくれました。

――キィィィィッィイイイイイイイイ……。

ボ――ゴッ!!!

火を噴いたエンジンが、もう一段音階を上げて火を噴く。
それと同時に急加速。速度計では即座に400キロを突破したと表示。

未だPICの慣性相殺許容範囲内だ。
徐々に身体に負荷が掛かるのを感じながら、けれどもVOBの推力というのはそう簡単にカットできるものでもなく。
ISの中で腕を組みながら、空の先を睨みつけているのだった。
スポンサーサイト




トラックバックURL
http://amane0130.blog.fc2.com/tb.php/28-52574021
トラックバック
コメント
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top