難産かつ短めなので注意よ(´・ω・`)
恥の多い戦いをしてしまいました。
私には、人間の欲というものを、はっきり言って嘗めていたのです。ええ。
ところで、自分は、いつの間にかそういう存在として生まれましたので、人間を初めてみたのは、王に使役されてからでした。自分は王の見る千里眼と共に、人界のあらゆるものを見て行きました。
権力者が下等階級に圧政を敷い、そのまま反逆の餌食に遭う姿。
貧しさ故に空腹に飢える物乞いが、遂には何も得ることなく死に逝く姿。
憤怒の感情に身を委ね、弱者に豪腕を振るい、暴れ回る獣の如き姿。
肉や酒を貪り、ブクブクと豚のように醜い肉体を晒し続ける無様な姿。
己が才能に自惚れ、それを有効活用しないまま無意味な人生を送った姿。
自分の欲の赴くまま、他人から幸福を奪い続け、最後には断罪される姿。
女子供に襲いかかり、犯し尽くすことで覚える肉感と快楽に溺れる姿。
こんなものは、ほんの少しの一例にすぎません。
こんなものに匹敵するものは何度も見ていきました。
この世全ての悪を、見てまいりました。
王は、おそらくその三倍はその目に写してしまったのではないでしょうか。
なんて、苦しい。
私は、そう思わずにはいられませんでした。
だって、そうでしょう? 魔神である私ですら、無限に流れる笑えない映像に辟易していたのです。冠位をもつ魔術師である王とて、あの無機質な顔の裏ではきっと。
そんなわけで、王の企てた最初から最後までの人類史全てを焼き尽くし、全てをやり直す計画には賛成しないわけにはいきませんでした。というか、賛成しない理由がありません。今まで観測してきたものを焼却する。嗚呼、なんて素晴らしいことでしょうか。
こんな苦しみを、ぜーんぶ、忘れ去ることができるのですから。
だから、私は奴らを観測する。
熱源を感知し、動体を発見し、標的を補足し、彼らに消滅を提案する。
私は観測所を任された者。私の目を逃れる者などいない。いたとしても、どうせすぐに片付けられる。
ですから、無意味なのです。そう、無意味。奴らの足掻きに意味はないのです。
人間という名の、バルバトスとかフラウロスの吐き出す餌に釣られて湧いた欲望の塊はこの計画のお邪魔虫。つまり汚点なのです。
観測所は、常に清浄であり続ける。汚い痕跡を消し、常に清く正しい道のみを見続けるのだから。
無意味な欲に振り回されるお馬鹿さんなんて、私が負けるはずないのです。
起動せよ。起動せよ。観測所を司る九柱。
即ち、グラシャ=ラボラス。ブネ。ロノウェ。ベリト。アスタロス。ファラス。アスモダイ。ガープ。
我ら九柱、時間を嗅ぐもの。
我ら九柱、事象を追うもの。
“七十二柱の魔神”の名にかけて、我ら、この集成を止む事認めず……!
*
物欲の塊には勝てなかったよぉ……(即堕ち二コマ並感)
カルデアのマスター、いきなり私を殺すや否や、
「あいつ、宝玉と貝殻と毒針と羽根を落とすぞ……! ヒャッハー‼︎ 略奪の時間だぜェ‼︎」
とか抜かしやがるんです。しかも人理焼いてるのにツイートするんですよ? ナメプですかアレ?
おまけにあの黒い髭の汚物は鬱陶しいし、攻撃してもどんどん最後のマスターは増えてきますし、黒髭は汚いし、私はイカじゃなくてエイです‼︎ 某戦うカクレクマノミの映画では教師やってるんですよ‼︎
あー、もう怒りました。フォルネウスちゃん怒ったのです‼︎ あの黒髭だけは消す‼︎ 何が何でも消す‼︎ うむ、それが絶対正しいんです! だって観測所の理系女子魔神柱の意見なんですから!
って、あー! ダメですダメです全然届かないところからの狙撃は反則ですぅ‼︎
「砲撃用意! 藻屑と消えなァ!」
「んんwwwwwwww一方的ですぞwwwwwwww」
「地上にあってファラオに不可能無し、万物万象我が手中にあり!」
「
無意味なり……無意味なり……
「ハハハハハハ……! 愛! 愛‼︎」
「Arrrthurrrrrrr‼︎‼︎‼︎」
「これより逃げた大嘘つきを退治します————。転身火生三昧!」
無意味なり……無意味なり……
「よし、やっちゃうね」
「それでは狙い撃ちますわよ————shoot!」
「さぁダーリン、愛を放つわよ!」
む、無意味なり……無意味なり……
*
もうらめえ、周りからぶっとい遠距離攻撃しゅごしゅぎりゅのぉ……。
何あれぇ……。身体に矢が突き刺さったり砲撃食らったり超高速九連撃をいっぺんに喰らって痛いはずなのに、なんだか気持ちよく感じるよぉ……。
……ごめんなさい、私、欲望嘗めてました。 欲望は無意味とか無価値とか言ってましたけど、やっぱり全然無意味じゃないです。だって、明らかに敵意のある攻撃受けてるのに、本当は痛いはずなのに、喜んでる私を観測しちゃったんですから……。
ですから、お願いします、カルデアの最後のマスターの欲望に負けた魔神柱失格のフォルネウスに、容赦のない総攻撃を、ドMのフォルネウスに集中放射してください……っ!
口に出してはいませんが。願いというものは、案外叶うものらしいです。
瞬間。
周囲の夥しい魔力が、一方的な方向を持って展開されるのを観測しました。
そして、一つ一つが、私を消滅させるであろう、即死級の殺傷力を持つのもわかると、私は歓喜に打ち震え、我が身を構成する肉塊は刹那のうちに接触するであろう痛みを想像したのか、びくんっ、という脈動がほんの少し細やかになりました。
瞬間。
あらゆる苦しみを凌駕し、絶え間なく計測した死の痛みが再び現れたのです。
ずぶり、ぐさり、どすん。
全身から轟音をならし、悲鳴を上げる肉塊。
ああ、これです。私が求めていたのは、これなのです。
この世全ての悪とか王とかどうでもいいのです。
消滅するまで、この痛みを感じていたい。
観測所としての機能が崩壊すると同時に、私は最期にそう考えていたのです。
ポンコツドM理系幼女フォルネウスちゃんとかいうパワーワード
たぶんフラウロスがレフになる感じにフォルネウスちゃんが人間になるなら幼女になるんじゃないかなって