国内コンビニエンスストアの王者として君臨し続けるセブン-イレブン・ジャパン。2023年に設立50周年を迎えた同社は、節目の年にマーケティング本部を新設した。マーケティング本部は経営戦略上どのように機能していくのか。執行役員マーケティング本部長の岡嶋則幸氏が語った。

※本稿は、2024年1月30日に開催した日経クロストレンド・カレッジのセミナー「マーケティング本部長が語る セブン-イレブンが目指すマーケティング戦略の全容」を再編集したものです。
セブン-イレブン・ジャパンの執行役員 マーケティング本部長の岡嶋則幸氏が語った、同社のマーケティング戦略とは? (画像/Metro Hopper/stock.adobe.com)
セブン-イレブン・ジャパンの執行役員 マーケティング本部長の岡嶋則幸氏が語った、同社のマーケティング戦略とは? (画像/Metro Hopper/stock.adobe.com)

売り上げだけではない指標が必要

 日本に2万1000店以上、加盟店の従業員数は40万人を超えるセブン-イレブン(2024年1月時点)。設立50年の積み重ねにより、年間の来店客数は約70億人、売上高は約5兆1487億円、営業利益は約2329億円もの規模まで成長した。

岡嶋 則幸 氏
セブン-イレブン・ジャパン 執行役員 マーケティング本部長
セブン-イレブン・ジャパン 執行役員 マーケティング本部長  岡嶋 則幸 氏

1992年、セブン‐イレブン・ジャパン入社。2005年から同社商品本部にて、飲料・加工食品をはじめ決済関連などのデジタルサービスを担当。23年3月から現職。セブン-イレブンの商品プロモーションやテレビCM、SNS、アプリ・リテールメディアなどを含むマーケティング全般を統括する

 セブン-イレブン・ジャパンは時代と共に変化する顧客のニーズを満たすため、様々な改革を行ってきた。かつてはそうした施策が顧客から支持されているか確認するための指標を、売り上げや利益に据えていたという。しかし、次の50年を見据える上で、この2つの指標では足りないと岡嶋氏は指摘する。

 「これからの時代、これまで以上にあらゆるステークホルダーの多種多様なニーズを満たす必要がある。売り上げや利益はもちろん、環境や社会貢献などの様々な指標を念頭において活動していくべきだと考える」

 そこで策定したのが、同社が目指す姿だ。「明日の笑顔を 共に創る」を掲げ、様々なステークホルダーと共創して成長を続けるため、健康、地域、環境、人財という4つのビジョンも掲げた。

 例えば、地域に関する取り組み。日本では、少子高齢化に伴い地方の過疎化が進んでいる。日本全国に店舗を構えるセブン-イレブンは地域との連携を密にし、その土地特有の資源を活用して地域経済の活性化を目指している。地域の資源を用いて開発した商品は、地産地消をテーマとした「地域フェア」で販売している。

 地域フェアは23年3月から12月までで59回実施。消費者だけでなく生産者や取引先、加盟店をも巻き込んだ“四方良し”の地域社会を盛り上げる取り組みになっている。 

地域経済の活性化に取り組む一環として、地域の資源を用いた商品を販売する「地域フェア」を開催。生産者、消費者、取引先、加盟店をも盛り上げる四方良しの取り組みを目指している
地域経済の活性化に取り組む一環として、地域の資源を用いた商品を販売する「地域フェア」を開催。生産者、消費者、取引先、加盟店をも盛り上げる四方良しの取り組みを目指している

マーケティング本部設立の背景

 セブン-イレブン・ジャパンが、設立50年を迎えマーケティング本部を新設した背景について、岡嶋氏は新型コロナウイルス禍で変わった消費者の生活スタイルを挙げる。

 同社のPOS(販売時点情報管理)データによると、19年11月と比較して23年11月は朝と深夜の利用が減少し、昼と夜の利用が増加するというように、時間帯別の客数構成比が大きく変わった。また全体的に見ても、コロナ禍のコンビニ利用者数は減少していたという。

 時代の変化に素早く対応し、より細やかな顧客戦略を立て、この流れに歯止めをかけるにはどうしたらいいか。

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