青森県立施設の一極集中問題(あおもりけんりつしせつのいっきょくしゅうちゅうもんだい)とは、青森県が設置する県有施設のうち、文化、芸術、スポーツ、医療機関、福祉などの住民サービスを行う施設が青森市に集中している問題[1]である。朝日新聞は「青森との格差、八戸市議会で質問 県立施設ゼロ、岩手県の編入問う議員も」と報じた[2]

青森県立施設の一極集中問題の位置(青森県内)
三内丸山遺跡
県立保健大学
県立病院
県立つくしがおか病院
青森県立県民福祉プラザ
青森県男女共同参画センター
青森県動物愛護センター
青森県立自然ふれあいセンター
青森県立白神山地ビジターセンター
青森県立図書館
青森県立郷土館
青森県営浅虫水族館
青森県観光物産館アスパム
青森県近代文学館
青森県立三沢航空科学館
青森県立美術館
三内丸山遺跡センター
あおもり縄文ステーション じょもじょも
青森県営スケート場
青森県総合運動公園
青森県武道館
新青森県総合運動公園
つがる克雪ドーム
しもきた克雪ドーム
青森県立施設立地分布図[注 1]

概要 編集

青森県は、県立または県営の文化、芸術、スポーツ、大学、病院、社会福祉に供する22の県有施設を有している[3][4][5]。これらのうち19施設が青森市内に設置されている。

一方、青森県は歴史上、弘前藩八戸藩の中間地点である青森に県庁を置いたため、プライメイトシティが存在しない。県人口は主に青森市(26.5万人)[6]八戸市(21.6万人)[7]弘前市(16万人)[8]に分散している。

民間シンクタンク青森地域社会研究所は、県立のサービス施設(医療、スポーツ、福祉、文化領域)[注 2]については、青森市への集中が「他地域の住民は容易に利用することができない性質をもっている」と指摘し、1994年時点、青森市の県立施設が9施設あるなかで、さらに2ヶ所の大規模施設(県営サッカー場、県立ホール)の建設計画があり、「県内の不均衡さを助長する」とした上で、県及び県議会は単純な地域のエゴではなく住民サービス行政の政策方向を議論すべきであると述べている。[9]

青森県と八戸市の攻防 編集

八戸市は県施設を要望続けていくなか[10][11]、2003年に県が相次いで建設した青森市、弘前市、三沢市などの大型県立施設が要因になり財政危機に陥った。その結果、県の職員給与2〜20%削減、大規模公共施設の着工を五年間凍結を実施した[12]

2007年、県の緊縮財政解除に伴い八戸市とその周辺地域の地方議員らは、県立八戸芸術パークと県立屋内スケート場を県に要望した[13]。しかし、事態は進展せずしないままとなり、翌年に新聞に「八戸市と三戸郡内に文化やスポーツ関連の県立施設が一つもない問題」が報じられた[14]

2013年12月、青森県と八戸市は市営スケート場を建設すると発表。社会資本整備交付金を活用し、国50%、県50%、維持管理費は八戸市が負担することになり、2019年八戸市営の屋内スケートリンクが開館した。

2024年現在も、同地域に県立施設はない[注 3][15][16][17]

ギャラリー 編集

青森市の県立施設 編集

青森市以外 編集

県立施設 編集

県立大学 編集

県立病院 編集

県有福祉施設 編集

県有自然公園附属施設 編集

県有文化施設 編集

県有スポーツ施設 編集

  • 青森県営スケート場(1985年竣工、青森市)
  • 青森県総合運動公園(1966年開設、青森市)
    • 陸上競技場(1966年竣工、青森市)
    • 棒高跳び走路新設(2006年竣工、青森市)
    • 陸上補助競技場(2006年竣工、青森市)
    • 廃止された施設
      • 補助陸上競技場(1966年竣工、青森市)
      • 50mプール(1966年竣工、青森市)
      • 徒渉プール(1966年竣工、青森市)
      • 屋内プール(1976年竣工、青森市)
      • 県民体育館(1976年竣工、青森市)
      • 庭球場(1977年竣工、青森市)
      • 蹴球場(1978年竣工、青森市)
      • 相撲場、遊戯広場(1979年竣工、青森市)
      • 弓道場、洋弓場(1989年竣工、青森市)
  • 青森県武道館(弘前市、2000年竣工、青森市)
  • 新青森県総合運動公園(2002年開設、青森市)
    • 総合体育館・青い森アリーナ(2002年竣工、青森市)
    • テニスコート24面(2003年竣工、青森市)
    • スポーツ科学センター一般供用開始(2003年竣工、青森市)
    • かべうちテニス(2004年竣工、青森市)
    • さくら広場、流れ工、多目的広場等園地部分竣工(2009年竣工、青森市)
    • 球技場(2011年竣工、青森市)
      • 多目的運動場(サッカー、ラグビー等の試合可能天然芝フィールド)
    • 陸上競技場(2018年竣工、青森市)
    • 補助陸上競技場(2018年竣工、青森市)
    • 複合遊具やふわふわドーム・健康遊具(竣工年不明、青森市)
    • ジョギングコース一周2.5km(竣工年不明、青森市)
    • 投てき・アーチェリー場(2018年竣工、青森市)
    • 25mプール(竣工年不明、青森市)
    • 50mプール(2023年竣工、青森市)

県発注施設 編集

建設凍結施設 編集

県議会における立地改善要望の歴史 編集

青森県議会では県立施設が著しく青森市に偏っていることを問題視し、度重なる改善を要望している。

1986年~2000年 編集

1986年の県議会では、県議から「青森市を県都として力を注ぐのは結構でございますが、八戸には新産都市として発展するように、弘前には観光文化都市として文化の香りが漂うように、少なくとも旧三市にそれぞれふさわしい県立の施設が必要なのではないでしょうか」と分散立地への要望がなされた。[19]

1988年の県議会では、青森市以外に県立病院がない中で、県議から「岩手県においては市あるいは郡単位で県立病院があります。私は、県都以外の市町村にも県立病院を設置せよとは申しませんが、せめて各自治体病院に温かい手を差し伸べるべきである」と、県全体の均衡な医療予算の負担要望がなされた。[20]

1991年の県議会では、青森市以外に県立病院がない中で、県議から「(青森市の)県立つくしが丘病院にある痴呆性老人専門病棟に相当するものを旧三市である弘前、八戸に設置できないか」と県立病院設置の要望がなされた。[21]

1992年の県議会では、県議から「旧三市を比較すると、北村知事、あなたのお住まいになっておられる青森市は、県庁所在地であるがゆえに、高度な医療を確保している県立中央病院を初め、青森県立水族館、県立図書館、県営産業技術開発センター、県立郷土館、県立社会教育センター、県立の総合運動場、県立の体育館、県立スケート場等々行政面におけるあらゆる県立施設が集積いたしております。」と、不均衡な県有施設立地について発言があった。[22]

1995年の県議会では、県有施設がない八戸市に県立文化ホール、国際試合対応の県立屋内スケートリンクの建設要望があった。[23] [24]

1997年の県議会では、八戸市の県議が「私どもは八戸に何としても県立の何かが欲しいんですわ。(中略)旧三市の中で県立のものがないのは八戸だけですよ。(中略)いや、高等学校があると隣で言ってるけどもね、高校の建物とか体育館の問題じゃないんですよ。私たちは、みんな仲よくしながら、八戸の選挙区で八人とれてきてるんです。五十一人中の八人みんなでこれはしゃべってるわけです。ところが何十年たっても何にもできない(後略)」と、県に対する強い要望を行った。[25]

同年3月、八戸市の県議が県立施設について「本県には、青森、弘前、八戸、三沢、十和田、むつ、黒石、五所川原、この八つの市があって、県立を必要とする地域は──青森市以外の市でも県立が欲しいんです。体育施設ばっかりではないんです。(中略)文化的な面、そしてそういう総合的なものを各地域に網羅していかなきゃならぬのが県政課題だと思うんです。」と強く県立施設設置の要望を行った。[26] 同年6月「県立八戸芸術パークの早期実現が望まれるところでありますが、この芸術パークに整備される仮称「県立八戸文化音楽ホール」の建設に向けた今後の県の取り組みについてお伺いをいたします。(中略)これまでの県立スポーツ施設、あらゆる県立施設の整備状況を見てみますと、全県的な位置づけから県立の施設は青森市にその多くが建設されている(中略)仮称「県立八戸圏域屋内スピードスケートリンク」を建設すべきである」と強い要望を行った。 [27]

2001年~2024年 編集

2001年5月、県建設公営企業委員会にて、八戸市への県立水族館の分園設置の要望がなされた。[28]

2001年9月、県建設公営企業委員会にて、「(八戸市中心街地区に)できれば県立の駐車場をその消費地というよりも商店街が連帯している近くに、地下なり何なりの駐車場のスペースを確保し(中略)市役所の職員だけではなく企業に勤めている方々についても駐車場がやや不足している(中略)県営駐車場事業の推進、推進というよりその事業をやって良いかどうかという検討をしていただきたい。」と要望がなされた。 [29]

2002年1月、県議会にて、八戸地域に現在県立施設がない中で、地域総合整備事業債の廃止の影響で県立八戸芸術パーク整備の白紙撤回しないよう要望がなされた。[30]

2003年3月、県議会にて県議から「知事公約で十回にも及ぶ陳情をした。東北地方の類似都市で県立の施設がないのは八戸市だけになり、肩身の狭い思いをしている。弘前の武道館、青森には県庁北棟を初めいろいろな施設がある。税の面で県政に貢献していると自負しているが、いつまで陳情すればよいのか」と、県の対応について質問があった。[31]

2003年9月、県議会にて県議から「県立施設の地域バランス、公平公正等についてはどのように考えているのか。」と、県有施設立地の格差是正について質問があった。[32]続けて「県内の県立施設の設置状況、配置状況を見ますと、三八(地域)はないんですよ。総合運動公園から、芸術パークから、屋内スケートリンク、要望したのは一つも実現していません。負担ばかりですよ。それから日赤の建てかえ。これだって、県が十七億円しか出さないときに八戸が十三億円も出させられている。財政規模からいったら十分の一でいいはずです」と、度重なる要望にも関わらず県の県南地域の冷遇する態度について正した。[33]

2004年3月、県議会にて県議から「旧八戸市民病院跡地に専門の音楽ホールと美術館を併設した文化館建設を掲げ(中略)三村県政は早々と、五つの大型プロジェクトを五年間凍結すると県財政再生プランを宣言(中略)。何にもないのが我が選挙区であります。三市のバランスをとって、ぜひ八戸市にも文化的な施設をつくってほしいと二十四万市民は待望いたしております。」と、緊縮財政の中で適正な県施設立地を要望した。 [34]

2007年3月、県総務規格委員会にて県議から「新聞報道によりますと、八戸市長が県立施設建設の検討が少なからずも進展するとの強い期待感を示しているようであります。そこで質問ですが、この事業を担当する立場の部長として、八戸市長のこの強い期待に対して、部長はどのような所見を持っているのか(中略)県立施設はまさに八戸、三八地域の長年の願いであります。 」と、長年の陳情、要望に対する県総務部長への考えを問うた。 [35]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 簡易的な休憩所、県立高校、県少年自然の家、県庁舎やそれに類するものはここに含まない
  2. ^ 1999年に青森県立保健大学が開学のため、本誌発行時は県内に県立大学はない
  3. ^ 青森県立種差青少年自然の家は、特定の教育用途の施設のため本記事ではね県立高等学校と同じ教育施設扱いとして文化、芸術、スポーツ、医療機関、福祉に該当しないため除外した

出典 編集

  1. ^ 「月刊れぢおん青森 = Région Aomori monthly」16(188),1994年07月発行,青森地域社会研究所編,青森地域社会研究所発行,「提言のページ 県立施設立地について 青森地域社会研究所 参与 工藤欣一」
  2. ^ 朝日新聞2005年9月13日 朝刊青森全県31頁
  3. ^ https://www.pref.aomori.lg.jp/k-kensei/sisetsu.html 青森県の施設
  4. ^ https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/hospital/ 病院局 青森県庁HP
  5. ^ https://www.auhw.ac.jp/ 青森県立保健大学
  6. ^ 人口・世帯数等(住民基本台帳)/青森市”. www.city.aomori.aomori.jp. 2024年5月16日閲覧。
  7. ^ 八戸市人口データ(令和6年度)|八戸市”. www.city.hachinohe.aomori.jp. 2024年5月16日閲覧。
  8. ^ 青森県弘前市”. 青森県弘前市. 2024年5月16日閲覧。
  9. ^ 「月刊れぢおん青森 = Région Aomori monthly」16(188),1994年07月発行,青森地域社会研究所編,青森地域社会研究所発行,20「提言のページ 県立施設立地について 青森地域社会研究所 参与 工藤欣一」
  10. ^ 『八戸市の県議8人、「屋内スケート場」の要望ーー県「実現は困難」と回答/青森』1999.06.17 地方版/青森 毎日新聞記事検索
  11. ^ 『八戸芸術パーク整備検討委員会が報告書ーー木村守男知事に/青森』2001.12.19 地方版/青森 22頁 毎日新聞記事検索
  12. ^ 『県が「財政改革プラン」素案 基金、380億円確保を=青森』2003.10.16(木)青森 朝刊 青森28頁 読売新聞
  13. ^ 『八戸に県立施設誘致、超党派で促進議員団 県幹部「政治判断の世界/青森県』 朝日新聞2007年10月6日朝刊青森全県 31頁
  14. ^ 『屋内スケート場、建設優先要望へ 県に小林・八戸市長/青森県』朝日新聞2008年3月29日朝刊青森全県・地方 30頁
  15. ^ https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kyoiku/e-sports/taiiku_shisetsu.html 県有体育施設について 青森県庁ウェブサイト 2024年5月18日閲覧
  16. ^ https://www.pref.aomori.lg.jp/k-kensei/sisetsu.html 青森県の施設(文化施設)青森県庁ウェブサイト 2024年5月18日閲覧
  17. ^ https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/hospital/ 病院局 青森県庁ウェブサイト 2024年5月18日閲覧
  18. ^ 朝日新聞2013年12月12日青森全県版25頁
  19. ^ 青森県議会昭和61年第168回定例会(第3号)本文 1986-12-09 38 二十四番 福島力男県議の質問
  20. ^ 青森県議会昭和63年第174回定例会(第4号)本文 1988-05-24 五番 山田弘志県議の質問
  21. ^ 青森県議会 平成3年第185回定例会(第4号)本文 1991-03-06 三十六番 福岡礼次郎県議の質問
  22. ^ 青森県議会平成4年第189回定例会(第3号)本文 1992-03-06 六番 中山安弘議員の質問
  23. ^ 青森県議会平成7年第203回定例会(第2号)本文 1995-10-12 五十一番 滝沢章次県議の質問「県当局におかれましては、音楽、演劇の専門の県立文化ホールを一日も早く八戸に建設していただきたいのであります。また、八戸の美術館はもとの税務署の建物を利用してるような状況であり、この際、文化ホールと美術館を併合する形で考えるならばミニ芸術パークの理想にも近いものが完成すると思いますが、知事の御所見を伺いたい。」
  24. ^ 青森県議会平成7年第203回定例会(第2号)本文 1995-10-12 五十一番 滝沢章次県議の質問「氷都八戸に国際試合のできるインドア四百メートルコースのスピードリンクを建設していただきたい。」
  25. ^ 青森県議会平成9年第209回定例会(第4号)本文 1997-03-05 十三番 中山安弘県議の質問
  26. ^ 平成9年度予算特別委員会(第3号)本文 1997-03-14 174:中山委員
  27. ^ 「平成9年第210回定例会(第4号)本文 1997-06-25 十三番 中山安弘県議の質問
  28. ^ 青森県議会平成13年建設公営企業委員会 本文 2001-05-21 12:中山委員「(八戸市に)県立の水族館の分園なるものを、イカを主に取り扱うような水族館を(中略)ご検討いただきたい。そのことを強く要望しておきます。」
  29. ^ 青森県議会平成13年建設公営企業委員会 本文 2001-09-21 10:中山委員
  30. ^ 青森県議会平成12年度決算特別委員会(第3号)本文 2002-01-16 19:間山委員「八戸市には現在県立施設がない(中略)こうしたやさきでの地域総合整備事業債の廃止は八戸芸術パークの整備に影響が大変大きい、(中略)八戸芸術パークの整備を決して白紙に戻さないでほしい」
  31. ^ 青森県議会平成15年第233回定例会(第5号)本文 2003-03-05 六番 清水悦郎県議
  32. ^ 青森県議会平成15年第235回定例会(第2号)本文 2003-09-22 九番 山内正孝県議
  33. ^ 青森県議会平成15年第235回定例会(第2号)本文 2003-09-22 九番 山内正孝県議
  34. ^ 青森県議会平成16年度予算特別委員会(第3号)本文 2004-03-15 3:清水委員
  35. ^ 平成19年総務企画委員会 本文 2007-03-13 114:滝沢委員

関連項目 編集

外部リンク 編集