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タブレット純のかながわ昭和歌謡波止場(37)
松崎しげる◆俺たちの朝

文化・科学 | 神奈川新聞 | 2023年11月28日(火) 05:00

作詞/谷川俊太郎・作曲/小室等

 生まれ故郷の相模原にあるプラネタリウムにて、夏の終わりにコンサートを行ったのですが、何と“憧れのヒロイン”からプレゼントが! 天にも昇る心地とはこのことでしょうか? ちなみにその頂いたものはお酒でありまして、後日そのドラマに思いを馳せながらの「部屋飲み」で美酒に昇天、気がついたら朝になっておりました…。

 おっと偶然、二つのワードがいま駄文をかすめたのですが、思い馳せ(、、)たるは名作「俺たちの朝」の長谷直美さんであります! 長谷さんがぼくのコンサートに何故いらしてくださったかは、ファンの女性が連れ立ってのご親友ということで。長谷さんが3年生まで相模女子大高等部に通われていたということも関係しているのでしょうか? 残念ながら終演後の物販に追われるうち長谷さんはそっとお帰りになられ、対面はかなわなかったのですが、視線を泳がせたほんのつかの間に面影のままのヒロイン“カーコ”の心洗われる微笑がありました。

極楽寺駅近くを走る江ノ電(1972年、神奈川新聞社撮影)

 前置き、というか自慢話が長くなりすみません。このたびの波止場はそのドラマの舞台となった鎌倉でありまして、松崎しげるさんが歌った主題歌と相成ります。このドラマの中身に関しては、紙幅がとても足りないので省かざるを得ないのですが、大ヒットとなった中村雅俊さん主演「俺たちの旅」の青春群像劇のいわば兄弟版的作品として、当初は13話の予定だったものが、やがて26話、果ては48話と1年間にわたって拡大したことからも、単なる“旅”の二番煎じではない内容の深さと当時の若者たちからの支持のすごさがうかがえます(ぼくは再放送世代として熱愛)。そして何といっても、このドラマがヒットとなった要因は、鎌倉を舞台にしたことも大きかったことでしょう。

 当初は世田谷の等々力渓谷がロケ地として予定されていたものの諸事情で変更に。主演の勝野洋さんやその親友役の小倉一郎さん、そして長谷さんというこの3人が醸す素朴な天然美には田園都市よりも潮風が匂う古都の空気があまりにもマッチしていました。

絵/タブレット純

 当時、鎌倉はまだ観光客が少なかったそうで、このドラマによって“若者の聖地”に。その人気でなんとジリ貧だった経営状態を持ち直し、廃線を免れたというのが江ノ電。記念切符までもが作られ、TV関連でそのような事象は鉄道史上初めてのことだったとか。その沸騰ぶりに、最たる舞台となった極楽寺駅の伝言板が破壊されてしまったものの、放映局の日本テレビ側がおわびに銅製の伝言板を寄贈したという美談も伝わっています。それにしても、一つのドラマが今や有数の観光地をつくりあげてしまったなんてスゴイ!

 このドラマを歌声で彩った松崎しげるさんもまた、このドラマの主役“オッス”が最終回で夢だったヨットでの世界一周の船出をかなえるように、長い不遇を越えて後年大ブレークを果たすのですが、その兆しが予言のように、谷川俊太郎さんによる詞にあふれています。

 “答えを知らぬ君に出来るのは ただ明けてゆく青空に 問いかけること”

 透き通った秋空に深呼吸! あぁお酒が気持ちよく抜けてゆく…。

たぶれっと・じゅん 歌手・お笑い芸人。1974年相模原市緑区出身。幼少期から歌謡曲のとりこになり、学生時代は中古レコード収集・研究に没頭する。2002年から04年まで和田弘とマヒナスターズのメンバーとして活動。現在は寄席やお笑いライブに出演し、独自の「ムード歌謡漫談」で注目を集める。同市名誉観光親善大使。

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