トイレは絶対に子どもひとりで行かせてはいけない
最近、「ジェンダーレストイレ」が話題になっていますが、防犯の観点からいえば、女性専用トイレをなくすのはとても危険です。すでに馴染みのある「だれでもトイレ」も、誰でも入れるというのは「入りやすい」場所ですから、危険な場所です。
日本だと、男性用・女性用・障害者用(だれでもトイレ)の3つに区切られているトイレが多いですね。でも海外だと、まずは男性用と女性用に区切られ、その中に障害者用のトイレがあることが多いです。
だれでもトイレやジェンダーレストイレを設置するなら、5つ目のトイレにすれば問題がないと思います。
なぜ性別で分けるかというと、「入りにくく」するためです。
欧米では、男性用トイレと女性用トイレが別の場所に設置されていることも少なくありません。男性用トイレと女性用トイレの入り口は、遠ければ遠いほど安全です。なぜならば、女性用トイレの前を男性がうろついていたら違和感が生まれますから、犯行現場として選ばれにくくなります。
日本のトイレは男女の入り口が隣り合っていたり、入り口がひとつで左右に分かれていたりします。これは犯罪者にとって「入りやすい」場所です。安心して異性のトイレに近づけるからです。
実際に、トイレが犯行現場になった犯罪は数多くあります。ショッピングモールやスーパーなど、人の多い店舗のトイレも例外ではありません。
犯罪者は、子どもがひとりでトイレに行く姿を見て、その後を追って自分もトイレに向かいます。
トイレのそばでずっと待っている訳ではなく、近くのベンチに座ったり、外のトイレであれば駐車場の車の中にいたりします。スマホをいじりながら座っていれば、1時間でも2時間でも苦もなく待てますし、周りがそれを見てもまったく違和感を感じません。
そのうちに子どもが通って、大人が一緒だったらあきらめますし、ひとりだったら「今がチャンス!」となります。これが犯罪機会です。
普通は、男の犯罪者は女の子を狙いますが、男の子を狙う男の犯罪者も少数ですがいます。ただ、これはゾーニングで防ぐのは困難です。なので性別を問わず、子どもをひとりでトイレに行かせないようにしましょう。
ライン1つで学校を「入りにくい」場所にすることも可能
最後になりますが、私のアドバイスをもとに、全市に取り組みを広げた藤沢市の学校の例をご紹介したいと思います。
藤沢市の小中学校では、校門から校舎玄関まで、地面にオレンジ色のラインが引かれています。
これは、学校に侵入した犯罪者がとっさに「受付に行こうと思ったのですが、どこかわからなくて」などと言い訳をする余地をなくすためです。
犯罪者が侵入するかどうかを判断する基準は、「見つかったときに言い訳ができるかどうか」。誘導ラインのない学校であれば、教職員に見つかっても「迷ってしまった」という言い訳ができますし、おそらくそれで咎められることもないでしょう。
しかし誘導ラインのある学校では違います。
来校者はラインの上を歩くでしょうし、受付がどこか迷うこともありません。ラインから外れただけで「不審な行動」とみなすことができ、見つかった際に言い訳することもできません。また、ライン上にいるかどうかは子どもでも簡単にわかります。
言い訳しにくいと思わせることは、「入りにくい」場所にするということです。こうやって、ライン1本で心理的に「入りにくい」場所にすることが可能なのです。コストもあまりかかりません。
我が子を犯罪から守るためにできることをまとめると
神奈川県藤沢市の小学校の敷地内に引かれた誘導線。
校門から校舎玄関までをわかりやすく示しているため、オレンジのラインから外れただけで「不審な行動」とみなすことができる。