「PTA会費ゼロ」の学校増加の裏で、「それでは困る!」と圧力をかける“意外な抵抗勢力”とは?
PTAの運営体制においては、かねて「会費を強制徴収」していることが問題視されてきました。この悪しき風習を脱却するべく、実は今、会費を「無料」にするPTAがじわりと増加しているのです。そうしたPTAは、どうやって運営しているのでしょうか。会費無料化が進む一方で、「それでは困る!」と難色を示す、意外な抵抗勢力とは――。PTA・学校・保護者に豊富な取材経験を持つ筆者が解説します。(ライター 大塚玲子) 【この記事の画像を見る】 ● PTAのトラブル&負担を一気に減らす 「会費ゼロ」という切り札 PTAの見直し・改革の動きが徐々に広がっています。長いことPTAは保護者と教職員の「義務」とされ、本人の意思とは関係なく加入や活動、会費を求められるのが常でしたが、最近は「本人の意思を尊重する」という、本来であれば当たり前のやり方に向かいつつあります。 自治体や学校によっては旧来通りのPTAもまだまだ多いのですが、「任意」のワードさえ口にしづらかった10年前とはだいぶ、世間の空気が変わってきました。数年前までは「改革無風エリア」だった東北地方を含めた日本各地で、PTAの改革例がちらほら聞こえてきます。 さて、そんななか筆者が最近気になっているのが「会費の徴収をやめる」PTAの出現です。改革を進めるなかで「会費ゼロ」という選択をするPTAが、少数ながらもあちこちで出てきているのです。 会費無料化に踏み切ったPTAは、どうやって運営を行っているのでしょうか。改革が進む中で、「それでは困る!」と難色を示す、意外な抵抗勢力の正体とは――。今回は、それらの点を見ていきたいと思います。
● 会費の無料化は 悪習「前例踏襲」を打破できる! まずは会費ゼロという仕組みの是非についてですが、これ、筆者はいいと思うのです。PTAの最大の問題点のひとつは「前例踏襲」、つまり「前年通りの活動をすることが目的化しがち」な点だと思うのですが、その原因は少なからず「会費の徴収」にあるように思えるからです。 「各事業が必要なものかどうかを考える前に、毎年決まった予算が確保される」→「予算を消化するために活動をこなそうとする」→「各々の希望や事情を無視して人を集める」→「困る人・泣く人が出る」という面があったのではないかな、と。 また、これまでのPTAは「全員が加入する」ことを前提に会費を徴収&用途を決定してきたため、「入りたい人が入る」という本来の形に改めたとき、入らない人を「ズルい」と言う人が出るなど、トラブルが起きがちです。 たとえば、PTAではよく卒業式の記念品などを子どもたちに配りますが、これも「全家庭がPTAに入っている(=お金を払っている)」という前提で始まった慣習です。そのため「PTAに入らない」という人が出てくると「ただでもらうのはズルい、あなたのお子さんにはあげない」「お金を払え」などの声があがり、揉めてしまうのです。 会費をゼロにして、お金をかけない活動を行うようにすれば、こういったトラブルも解消します。必要なお金は寄付を募ればいいでしょう。そのほうが予算管理や報告資料を作る役員さんの負担もだいぶ減らせます。 「いやあ、そんな簡単な話じゃないでしょ? 寄付を募るのだって手間がかかるだろうし、会費がないとやっぱり困ることが多そうでは?」 そんな不安を感じた人もいるでしょう。実際に会費ゼロに踏み切ったPTAは、どうやってそれを実現したのか? 会費ゼロにして困ることはないのか? 筆者が取材で出会った人たちの声をもとに、皆さんの疑問にお答えしていきます。