赤池市民病院では職員教育用に『医療安全かるた』を作っていた。だが、現実の医療安全推進室の運用は、再雇用された元看護師や現場を離れた看護師長がのんびりとくつろぐ部屋となっていた。
前の職場(京都の病院)では、浅尾医師が竹田くんに「お前は未熟だ」「執刀は俺が許さん。」と厳命し、患者の安全担保がなによりも優先されていた。
だが、赤池市民病院は、病院の保身優先のため重大な医療事故でも公表される事はない。竹田くんは「手術の腕を磨くには最適の病院だ。」と思う。まさに、竹田くんにピッタリの病院なのだ。
医療安全推進室にはオペ看護師や技師などから続々と事故の報告が寄せられる。それに対応する医療安全責任者の森中。彼女は再雇用された元看護師である。森中に怒られる古荒医師。竹田くんは外科医として最悪の失敗をしてしまったことに憔悴しきっている。古荒医師が慰めの言葉をかけると「じゃあ古荒先生が執刀した事にしてくださいよ」と言い返され古荒医師はギクッとする。
75歳女性に対して後縦靭帯骨化症による頚部脊柱管狭窄症に対する後方除圧術(頚椎椎弓形成術)が行われる。竹田くんの執刀である。
医療安全推進室の電話が鳴る。手術室からの連絡である。室長の森中と、杉下(2人とも元看護師)はあわてて手術室へ急行する。そこには蒼白になり放心状態に陥っている竹田くんがいた。
(あとから振り返ると)竹田くんは8日で3件の医療事故を起こしていた。そして、一週間後には首の手術が予定されていた。患者は75歳女性 貝山さんである。
竹田くんの前の職場(京都の病院)の上司 浅尾先生は、そもそも頚椎含む脊髄治療のスペシャリストである。竹田くんは200例の第一助手を務めたと古荒医師に申告していた。古荒医師は「それだけ助手をやれば執刀は可能だろう」と判断する。
竹田くんは、三叉神経痛の患者に開頭手術を施す。術後、手術した側の耳に重度の聴覚障害が発生。「手術は関係ない」としらを切り通す竹田くん。「2度と来るか!」と怒って竹田くんと決裂する患者さん。その光景を見て、古荒先生は「普通はそうなるよね・・・」と唾を飲む。
更新履歴: 06/03 09:58 4コマ目 左 内面描写をマイルド表現に修正
セリフ変更に至った作者の心境変化・・・作者は医療事故被害者に限らず、あらゆる被害者は逆上したら加害者に足元をすくわれる可能性が高いと思っています。だから科長を視点にその考えを明示しました。後から振り返ると、科長にそのライフハックを語らせることで、科長を必要以上に悪者にしていると気づきました。患者が逆上して来なくなる事を喜んでいるのは病院それ自体であり、科長のみにそのセリフを言わせるのは誤解を招く表現かと。
竹田くんは外来で手術ターゲットの患者をゲットする。竹田くんの診断は水頭症。はたして本当に水頭症なのだろうか?カルテからはそう断言できるだけの医学的根拠が読み取れない。
更新履歴: 06/03 9:47 4コマ目 より現実感のある記述に
セリフ変更に至った作者の心境変化・・・科長が注意しないまま水頭症ではない可能性のある患者に手術を行ったという展開に受け取られる事の危惧。
そもそも第一部を各部を端折った描き方にしたのは、竹田くんがどういう人物か、科長との関係の詳細をぼやかしたまま医療事故が連続して行く流れのみをスピーディーに描く事で地獄絵図を演出したかったからだ。黒沢映画で望遠レンズで人や戦場を映して神が地上を見ているようは雰囲気、あの感じを出したかったのであえてシーンの切り抜きを連続させた。(チマチマと詳細を描かずに、一気に医療事故の全容を読者に読み切らせ、「なぜこうなるの?」と興味を抱かせるための工夫。)
第二部で、竹田くんは実は何を言ってもまったく聞く耳を持たない医師であったばかりか注意の仕方を誤れば病院全体が危険な状況に陥る事を明かしたつもりだった。二部を見れば、第一部でも当然、局面局面で注意はされていたが、そのシーンは単に描かれなかっただけと理解されると思っていた。ところが読者の反応は必ずしもそうではなかったため、このようにちゃんと注意をしていたがスルーされていたというセリフ内容に改めた。
行方不明になった竹田くんは駐車場で新車の納車式をしていた。手術室でも竹田くんは困った奴だった。彼は術野の真上で思いっきりくしゃみをする。(普通は部屋の隅に行ってくしゃみする。)カテーテル手術に成功した時は周囲に拍手喝さいを求める。そして名医になったような気分に酔う。