「垳」「閭」読めますか 埼玉の方言漢字マップ作成

米沢信義
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 「垳(がけ)」「閭(さと)」など、県内の地名で地域限定の特殊な異体字などが使われている例を集めた「方言漢字マップ 埼玉県編」を八潮市の住民団体が作った。誕生して150年にあたる埼玉県の「埼」の字も地名に使われるのは珍しいといい、「地名を通して地域の魅力に気づいてほしい」と希望者へ郵送もしている。

 作者は「八潮の地名から学ぶ会」。事務局長の大学職員昼間良次さん(47)は2012年、区画整理事業に伴い変更されようとしていた同市大字垳の地名保存運動に奔走したのを機に、各地で独特の漢字が使われていることを知った。

 「方言漢字」などの著書のある笹原宏之・早稲田大教授の監修を受けながら、18年、茨城県の「圷(あくつ)」、宮城県の「閖(ゆり)」といった全国の方言漢字30余りをリーフレットにまとめて発行。

 「今度は足元の埼玉を」と昨年から県内各地を訪ねて資料を集めた。地元では当たり前と思われている漢字が実は全国的に珍しいといった事例を、看板などの写真とともに地図へ表し、6千部が今月完成した。

 例えば「埼」を含む地名は、県外では神埼(かんざき)市(佐賀県)、那須塩原市埼玉(さきたま)(栃木県)などわずかで、読み方は「さき」。さいたま市岩槻区の大字「釣上」は「かぎあげ」と読み、「釣」は「鈎」「鉤」の略体だという。

 希少漢字では、八潮市の「垳」は全国唯一の地名。所沢市入間市に残る「岾」と、川越市ふじみ野市に残る「●(土へんに赤)」は「はけ」と読む。いずれも川岸の斜面に結びつく漢字で、河川が多い埼玉らしい地名だ。鴻巣市大字滝馬室の小字「上閭」「中閭」「下閭」も珍名。「閭」には集落という意味があるという。

 ただ、収録した多くの地名は消滅の危機にあり、バス停名でしか確認できないものもある。昼間さんは「方言漢字は長い歴史や地形が反映した地域の資産。コロナ禍が明けたら、マップを片手に土地を巡って埼玉を再発見してほしい」と話す。

 マップはやしお生涯楽習館、八潮市立資料館などで無料配布中。郵送希望は、自身に宛てた返信用封筒(84円切手を貼る)を同封して〒340・0816 八潮市中央1の6の25 「八潮の地名から学ぶ会事務局B係」まで。問い合わせは昼間さん(090・4389・4895)へ。(米沢信義)

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