ポセイドン/ネプトゥヌス 海を支配する神
ポセイドンは海を支配する神。ティタン神族のクロノスの子で、ゼウスとハデスと兄弟。髭をたくわえた壮年の男性もしくは老人の姿でイメージされました。海のニンフのアンフィトリテを妻とし、その間に生まれたのがトリトン。ローマではネプトゥヌス、英語でネプチューン Neptune。ネプチューンとは海王星のことでもあります。
ポセイドンは、ティタン神族との戦いの際に鍛冶職人でもある巨人キュクロプスから贈られた三叉の矛(トリアイナ、英語でトライデント)を武器とし、これによって嵐や津波を引き起こす力を有すると考えられました。ネプチューンすなわち海王星を表す記号「♆」は、この矛のイメージに由来。
また図像表現では、イルカと共に描かれるほか、馬(ヒッポス)と魚(カンポス)が合成された姿をしている「ヒッポカンポス」という想像上の生物に乗っているところが描かれることもあります。ヒッポカンポスについては別項を参照。
馬といえば、ポセイドンは馬の神でもありました。海と馬の神、というのは意外に思われるかもしれませんが、ポセイドンは古くは、ギリシア先住民に崇拝された大地の神、特に地震を司る神だったと考えられ(異名が「大地を揺らす神」)、この点が馬の神でもあったことと関連するのかもしれません。
ゼウス、ハデス、ポセイドンの兄弟間で、くじによって支配領域を定め、海神となったというエピソードがあるのですが(ゼウスは天と地、ハデスは地下の冥界を支配することになった)、先住民の要素を取り込んだギリシア人が、神々の司る領域を整理していったことを反映しているように思えます。
海神ポセイドンの名は海に関する名称として浸透しています。たとえば、豪華客船ポセイドン号が嵐にあうパニック・ムービー『ポセイドン・アドベンチャー』(1972年、リメイク版が2006年)。また、泉を湧き出させたというエピソードをもつように、水をあやつるポセイドンの像が、現代でも泉や噴水の近くによく見られます。ヨーロッパの町の中心部にはよく広場と泉や噴水があるが、そこに三叉の矛を持った神様の像があれば、それはポセイドン/ネプトゥヌス。泉といえばローマにある「トレビの泉」が有名ですが、そこにもネプトゥヌス像が、豊穣の女神ケレス(デメテル)と健康の女神サルスと共に立っています。
ポセイドンの息子トリトンについてはこちらも参照。ほかにも、ペガサスや、オリオンなど、ポセイドンの子孫たちは様々なかたちで生き続けているので、それぞれの項目記事でふれていきたいと思います。