困惑・3
「鬼先輩」

「お? おお、跡部か」
「噂をすれば…だね」
「え?」

「何でもないよ。跡部くん、この合宿所にはもう慣れた?」
「…ええ。ベッドの寝心地の悪さと風呂を除けば、まあ…概ね」

跡部の入江に対する声は硬い。何故とはなしに、無意識に警戒しているようだ。

「そうなの?ここのベッドはかなり上等だと思うけどね。お風呂だって広くて綺麗じゃない」

「ベッドは堅いし…何より、狭すぎです。風呂は…他人と一緒に入るのが苦手なんで」
「ふぅん。お坊ちゃまは団体生活になると色々大変なんだね」

「…ケンカ売ってるんですか」
「どうして?心配してるつもりだけど?」


常より更に眉を吊り上げる跡部にニッコリと微笑む入江。
火花が散りそうな様子に、慌てて鬼は間に入った。

「跡部、用はなんだ」
「ああ…これを黒部コーチから預かりました」

A4サイズの茶封筒を手渡す。

「コートリーダーに、との事です。コート毎の明日の練習メニューだそうですが」
「おお、すまん。ところでお前、飯は食ったのか?」

「いえ、自主練から上がったばかりなので」
「そうか。ワシも食い始めたばかりだが、ここで食ってくか? 見たとこ中学生は他にいねえし、独りじゃ食いにくいだろう」

「1人でも大丈夫ですが、鬼先輩がいいのなら」
「おお。入江も構わんだろ」
「いいよ。跡部くんには興味があったしね」


(4に続く)
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