05 無限の心臓。
2012.03.17 (Sat)
と、言うわけで、シュープリスが完成しました。
駆動方式は電力と魔力のハーフ。制御方法は魔力制御。勿論機械制御も可能ではあるが、機材がかさばるので基本的に魔力制御。
主機は無限の心臓。うん、そうなんだ。無限の心臓なんだ。
マナウス神像が無いし、獅子の心臓とか作るの無理臭いかな~とか思っていたのだが、幸いにして俺の手元にはカリンが存在する。
カリンは基本ネクロノミコンではあるが、編纂するときに様々な魔導書を参考にしている。
――例えば、エイボンの書とか。
無限の心臓の記述から作り上げた獅子の心臓。
獅子の心臓から沸き上がる無限の熱量を、魔術的変換により電力化。これによりシュープリスは無限のエネルギーを手に入れることになった。
ただ、なんというかまぁ、やはり魔導書の存在は必須。
獅子の心臓の起動と制御には、一定以上の魔術的情報量――つまりは字祷子が必要となる。
人間の持つ魔術的情報量はどうしても一定以上に足りず、コレを単身で動かしうるのは、それこそ魔人の類。
そしてシュープリスを動かせるほどの魔力を持つ魔導書など、この世界に存在するのはカリン一冊。
魔法書ではダメなのだ。あくまで魔導書でなければ。
つまり、実質この世界でシュープリスを動かせるのは俺一人という事に成る。
うん、準備はこんなところか。
戦の準備は十全。
では次に、組織の方に力を入れていこうと思う。
組織、と言うと妙な響きだが、要するに俺はこの世界で独自の魔術基盤を持つことになる。
この魔術基盤を俺一人で独占するのは良くない。と言うわけで、才能のありそうな人間を拾っては教育したりしていたのだが、いつの間にか規模が大きくなっていた。
と言うか、俺が拾う以上に俺の元に勝手に集まってくる人間が多かった。
それも、俺が教える前から、どうも魔導に知識のある臭い人間が妙に多かった。
俺以外に魔導を扱う人間がいるという事なのだろうか。
試しに知識の元を尋ねてみたのだが、彼等は軟らかく笑って黙秘した。
悪い気配もしなかったので、問題は無いと判断。そのまま放置しておくことにした。
内側の毒? 悪意の2~3飲み干せずして何が経営者かっ!!
ではなく。
俺の記憶が正しければ、ネギま本編が始まるまで、あと数年しかない。
それまでにある程度、組織としての形を整える必要がある。
現在我々の組織に加入しているのは、先進国各国政府、地域土着の魔法組織など。
関西呪術協会とも提携を結んでいる。
「社長、AMF搭載型スタンロッド、漸く完成しました!!」
「あー、お疲れ様。漸くだねぇ」
アンチ・マギリング・フィールド搭載型スタンロッド。
要するに魔法を弾く機能を備えた電撃ロッドだ。
「因みに持続時間は?」
「連続稼動で30分が限界です……」
「そんなところか。まぁ、魔法使い相手に最低限の武装で立ち向かう場合、30分以上対峙するのは自殺行為だし。いっか」
我等が組織、名前をM∴S(銀色の月光団)だ。
因みに命名はかなり適当。
M∴Sの構成員は各組織から技術提供の代わりに派遣された構成員だ。
M∴Sの主立った組織目的。それは魔術結社にありながら、表と裏の分離にある。
昨今、『魔法は隠匿されるべき物』とされながらも、西洋魔術師達は平然と一般人の前で魔法を行使する。そうして魔法がばれた場合、連中は目撃者の記憶を好き勝手に弄繰り回す。
そもそも連中は、魔法を隠匿すべき物として扱っていない節がある。ソレを建前にして、一般人を魔法の――裏社会へと引きずりこむ口実にすらしているように感じられる。
そんな現状だ。連中は自分達こそ正義と妄信し、その勢力は拡大の一途を辿っている。
故に。今こそ我等は初心に帰るべきではないのか?
魔法の隠匿。その当然を、当然としてなすべきではないのか?
ではそれを成す為に先ず必要なことは何か。
各国の政治にもぐりこみ、内側で好き勝手を行う|魔法使い《ウミ》達の排出。
各地に伝わる土着の魔法を異端と蔑み、自分達こそ世界の正義とする傲慢な魔法使い達から自らの土地を奪い返す。
……とまぁ、なんとも過激なお題目を前に、M∴Sは徐々に規模を拡大させた。
いや、規模を拡大させたと言うよりは、分断されていた土着の組織達をまとめ、一つの巨大な組織に下と言うほうが正しいか。
表政府に対してはAMF装置とマギリングセンサーの販売により政治社会からの魔法使いの追い出しを。
裏世界では、我が物顔で土地を侵略する魔法使い達に対する攻撃を。
結果から言うと、俺が動く必要は本当にあったのだろうか、と言うほどあっという間に西洋魔法使い達の勢力を削ることは出来た。
と言うのも、先ず最初に世界各地に点在するゲートポートを襲撃したというのが大きいだろう。
月に一度しか開かないゲートポートだ。逆に言えば、その月一以外は警戒が極端に緩んでいるのだ。
何時か起こるであろう完全なる世界によるゲートポート襲撃事件。
けれども、我々にはそれを待つだけの余裕が無い。西洋魔法使い達と表立って敵対する以上、敵の増援が来る事がわかりきっているのだ。その補給ルートを潰すのは当然の事だと言える。
と言うわけで、世界各国の主要なゲートポートの破壊を慣行。
世界各国で同時に破壊されたゲートポート。とはいえ、活動休眠期間で、人的被害は殆ど無し。破壊も旧世界側からのみで、魔法世界側のゲートはまだ残っている。
破壊できたのは大国の支配する地域に存在する物。アメリカやロシア、中国あたりのゲートは破壊できたものの、ヨーロッパのほうのゲートは破壊し損ねてしまった。
しかし、それだけでも今は絶大なチャンスなのだ。
「此処か」
召喚したシャンタク鳥の記述により空に留まる俺の眼下。
世界各地で起こった同時ゲートテロ事件。その処理のため、現在稼動しうるゲートのすぐ傍にあるメルディアナは、こんな時間だと言うのにまだまだ人の活気が満ちている。
――ひと気が多いのはデメリットだが、人の出入りが多いのはメリットだ。
魔術の気配を隠蔽し、そのままゆっくりとメルディアナの敷地のすぐ傍へ。
集中すると共に感じる魔力の結界。侵入者探知の初歩的且つそれゆえに頑丈な結界。
然し初歩的という事は、付け入る隙も十分にあるという事だ。
この結界は、単純に内側と外側を出入りする存在が、出入りに関して許可を持っているかの有無を確認するだけ。
確かにMMの庇護下にある、それも魔法使いが大量に要るこの拠点に特攻をかけようと言う馬鹿は居まいが、だからといってこの現状でこの結界しか張っていないと言うのは油断に過ぎる。
ヨグ=ソトースは門にして鍵の存在。
結界の外側から内側に門を開くことくらいは、お茶の子済々というやつだ。
そうして敷地の内側に入ってしまえば後は楽勝だ。
魔法使いと言うやつは、それに固執する余り、科学に対してどうにも惰弱と言うか警戒が薄いというか。
予め身に纏っていたスニーキングスーツの上から、更に黒色のローブを身にまとう。
こうして夜景に紛れてしまえば、魔法使い達に感知されることは先ず無い。
魔法を使わず科学を使う。まさに科学の勝利。
そうしてこそこそとメルディアナの中を徘徊し、漸く見つけた地下への入り口。
漸くだ。漸くこのときが訪れた。
こっそりと進入した地下階段。
折りきった先の扉を開いた先。奥まで光が行き渡らないほどの広大な空間に収められているのはその広大な空間を所狭しと埋め尽くすほどの石像。
必要なのはこの中の一体。けれども、術式はこの全てにかける。
本当は父さんだけ助けられれば俺はそれでいいのだけれども、多分父さんのことだ。自分だけ助かったと知ればそれはそれで悲しむだろう。
ならば、俺は父さんに義理を返すため、また共に遊んだネギとアーニャに対する義理として。
瞬時に身を覆う魔導書。マギウススタイルと化した瞬間、全身を巡る魔力が活性化し、その活性化した魔力を更に意図的に奮起させる。
「――術種選択、解析術式」
《対象捕捉、石化術式》
「――術種選択、解呪術式」
《ナアカル表による呪詛解読。術式置換。人を呪う悪しき願いよ、我が前にその戒めを解き放たれん》
「――ディスペル」
放たれるのは薄緑色の輝き。
魔力が大気に触れたその反応。輝く緑は、徐々に暗い地下室を覆いつくしていくが――。
「ち、やはり出力が足りんか」
《銀鍵守護機関の使用を提案》
「あれ単独でか?」
《肯定。銀鍵守護機関の使用は、解呪後の退却時にも有効》
「ふむ……」
まぁ、銀鍵守護機関はシュープリスのほかに、もう一つほどテスト機が作られている。
其方をこの場に転送させれば……いけるな。
「では、その案で」
《準備を開始します》
そういうわけで、大慌てで地下室の石像を少し詰めて、小さいながらスペースを用意する。
このスペースに上手く召喚出来ればいいのだが。
「――虚数展開カタパルト作動」
Side other
その瞬間、人の踏み入る事の無い、完全な静寂に満たされていた地底の空間に、突如として火が入る。
何処からともなく送信された字祷子信号。
基地に設置された自動演算装置はその字祷子信号を読み取ると、即座に基地内の動力を全力で稼動させる。
――――――Pi
そうして起動する虚数展開カタパルト。
それに連なる貨車の一つが、自動的に発信位地へと移動しく。
その上に載せられているのは、銀の円盤。巨大なその円盤は、実に直径1メートルはあり、分厚さも相当なものがある。
――――|~=)(’&%$#”!
貨車が到着したのは、巨大な瞳の真正面。
機械とは思えぬ、ギョロギョロと動くその瞳。それが貨車の上のそれを捉えた瞬間、周囲を黄金の光が包み込み――。
そうしてそれは、無限に続く奈落の虚空へと落下していったのだった。
Side Other End
ズンという威圧感と共に空間に描き出される魔法陣。
その中から墜ちるように召喚されたそれに、対衝撃緩和術式を投げて軟着陸させる。
「よし、それじゃ行くぞ」
《再演》
そうして、再び先ほどと同じ術式を構成していく。
但し今回は一工程だけ違う工程が含まれる。
カシャンと音を立てて、円盤の内側からせり出してくる。
それら石柱は高速で回転を開始すると共に。その中心に現れた空間の歪から無限の熱量/無限の魔力を引き出す。
其処から生み出される莫大な魔力を元に、再び、今一度解呪の法を――。
あふれ出す緑色の光が、地下の広い空間を塗りつぶし、地下室一杯に、それどころか更に力の与え所を求めて四方八方へと荒れ狂う。
《ナアカル表による呪詛解読。術式置換。人を呪う悪しき願いよ、我が前にその戒めを解き放たれん》
「――ディスペルッ!!」
そうして、光が爆ぜた。
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