劇場公開日 2009年10月31日

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サイドウェイズ : インタビュー

2009年10月26日更新

アカデミー脚色賞に輝いた04年製作のアメリカ映画「サイドウェイ」を、日本人キャストで新たに生まれ変わらせた「サイドウェイズ」。オリジナル版のスピリットはそのままに、冴えない中年の道雄(小日向文世)と大介(生瀬勝久)が、カリフォルニアのワイナリーを巡る旅の中で人生を見つめ直していく姿を描く本作について、主演の小日向文世に話を聞いた。(取材・文:鴇田崇)

小日向文世 インタビュー
「撮影で日本を1カ月間も離れたことが、僕の人生の最大の寄り道かな(笑)」

不器用な主人公・道雄をナチュラルに演じて魅力を発揮
不器用な主人公・道雄をナチュラルに演じて魅力を発揮

――小日向さんと生瀬勝久さんに白羽の矢が立った理由について、亀山千広プロデューサーが「情けない男に見えるから」と冗談交じりに記者会見で言っていましたね。

小日向&生瀬は「情けない男」?
小日向&生瀬は「情けない男」?

「そう見えていたのかなあ(笑)。僕は亀山さんが携わった『UDON』や『ザ・マジックアワー』などの作品で、僕の仕事を見て声をかけてくれたと思っていますけど、確かに主人公の道雄は情けない男ですね(笑)。僕はドラマの『あしたの、喜多善男…』で情けない男を演じたばかりだったので、うれしいような気もします。それと、オリジナル版の主演俳優(ポール・ジアマッティ)もけっこうオデコがいっちゃっているので、ビジュアル的な理由もあると思いますけどね(笑)」

――劇中では、不器用な道雄とチャランポランな大介が、対照的な存在なのに似た者同士に見えて、映画を見る40代の男性が共感しそうな心情がよく伝わってきました。

「僕は55歳なので、道雄と大介が同い年に見える工夫をしました。カツラを着けています(笑)。生瀬さんと比べて見て、僕だけが大学の先輩のように見えてしまってはダメだった。でも、カツラを被ると全然違いますよ。写真で見てもいい感じに仕上がっていますが、1カ所だけ気に入らない写真があって(笑)。被りかたを失敗してしまって、いかにもカツラ被っています、みたいになってしまいましたね。カツラの話になってしまいました(笑)」

インドア派なところが道雄と共通?
インドア派なところが道雄と共通?

――道雄を演じている小日向さんがナチュラル過ぎて、地ではないかと錯覚しますが、素顔の小日向さんは、道雄と大介のどちらのタイプに近いのでしょうか?

「どちらかと言えば……やはり道雄ですかねえ(笑)。大介みたいな行動力は、僕にはない。生瀬さん自身は、大介と違ってとても常識的な男で、女性関係だってちゃんとしていると思いますけど(笑)、自分からアクティブに冒険していく性格はまさに大介ですね。舞台で一緒に旅公演に行ったことがありますが、生瀬さんは休みの日のスケジュールまで決まっている人。僕はどこにも出かけない。ホテルにいても、翌日がオフなら外出はしないですね」

――インドア派の小日向さんは、道雄と大介のように、ちょっとだけ人生の寄り道をしてみようということはなかったのでしょうか?

「僕の人生には寄り道はなかったなあ。本当に寄り道をしてこなかった。23歳で役者になると決めて、この年まで32年間、役者一筋の人生でした。寄り道どころか、他のことを一切考えてこなかった。スキーで大怪我して、1年間何もしなかった時期が、55年間の人生の中の寄り道だったかな。だから、この映画の撮影で日本を1カ月間も離れたことが、僕の人生の最大の寄り道かな(笑)。仕事じゃなければ、外国にも行かないです。一人旅なんて考えられないですからね」

――本作は亀山プロデューサーの言葉を借りれば、日本人の大人が楽しむための青春映画を目指して製作されたわけですが、そのコンセプトについて、何か思うことはありますか?

頑張っている人たちの夢を応援する映画になった
頑張っている人たちの夢を応援する映画になった

「寄り道をしてこなかった大人たちにおくる青春映画ですが、青春ってもともと若い人たちの言葉。人を好きになったら無我夢中でアタックする、自由恋愛を謳歌するようなイメージがあります。家庭を持った大人は恋愛ができませんし、そういう意味では若い人の言葉だとは思うけど、道雄は未婚で、あの年でドキドキ恋愛をしている。たとえば団塊の世代の人たちが見て、『懐かしい、俺も女房と別れたから、私も旦那と別れたから、もう一度恋愛してみよう』とか思ってくれたら、そういう意味で夢が持てますよね(笑)」

――「サイドウェイズ」は恋愛以外でも、人生の数あるイベントに対してポジティブな気持ちにさせてくれるドラマとして、幅広い世代から支持を得られそうな気がします。

「そうそう。たとえば、この人は本当に素敵だな、いい仕事をしているなとか、そういう風に人を尊敬する気持ちはとても重要ですよね。そういうことを思わせる、あらためて気づかせる要素が、この映画にはあると思います。登場人物たちはお互いの立場を認め合って、みんな人生を頑張ろうとしているわけですからね。そして、みんな傷を抱えている。それでも、頑張っていこうというポジティブなテーマが、観客の皆さんに伝わっていけばいいなと思います」

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