体臭を嗅ぎ分けて相手を選ぶ臭いの合コンをやりたい。現在の私にパートナーはいない。正確には動物や植物や鉱物が私のパートナーだが、人間のパートナーがいない。神様、人間のパートナーをください。と言う訳で「臭いの婚活」を開催したい。ＤＮＡが合う相手とは臭いの相性が良い。顔や肩書きで選ぶより長続きする。男性が女性の匂いを嗅いだら変態になるので、女性に匂いを嗅いでもらう。男性が着ている服を、男性の顔を見ないで臭いだけで好みを嗅ぎ分ける。そして「この人の臭い、好きかも」となった相手と初対面を交わし、場合によってはそのままベッドインする。選択権は常に女性の側にある。女性側が「無理」となった瞬間に試合終了となり、男性は問答無用で退場となる。

女性側から「相性の確認をしたいから寝よう」と言うのはありだが、男性側には許されない。最初、女性たちは別室で男たちの臭いを嗅ぎ分け、ソムリエのように香りの違いを楽しむ。この時点で和気藹々とすること請け合いなので、理想の男性と出会えなかったとしても「女の友達が増えたから今日はいい日だった」となる。男も男で、自分が着ていた服を嗅いだ女性から「くさっ！」と言われたら精神的なショックが大きいため、別室で待機をする。女性から選ばれなかったとしても、男性として劣っている訳ではない。ただ、相性が合わなかっただけだ。理想の女性と出会えなかったとしても「貴重な経験をしたから今日はいい日だった」となる。

女が同じ男を選んだ場合、仲良くシェアする。自分の彼氏や旦那が浮気をすると腹が立つが、入り口が同じなら「気が合うね」と仲良くシェアできるかもしれない。本に書かれている内容や諸先輩たちが語る「恋愛がうまくいくコツ」を一回全部捨てて、自分の体の反応を信じる。これを食べると体にいいと言われているから食べるのではなく、美味しいから食べる、気持ちいいから食べる、体が重くならないから食べるなどと言ったように、自分の体に答えを聞く。自分の外側に答えを求める時代は終わり、自分の体を使って検証を重ねる時代が到来した。臭いの婚活に加えて「声の婚活」も開催したい。その人の声が心地よく聞こえる相手とはうまく行くが、内臓が狂う相手とは離れた方がいい。早口の人は、早口で話すことで相手のペースを乱し、自分の支配下に置こうとする。理論武装をする人も、弱者の振りをする人も同じだ。男は女のリハビリセンターではないし、女は男のリハビリセンターではない。合わないなと思ったら、喧嘩（救済を含む）をせずに退散する。

パートナーが意味する内容は多岐に渡り、結婚したいですと言われたら結婚するかもしれないし、漫才師になりたいですと言われたら漫才師になるかもしれない。あらゆる領域におけるパートナーを募集する。年齢も性別も問わない。ジジイもババアもばっちこい。人と関わりたいけど人との関わり方がわからない的な悩みを頻繁に聞く。逆説的だが、私は「誰とも関わらなくていい」と思う。人間は一人で生きている訳ではないと言われるが、大丈夫。一人でも生きていける。一人でも生きていけると思っていない人間が、自分の心の空洞を満たすために他者を利用すると、厄介な出来事が起こる。相手を支配したり、相手に「ちゃんとすること」を要求するようになり、最初は素敵なものだった恋愛が部活みたいな義務に変わり、恋人なら毎日電話しろよみたいな脅迫をするようになる。行き過ぎたお節介は、最悪、殺人事件を起こす。

自分にとって不要な情報、不要な物質はゴミである。使っていないなら、宝石もゴミ。高級車もゴミ。ブランドの服もゴミ。不要な情報を入れて、自分の頭を汚さないこと。間違ったことをしていると、心か、体か、その両方が重くなる。自分の体がゴミ箱になり、デブになる。ゴミを捨てると痩せる。痩せると体が軽くなる。潔い、清々しい日々を送ることができるようになる。臭いの婚活。就活より臭活。終活より臭活。就活より終活より臭活。次の日曜日、実験的に開催する。やりたい人と見たい人を募集する。誰からも連絡がなければ、自然消滅する。人に相談をしない。人の真似をしない。外側に正解を求めるのではなく、自分の五感とシックスセンスを駆使して検証を重ねる。愛より恋。恋を自分に禁じた瞬間から、肉体は老化する。若返りの秘訣は恋にある。畢竟、人間の仕事は「遊ぶこと」と「恋をすること」だけになる。自分の好きなものを語っている時の表情ほど、生き生きとした喜びに溢れているものはない。