脳外科医 竹田くん

あり得ない脳神経外科医 竹田くんの物語

【第82話】家族が騒ぎ出した

市民病院

 呼び出せども竹田くんは見つからなかった。ようやく夕方になって連絡がついた。

 そのあまりに怪しげな経緯を見て、家族が騒ぎ始めた。家族には竹田くんがどんな事をやってきた医師か事前知識が全く無かった。そうした中で騒いだので、医療安全は完全に家族をクレーマーと見なして扱った。

 だが、家族に対しては、臨床工学技士のカテーテル治療ボイコットの件も、院長の侵襲的検査禁止の命令も、古荒先生が竹田くんのカテーテル検査を阻止するために奔走した事も全て秘された。この事実がバレると話が違って来るのだ。

 医療安全の杉下は、手術禁止にされてもなお失敗を繰り返す竹田くんを見て、「自分の母親が脳外科の患者になる事があっても、竹田医師には絶対に治療されたくない」と考えた。

 竹田くんと家族の面談が行われたが、そこには南病棟の看護師の院沢も同席した。竹田くんがあまりにも家族の質問をはぐらかすので院沢は思わず、「ご家族様はそういう事を聞いているのではない」と竹田くんに意見してしまう。

 

【第81話】術後に容態悪化

市民病院

 古荒先生は病院にかけつけた。竹田くんのカテーテルは殺人行為に等しいからだ。

 だが、手術室では、ルンルンしながらカテーテルに夢中になっている竹田くんがいた。森先生は、竹田くんの手技の雑さにゾッとしている。

 術後、古荒先生に叱られる竹田くん。

 次の日の朝、患者の容体が急激に悪化した。看護師は竹田くんを呼び出したが、出勤日にも関わらず竹田くんはどこにもいなかった。

【第80話】研修医は見ていた!

市民病院

 毎年夏になると岡山から研修医がやって来る。今年も2人やってきたが、竹田くんの勤務実態を見て驚愕した。

 術前カンファレンスでは、出来る医者を気取って古荒先生に説教を垂れる竹田くん。それを見て森先生はイラつく。

 その日は、森先生と竹田くんが救急の当直の日だった。非番の古荒先生に竹田くんから電話がかかってきた。「僕がカテーテルやっちゃいますね」という内容。慌てて森先生にやらせるように命じる古荒先生。だが・・・。

【第79話】他の病院からの苦情

市民病院

 竹田くんの患者について、他の病院からも苦情が何件も来ていた。

 抜糸するのを忘れて他病院へ転院させたり、転院先で頭に水が溜まっているのが発覚したり、救急担当時の患者を朝まで放置して高度な医療が可能な病院へ搬送させなかったり・・・etc。

 赤池市民病院では、このような他の病院では大問題になるようなミスが問題にすらされなかった。他の病院から見れば異様な世界である。

 竹田くんの愛読書「世に棲む日々」の主人公・吉田松陰は「諸君、狂いたまえ」と門下生を鼓舞した。既成概念にとらわれずに新しい時代を切り拓けという意味だ。その意味で竹田くんは患者の事を一切考えないニュータイプの医師だ。

 

【第78話】試薬強奪事件

市民病院

 古荒先生は、竹田くんにパワハラ暴力医師の濡れ衣を着せられた後も、変わりなく籠り部屋の掃除をし、竹田くんがさぼった分の穴埋めの業務をこなした。竹田くんが来る前よりもずっと大変な毎日になっていた。だが燃え続ける溶鉱炉のように古荒先生の仕事への情熱は冷めることは無く、どんなトラブルが起こってもそれは変わらなかった。

 古荒先生は生粋の脳外科医なのだ。

 一方で、竹田くんは古荒先生を陥れる謀略戦の妄想に憑りつかれて以降、ますます医師としての仕事が雑になった。それが原因で日常業務の各所でスタッフや患者との間にトラブルを起こした。

 試薬の強奪事件はその一例である。ここでも竹田くんはしゃーしゃーとウソをついた。彼のウソが引き起こした院内のトラブルは数知れない。やがて、ウソをつく事が彼の個性のように見なされ、最終的には誰もが竹田くんのウソを咎めることなく受け流すようになっていった。

【第77話】策士の愛読書

市民病院

 竹田くんはあれよあれよという間に、病院に対する地位回復を求める戦争に必要な武器を全て揃え終えていた。

 ところで、竹田くんの本棚には歴史小説が並んでいる。

 頭脳で難局を乗り越えた策士(軍師)たちの物語を竹田くんは好んだ。たとえば大作「坂の上の雲」には主人公が米西戦争を観戦した記述がある。そこに驚くべき事が書かれている。

 新聞王ハーストは世論を戦争へと導くため、米国人女性記者がスペイン当局から全裸で取り調べを受けたという内容のフェイクニュースをイラスト付きで掲載した。これはイエロージャーナリズムと呼ばれた。

 歴史すら嘘つき・サイコパスが動かしている。自分がウソで状況打開を図って何が悪いのだろう?賢者は歴史に学ぶのだ。事実がどうあるかよりも、どのように偽り、どのように装うかが重要なのである。

 

【第76話】ワシにまかせろ!


 竹田パパは、院長室で病院上層部と対面する。そこへ古荒医師が遅れてやってくる。父親は、竹田くんから聞いていた武闘派脳外科医の古荒先生のイメージが、実際の古荒とかけ離れている事に少し驚く。

 院長が、「(社交辞令として)謝りなさい」と古荒先生に命じる。古荒先生は、「まっいっか」というノリで謝罪してしまう。

 だが、竹田パパは、古荒先生の発言を録音していた。竹田パパは古荒先生が暴行事件を起こした証拠をつかんだと思い込む。

 

【第75話】竹田パパ襲来

市民病院

 竹田くんのウソによって、事態は誰も予期しない方向へと進み始めていた。

 秘書が赤池市の市長に「面会したがっている人が来ています。」と伝える。一階では竹田医師の父親が「市長を出せ!」と怒鳴っていた。

 赤松市長は思い出す。「そういや、竹田医師とかいうのが、医療事故を起こしている話を最近聞いたな」と。面会を拒否された竹田パパは市民病院に来襲した。

【第74話】正気に戻った竹田くん

市民病院

 父親に古荒先生が暴力医師であるという虚偽のイメージを伝えた竹田くんだったが、翌日には正気に戻っていた。内面の葛藤があったのだろう。

 古荒医師にバカな真似をしましたと謝罪する竹田くん。事務局長の聴取に対しても「足を滑らせただけだ」と正直に事実を説明した。

【第73話】お父さんへの電話

市民病院

 竹田くんはさっそく、父親へ電話する。

 古荒医師がサイコパスであり、最新の医学を学んだ竹田くんに嫉妬して暴力行為に走り、実際に階段から突き落とされて殺されかけた事を伝えた。

【第72話】立場逆転

市民病院

 転落事故の後、すぐに竹田くんは市民病院の医師の元に駆けて行き、「古荒先生に突き落とされたってカルテに書いてください!」と頼み込んだ。

 竹田くんの待ちに待った好機が巡って来た。

 今までは医療事故多発事件の加害者のような扱いの日陰の身だったが、今後は堂々と被害者だと主張できる。そして、ゆくゆくは脳外科の科長の地位さえ見えてきたのだ。

 策士の竹田くんだけが、そのための交渉カードを全て握っている事を知っていた。

 手術解禁はおろか、科長の地位を狙えるほどのビッグチャンス!竹田くんは野心に燃え始める。

【第71話】転落事故

市民病院

 市民病院の階段の踊り場で、医師免許取得者2人が『籠り部屋』の鍵をめぐってじゃれあっている。次の瞬間、竹田くんは足を踏み外す。

 身体は医師の資本であり、竹田くんがわざと足を踏み外したとは想像しがたい。だが、古荒医師が故意に押した事は絶対にない。ただ一つ言えることは、この事故が竹田くんにとって願っても無いタイミングで起きた事だ。

【第70話】迷惑系脳外科医

市民病院

 山崎先生(脳外チームのメンバー)は、籠り部屋の机の上に毎朝放置されているポテチの袋の銘柄を看護師にささやいて笑い話にしていた。

 食べ捨てられたポテチの袋を捨てるのも古荒先生が行っていた。

 手術禁止から4か月が経ったが、竹田くんは問題ばかり起こしている。『迷惑系脳外科医』という仇名をつけたくなるぐらいだ。

 その日、病院の階段おどり場にて竹田くんと古荒先生は籠り部屋の鍵をめぐって争いをしていた。

 古荒先生は、罠に嵌められている事にまったく気づいていなかった。

【第69話】籠り部屋の鍵

市民病院

 竹田くんは、古荒先生のデスクのひきだしの中に籠り部屋(脳外科部屋)の鍵を見つける。

 ひさしぶりにたっぷりと昼寝をして満足そうな竹田くん。

 手術禁止から4か月、ある事件が起こる。その事件の後に起こった悪夢のような出来事の数々は日本医学史上稀に見る狂気を孕んだものであり、赤池市民病院の風土以外では起こりえないものだった。

【第68話】え?わざとなの?

市民病院

 古荒先生と竹田くんの対立が深まっていた頃、手術室では奇怪な医療事故が起こっていた。

 古荒先生の手術途中でいきなり手術室に入ってきた竹田くん。水かけをまかせると、突然、竹田くんのホースが切削中のドリルに当たった。

 ドリルの刃は硬膜を傷つけ、その修復には30分を要した。

 術後、オペ看からは「あれは絶対にわざとです。」と言われる。