悪性リンパ腫の抗がん剤治療は連続5日間(120時間)を1セットとし、それを6回繰り返す、という過酷なものでした。
私の血液のがんには基本的に抗がん剤しか治療の選択肢がありません。だから、やることに迷いはありませんでした。ただ、副作用は非常に厳しかったですね。
正式な病名は「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」です。このがんの抗がん剤治療は通常、通院や1泊~2泊で行うそうです。しかしわたしの場合は入院して、1日24時間、5日にわたり連続して点滴で投与することになりました。その間ずっと、つながれた点滴から逃れられない。副作用もきつく、病院の庭の散歩ですら、許されませんでした。
医学は日進月歩
抗がん剤を打つ間は、起き上がれなくなり、ただ寝ているだけ。2日くらい食べていなくても、全く食欲がわかない。胸のむかつきがひどいんです。だから、どんどん痩せていきました。あまりに痩せすぎるとテレビ出演の復活は絶対無理だとわかったので、食べることを頑張りました。
《つらい抗がん剤を乗り切ることができた理由のひとつが、患者の生活の質を改善するために行われる支持療法だ。がんの症状に加え、治療による副作用や合併症を軽くするために行われる》
5年前、10年前に闘病したがんサバイバーの先輩からは、抗がん剤で毎日吐いていた、毎食吐いていた、と聞いていて、すごく心配でした。昔は抗がん剤は、「一か八かの治療」というイメージで、副作用のきつさから途中でやめてしまう人も多かったそうです。
ところが私は結果的に1度も吐きませんでした。
抗がん剤の副作用を止める「制吐剤」が効いたんです。最近は製薬会社が副作用を抑える薬剤の開発に熱心です。吐かないで済むと、なんとか食べようという気になる。少しでも食べると体重が減らなくなる。その結果、体力が温存できる。支持療法はQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)の向上につながるんです。
正しい情報はどこに?と戸惑う
今は、先生も看護師さんたちもQOLを重視しています。入院中、治療中の生活の質を上げることが、患者の治癒にとっても大事なんです。
《抗がん剤は1クール目の投与から奏効し、病状は改善していった》
治療前はうならないと出てこないほど排尿障害がひどく、トイレに行くのが苦しくてストレスでした。それが5日間120時間の1回目の抗がん剤が終わると、シャーシャーと排尿できるようになりました。効くんだとわかって、この後、どれだけ苦しくても耐えようと思いました。
《心を穏やかに保つようにも努めた。笠井さんはあえてインターネット検索で病気に関する情報の収集をしなかったという》
病名を入れて検索すると、病気に関する悲観的な情報とセットで、「だからこのサプリメントを飲みませんか」「この民間療法を受けませんか」といった記述がついてくるんです。公平性のある正しい情報を、どうやって探せばいいのか、わかりませんでした。報道の世界に30年いたのに、です。主治医の言うことを信じるしかない。そんな風に思いました。退院後、さまざまな専門家に出会い、「がん情報サイト オンコロ」「NPO法人キャンサーネットジャパン」や、国立がん研究センターの「がん情報サービス」などがビジネスとつながっていない良心的なサイトだと知りました。(油原聡子)
かさい・しんすけ
昭和38年生まれ、東京都出身。62年フジテレビ入社。アナウンサーとして、「とくダネ!」など多くの情報番組を担当。令和元年、フリー転身直後に悪性リンパ腫の診断を受ける。著著に『がんがつなぐ足し算の縁』(中日新聞社)など。
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