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リボンの騎士

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2024-05-16 17:37:17

リーフ指♀
リーフを庇って怪我する指揮官の話

Posted by @itnssr

迂闊だった、完全に。
地上での任務中に他部隊からの支援要請があり駆け付けた先でのことだった。戦闘はルシアとリーに任せてリーフと共に後方支援と怪我をした構造体の治療をしていた時だ、崩れかけたビルの屋上からリーフめがけて侵蝕体が襲い掛かってきたのだ。咄嗟に身体が反応して彼女を庇うようにして前に飛び出した。降ってくるタイミングを見計らって思い切り蹴りを入れた、のだが。
「いっ……!?っこいつ、硬……っ!」
「指揮官っ!」
悲鳴のようなリーフの声、と同時にフロート銃のレーザー砲が降り注ぐようにして侵蝕体に浴びせられる。鈍い音を立てながら侵蝕体がバラバラと崩れていく様を見つめながら、私は蹴りを入れた方の足を見た。嫌な予感がする。
「指揮官大丈夫ですか!?……見せてください」
「い、いや大丈夫だから、」
「見せてください!」
立ち上がろうとして激痛に顔を歪めた私の姿にリーフの語気が上がる。大人しく痛みが走る方の足を見せると、ブーツをゆっくりと脱がされた。……ふくらはぎがとんでもなく腫れ上がっている。素人目からしても分かる程だ、何より自身の身体のことなのだから理解している。これは、折れている。
「待っていてください、今固定します」
テキパキと私の処置をするリーフの顔は険しい。それもそうか、指揮官に庇われた挙げ句にその指揮官が骨を折ったのだ。リーフからすれば情けなくて仕方ないだろう。此方としても面目も立たない。痛みよりも申し訳無さから口をつぐんでいると、遠くからルシアとリーが此方に駆け寄ってくるのが見えた。どうやら侵蝕体達を掃討し終わったようだ。
「指揮官!大丈夫ですか!?」
「あぁ、うん、見た目程酷くは……
「ふくらはぎの骨が折れています。すみませんがセリカさんに空中庭園への帰投の準備をお願いして貰えますか」
「わかりました、すぐに」
ルシアが立ち上がって空中庭園への連絡を始めた。リーは周囲を警戒してくれているようだ。
「すみません、俺達のせいでグレイレイヴン隊の指揮官に怪我を負わせてしまった……
「あなた方のせいではありません。私の不注意のせいで、指揮官に怪我をさせてしまったんです」
「そんな、リーフのせいじゃない!私がいける!と思って蹴りを入れたのがいけなかったんだよ……
皆口々に自分のせいだと責めるが、リーに「誰のせいでもないでしょう、ここは戦場です。いつ誰が怪我をしてもおかしくはないんですから」とたしめられてしまい、口を閉ざすしかなくなる。
暫くして近くの空き地に空中庭園からの迎えの輸送機が到着したのが見えた。歩けないどころか自力で立ち上がれない私は、仕方なしに男手であるリーに手を貸してくれるように頼んだ。リーもそのつもりだったようで私を抱き上げようとした、瞬間。
「リーさん、ここは私が」
そう言うやいなやリーフが私をそっと抱き上げた。所謂お姫様抱っこでだ。一瞬え?リーフが私を持ち上げた?と呆気に取られるが、そういえば構造体は人間の二十倍近くの力が備わっているのだということを忘れていた。いや、そうではなく!
「な、リーフ?」
「怪我をさせてしまったのは私の責任です。ですから、スターオブライフまで私が責任を持って指揮官をお運びします」
「いやいや!ちょ、まって!あのね、いくら女同士って言っても私より華奢な女の子に運ばれるっていうのは……!」
「大丈夫ですよ、指揮官。絶対に落としたりなんてしません、私の大切な指揮官なんですから」
にっこりと笑って見せたリーフの笑顔は可愛らしいのに、行動が男らしすぎてそのちぐはぐさに頭が混乱してきた。助けを求めるようにリーを見るが、頭を降られた。どうやらリーフに従えということらしい。
「さぁ、行きましょう皆さん」
先陣を切るようにして輸送機に向かうリーフの足取りは軽い。まるで重さなんて一つも感じていないかのような仕草に何とも言えない気持ちになる。しかしそれと同時に真っ直ぐと前を見つめるリーフの顔が、何だかいつもより頼もしくも凛々しく見えて、幼い頃読んだ少女騎士が主人公の物語を思い出した。
リーフは可憐な少女だが、少なくとも今だけは可憐さだけではない凛々しさを秘めた騎士様のように私の目には映った。


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