日本語の息子に配達員「プリーズ…」 英誌元特派員が見た民族性
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東京に駐在する外国メディア特派員らの目に、私たちの社会はどう映っているのだろうか。韓国、フランス、英国、バングラデシュ、シンガポールの個性豊かな記者たちがつづるコラム「私が思う日本」。第53回は英誌エコノミストのデイビッド・マックニール元東京特派員が、日本で暮らす息子に起こった出来事を踏まえて日本の民族性や多様性について論じた。
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昨年、書留郵便が家に届いたので、息子が受け取りのサインのため玄関に向かった。配達員は息子のルカ(10)を見ると、慌てて「えっと、プリーズ・サイン・ヒヤー(Please sign here、ここにサインをしてください)」と話した。学校はほとんど日本の公立校に通ってきたルカは「パパは忙しいので僕がサインします」と伝えた。だが、配達員は自分が聞いた流ちょうな日本語と目に映るルカの顔を結びつけるのに苦労していた。配達員は「プリーズ・サイン」と繰り返した。ルカは肩をすくめた。
この話を思い出したのは、彼自身の仕事を全うしている配達員を否定するためではなく、日本人の定義について議論したいからだ。日本は世界で最も民族的に均質的な先進国であるという評判がある(一部の人はそのことをとても大切にしている)。2020年の国勢調査では、97・8%が「日本人」として登録。この数字には日本で生まれ育った私たちの3人の子供も含まれる。しかし、これは民族性ではなく国籍を指していることに注意が必要だ。
私たちの子供がいわゆる「ハーフ」かどうかを公式に尋ねられたことはない。政府は人種や民族性について集計することに興味がないようで、出生証明書、国勢調査、戸籍にはそうした記録が一切ない。配達員がルカのことを見た目で「違うもの」と感じても、書類上は同じ日本人なのだ。
政治家は時々、日本は誇り高き均質性の高い国家だと宣伝する。…
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