(1)前置き
「山口県行政書士会懲戒事件」とは、平成29年から平成30年にかけて、山口県行政書士会で起こった、虚偽の事実で会員である行政書士を懲戒したことに関連する一連の事態を総称する事件名である。
この事件は、山口県行政書士会に留まらず、広く行政書士全体に、そして、行政書士に留まらず、国民生活全体に影響が大きい事件である。
(2)社会的意義
山口県行政書士会は、虚偽の事実で会員を懲戒し、その事実を日本行政書士会連合会のホームページを通じて、全世界に公表した。
また、その虚偽の事実を記載した書面を山口県知事に提出し、山口県知事に懲戒権を行使させようと図った。
(ア)これを放置すると、日本の社会に虚偽を蔓延させることになる。
その理由は次の通りである。
①関与者
この過程に深く関与したのは、山口県行政書士会のA会長とB副会長である。
A会長は、日本行政書士会連合会でも常任理事、法務業務部長という要職についている。
B副会長は、山口県行政書士会内で、副会長以外に、理事、下関支部長を兼任している。
いずれも、極めて枢要な地位を占めていると言ってよいだろう。
②事柄の性格
これらの行為は、綱紀事案、つまり懲戒処分手続において行なわれた。
懲戒処分は、対象者に直接的に強度の不利益を課する手続であり、刑事手続に準じる重大性がある。
人の一生を左右する、極めて重大な手続である。
また、先例となって、行政書士全員に影響を及ぼす手続でもある。
③相手方
県知事という上級の公務所である。
④このように、要職にあるものが、重大な手続において、上級の公的機関に対して、虚偽の事実を記載した書面を提出したことを放置すると、どのようになるか。
(ⅰ)要職にあるものがやっていることは、要職にないものがやっても問題ないと受け取られる。その結果、行政書士みんなが虚偽の書類を作成・提出するようになる。国家資格の保有者がやっていることは、国家資格をもっていない者がやっても問題ないと受け取られる。その結果、国民みんなが、虚偽の書類を作成・提出するようになる。書類という形に残るものでさえ、虚偽が問題ないとされているということは、口頭での虚偽も当然問題ないということになる。その結果、あらゆる書類、あらゆる会話に虚偽が蔓延する。こうなると、先に嘘をついた方が有利だから、みんな先を争って嘘をつくようになる。
(ⅱ)重大な手続においてされたことは、同等以下の重大性を持つ手続においては、問題ないと受け取られる。人の一生を左右する手続で虚偽を書いていいことになれば、ほとんどあらゆる書類に虚偽を書いても問題ないことになる。内容面の虚偽が許されるなら、手続や手段の面の虚偽も許されることになる。テストでカンニングが横行することになるだろう。ところで、公務所に虚偽の文書が提出された場合、受け取った公務所は、いったん、その書類が真実であるという前提で動こうとする。それによって不利益を受ける側は、「それは虚偽です」と説明するが、そのまま通ってしまえば、公務所に対する信頼は失われることになる。もし、公務所が虚偽に気づいてそのまま通らなかった場合も、いったんは虚偽を信じた形だから、公務所に対する不信感や恐怖心は拭えない。このように、虚偽の書類が公務所に提出されるようになると、公務所の信頼が失墜する。公務所への信頼が失墜すると、公務に支障が出て、社会が混乱することになる。
(ⅲ)上級の公的機関に対してされたことは、同等の公的機関はもちろん、下位の公的機関に対して行なっても、問題ないと受け取られる。みんなが公的機関に虚偽の書類を作成・提出するようになる。公的機関に対してやっても問題ないことは、公的機関以外に対してやっても問題ないと受け取られる。その結果、みんなが、公的機関に対しても、私人に対しても、虚偽の書類を作成・提出することになる。
(イ)(ⅰ)~(ⅲ)で検討した結果が現実になれば、あらゆることは嘘になり、橋は崩落し、建物は倒壊し、船は沈み、無実の人が罰せられ、悪人が要職に就いて社会を経綸するようになる。
そうなれば、社会は衰微し、ひいては滅亡することになるのは、火を見るよりも明らかである。
よって、この山口県行政書士会懲戒事件は、社会的影響が大きく、それ故に社会的意義が大きい事件である。
(3)どうすればいいのか
現在、虚偽が真実であるとして、通用している状態である。
「天知る、地知る、我知る、人知る」と言われる。
この事態は、必ず社会全体の知るところとなるであろう。
そうなれば、上記の禍(わざわい)が国民を襲うことは必定である。
そこで、第一歩として、真実を明らかにし、虚偽を虚偽であると暴露することが必要になる。
その結果、虚偽を流した者は、責任を問われることになる。
そうなれば、みんな、「ああ、悪いことをしたら、報いがあるんだな」と実感することになる。
要職にある者でも、悪いことをしたら責任をとらされると分かれば、行政書士全員が襟を正して、真正な書類を作成・提出するようになる。国家資格の保有者が虚偽を排除するようになれば、国民みんなもそれを見習って、真実を書いた書類を作成・提出するようになる。書類に真実を書く人が、口頭では嘘だらけということはないだろう。口頭でも、嘘はつかないようになるだろう。こうなれば、社会が誠実に運営されるようになる。その結果、虚偽を好む人たちは社会で影を潜め、誠実で信義を重んじる人たちによって、社会が動かされることになる。
そのような国家は、国際社会でも敬意を払われるだろう。そして、「さすが、震災の翌日、列に並んだ国民だ」と思われるだろう。
真実を明らかにし、責任をとらせること、その実現に向けて、私たちは全力を尽くしている。
今、山口県行政書士会は異常事態だ。
今、この異常さを社会に広めてはいけない。
国民の皆様のご理解とご協力を切にお願いしたい。