困惑・10
食堂中の高校生達の視線はそんな跡部に釘付けだ。

中学生の中でもとにかく目立つ跡部。
容姿の良さに加え、立ってるだけでも妙に感じられる色気のようなもの、そしていっそ呆れる程の尊大な態度とで知らない者はいない。

その跡部が終始敬語で語り、やけに可愛らしい様子で、鬼の前で赤くなって困っている。
そんな姿に、何やらスイッチの入ってしまった連中もいるようだ。


「おい…俺、なんかヤベエよ。アイツ、結構可愛いじゃんかよ///」
「ばっ馬鹿野郎、絶対手ェ出すなよ!? 鬼さんに殺されっぞ!;」


食事の手がすっかり止まってしまった跡部に鬼は皿を指差す。

「早く食っちまえ。グズグズしてっと、風呂に入る前に消灯になっちまうぞ」
「はい」


食事を再開すると、優雅な手つきでナイフとフォークが動く。
丼飯をかっこむタイプの鬼は「ほう」と感心するばかりだ。

「…跡部よ」
「はい?」

「メシ食い終わったら、一緒に風呂に行くか?」
「…!?///」

あまりの驚きにナイフが音を立てて落下した。
…跡部だけでなく、周囲の高校生達のフォークや箸も。


「ん? なんだ?」
「い、いえ…;」


鬼は10分後に風呂に来い、と言い置いて出て行った。



***


鬼が風呂に誘う=気に入った(変な意味ではないが)というのは高校生の間では周知のこと。

この一言で、高校生達の間で『跡部には絶対手を出すな(色んな意味で)』という意識統一がされたのは言うまでもない。


また、その後、ナイフを拾った跡部は食事の続きをすることなく、らしくない呆然とした表情でそのまま食堂を後にした。
彼が約束通り10分後に風呂に行ったかどうかは定かではない…。



(おわり)
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