マーケット

2023.07.25 17:30

「AIバブルの崩壊」が株式市場を下落させる不吉な警告

安井克至

Photo Illustration by Omar Marques/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

JPモルガンのストラテジストは7月24日、人工知能(AI)の熱狂に煽られた株価の上昇はすぐに崩れ去る可能性があると警告し、AIはほとんどの企業の収益に実質的な恩恵をもたらしていないと指摘した。

同行のマルコ・コラノビッチが率いるストラテジストは、顧客向けメモの中で、歴史的な投資家のセンチメントの高まりにも関わらず、今後の株式市場の弱気な見通しを示している。

彼らは、直近のハイテク大手を中心とした株価の上昇が「AI主導のバブル」を示しており、このテクノロジーをめぐるハイプ(誇大宣伝)が、AIが実質的にもたらす収益の増大ではなく「基本的な質問に正解できないチャットボットの普及」によって引き起こされたと指摘した。

JPモルガンは、金利の上昇や個人貯蓄の減少、世界の地政学的対立の影響といった2022年の株式市場を過去10年で最悪の状況に追い込んだ要因の再評価が進むにつれて、市場が幅広く下落するだろうと予測した。

今年の年初からのS&P500種株価指数の20%近い上昇は、エヌビディアやアルファベット、マイクロソフトといったAIのトップ企業の総額1兆9000億ドル(約268兆円)もの時価総額の上昇による部分が大きい。

デビッド・コスティン率いるゴールドマン・サックスのアナリストは、21日のメモで、株価の上昇が狭い範囲に集中していることから、今後は残りの銘柄の間で、より広範な上昇が起こる可能性があると指摘した。アルファベットやアップル、アマゾン、マイクロソフト、メタ、エヌビディア、テスラを除く493銘柄のS&P 500構成銘柄のPER(株価収益率)が現在の17倍から19倍に上昇すれば、S&Pは史上最高値に上昇すると彼らは予想した。

JPモルガンのコラノビッチは、現状ではコモディティが過小評価されており、魅力的なエントリーポイントになっていると指摘した。今週は米連邦準備制度理事会(FRB)が26日に追加利上げの可否を明らかにし、アルファベットとマイクロソフトが25日午後に決算を発表するなど、経済関連の大きな動きが目白押しとなっている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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2024.04.22 11:00

「失敗」からの学びが導いた生成AI導入。JT×PwCコンサルティングが照らす現場活用のいろは

生成AIのビジネスへの活用が盛んになっている。その一方、セキュリティリスクなどの観点から導入に踏み切れなかったり、現場で活用シーンが見出せず使われなくなったりするケースも散見されるのが現状だ。

こうした壁を乗り越え、日本企業としていち早く生成AIを社内システムに導入した日本たばこ産業株式会社(以下、JT)。同社IT部の加藤正人と山形典孝、一連のプロジェクトを伴走しているPwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)の上野大地と中島義耀が議論を交わした。

── JTにおいて、生成AIの導入を検討することになったきっかけや時期について教えてください。

加藤正人(以下、加藤):私と山形はJTのIT部の中でも「攻めのIT」の役割を担っており、データ活用と最新テクノロジー活用というミッションを有しています。これらを推進する中で、生成AIの導入を検討し始めたのはAIチャットボットが世間で大きな話題になった2023年3月でした。技術調査の結果、事業へ与える価値も大きいと判断したため、経営層に当技術の可能性を説明し、理解いただくことで、早期に導入を決断しました。

上野大地(以下、上野):PwC Japanグループでも2023年の初頭から、生成AI関連のサービスメニューを出す準備を進めていましたが、ご相談いただいたJTのスピード感には驚きました。それ以前からJTとはデータ活用などの議論を重ねていたのですが、生成AIの話をいただいてから具体策の検討が一気に進んだという印象があります。

山形典孝(以下、山形):生成AIはデータ活用にも役立つ技術ですから、我々のミッションの両方に関わるテクノロジーといえます。そのため逃す手はないと感じたのです。同年の春には経営層からの同意を得て、部門検証をスタートしました。

── 世界中で生成AIへの注目が集まる一方、当時はビジネスに活用して成果を出した前例が乏しく、機密情報の漏えいなどのリスクも話題にあがっていました。こうした懸念点をJT社内ではどのように捉えていましたか。

加藤:経営層含め多くの社員は、リスクに対して相当慎重なスタンスでした。当時意識したのは、社員にリスクに対する認識を合わせることと、生成AIを正しく理解してもらうことです。リスクには、生成AIを使うことによるリスクはもちろん、使わずに機を逃すリスクなどもあります。

これらを踏まえて、まず、社員に対して体験会を通して、生成AIの危険性や限界だけでなく、活用シーンをイメージしてもらいました。次に、社員が安心して使える環境整備を進めました。これらの取り組みを社員に行うことで、経営層の不安も払拭したいと思っていたのです。

パイロット検証は「失敗」に終わった

── その後、具体的にはどのような場面で活用したのでしょうか。

日本たばこ産業 IT部の加藤正人(右)と山形典孝

日本たばこ産業 IT部の加藤正人(右)と山形典孝

山形:経営層からの合意を得た後、先行して 2023年7月頃から社内の三部門で要望の多かった機能である資料検索などのパイロット検証に使ってもらいましたが、検索を中心とした検証は想定した成果を得ることはできませんでした。

中島義耀(以下、中島):特に社内用語などの文脈への理解や、複数の推論結果の組み合わせが必要な問いかけは精度がばらつくため、検索回答機能においては部門の期待に沿った運用をするのは難しいという判断になりました。機能を検索に限定せず、例えばドキュメントやコンテンツを“生成”するツールとしても模索する必要があると感じましたね。

山形:私たちも生成AIは検索に強いテクノロジーではないと改めて理解しましたし、期待するレベルには至らないことを現場に体感してもらえた点では収穫がありました。そして、この三部門のうち一部門は、生成AIの特性を理解したうえで具体的な業務活用を考えたいという話になり、PwCコンサルティングと一緒に次の検証プロジェクトを進めています。

加藤:この「失敗」は、技術が現場に浸透するために必要なプロセスだったと考えています。社員がテクノロジーに楽しく触れる機会を作るとともに、その限界を理解して他の活用方法や幅広い技術に目を向けてもらうことが重要です。生成AIに限らずにひとつのツールを恒久的に使ってほしいという意図はなく、新たなテクノロジーを業務に積極的に取り入れ、「次はこういった機能のものがほしい、こういった使い方ならできそうだ」という意見こそがほしいと考えているのです。

山形:このパイロット検証の後に200名ほどが参加した全社イベントを開き、期待通りの成果が得られなかったこともオープンにして報告しました。目的を達成できなかった「失敗」とそこからの学びを伝えるためのイベントだったと言ってもいいほどです。

その後改めて生成AIの活用方法を検討して社内プラットフォームを改善し、利用者を600名ほどに拡大してユースケースの創出に引き続き取り組んでいます。検索以外の機能も搭載し、このプラットフォーム上でさまざまな検証を行える環境を整えました。

中島:社内プラットフォームの開発にはPwCコンサルティングも関わらせていただきました。「JT Group AI Concierge(以下、JAC)」と名づけ、情報・資料検索、チャット機能などを実装しています。今後はデータ分析からの示唆出しや資料作成、翻訳機能なども実装を検討中です。生成AIに限定せず、ハイブリッドAI(生成AIとそれ以外のAI技術(分類、回帰、最適化など)を組み合わせたもの)など、広範なテクノロジーを組み合わせて課題解決を目指しています。

加藤:生成AIはあくまでパーツのひとつに過ぎません。技術は組み合わせることで価値が増大しますし、データ活用においても複数の技術を用いることで可能性が広がると考えています。

現場で自主的に生成AIの活用策を考える動きも

PwCコンサルティングの上野大地(左)と中島義耀

PwCコンサルティングの上野大地(左)と中島義耀

── 生成AIの活用を現場へ促進するにあたり、どのようなコミュニケーションをされたのでしょうか。

山形:200名程を集めたイベントの後にJACの利用者を募集したところ約200名の応募がありました。その後、全応募者を対象に生成AIの特徴や特性を伝えたうえで、勉強会を実施し、操作のデモンストレーションも含めながら実際に自由に使ってもらう時間も設けました。

また、社員からの質問を受け付けるチャットルームを作ったり、三部門への先行導入で得られた知見を共有したりもしました。これらの施策によって、使い方で戸惑うようなことは起きず、生成AIへ過度な期待を抱くことも防げました。

中島:この時期、JACを積極的に活用しようとする方々が数名で自発的に集まり、生成AIの活用についてアイデアを出し合って検証していましたね。

加藤:研究開発部門の社員ですね。こうした活動は絶好の事例ですので、社内イベントで発表してもらいました。アンテナが高い社員の事例は特に社員の心に刺さります。イベントの中でも非常に良いコンテンツであったと社内でも多くの反響をいただきました。

そして今では、30部門まで利用範囲が広がっています。JACをPoC(概念実証)のような位置付けで使ってもらい、具体的な活用に進む部門が多く出ることを期待しています。

成熟していない技術を導入した稀有な日本企業

── ここまでの成果とその要因を、どのように捉えていますか。

上野:プロジェクトに伴走した立場として感じるのは、段階的に利用者を拡大し、全社イベントなどのプロモーションも行うという緻密な全社展開プロセスを経て、アクティブユーザーが高い状態を生み出している点です。まだ“黎明期”から“幻滅期”へ移行段階である生成AIを、ここまで全社導入している日本企業は極めて稀だと思います。

山形:私と加藤としては、PwCコンサルティングに伴走いただいたことが非常に大きな安心材料でした。お二人のAIをはじめとした先端技術への知見は素晴らしいうえに、2023年3月に相談した時点でモックを作っていただいたので私たちも理解しやすく、体験会などの一連のプロセスを踏んだことで、リスクに過剰に不安になることもありませんでした。

また、一連の取り組みを通してIT部と各事業部門との関係性も深まり、いくつかの部門とは生成AIのみならずIT活用についてディスカッションが進んでいます。また、部門に蓄積されているデータの提供にも協力してもらいやすくなったのではないかと感じています。

加藤:経営層とリスクを含めて認識を合わせられたことも要因だと思います。企業が新しい技術を取り入れる際は、想定リスクを超えない範囲において失敗を許容する覚悟を経営層にもってもらうことも重要です。技術革新が著しい時代ですから、リスクを取らずに他社の先行事例を待っているようでは後塵を拝する形になりかねません。

JTグループでは「心の豊かさを、もっと。」というパーパスを掲げています。変化の速い社会や人々の価値観に合わせて、心の豊かさへの新たな価値を創出するためには、新たな技術の活用は不可避であると私は考えています。そして新たな技術の導入には少なからずリスクがあります。今後も、引き続き、パーパス実現を念頭に置きながら、リスクとベネフィットを理解し、テクノロジーの選定と導入を進めていきたいと思います。

PwCコンサルティング合同会社
データアナリティクス
https://www.pwc.com/jp/ja/services/consulting/analytics.html


加藤正人◎日本たばこ産業株式会社 IT部次長。電機メーカーでSE/PMとしてソリューション開発などを手掛けた後、2017年JTに入社。「攻めのIT」を担当するチームのリードとして、JT全社でのIT活用促進に取り組む。

山形典孝◎日本たばこ産業株式会社 IT部。電機メーカーを経て、2017年4月入社。業務部門から課題をヒアリングし解決策の提案を行うだけでなく、事業部門に有用になると推察されるテクノロジーを、利用シーンに変換して提案をするシーズベースの取り組みも実施。また、MOT(技術経営)をベースとした最新テクノロジーの調査方法の確立、データ経営の推進にも従事。

上野大地◎PwCコンサルティング合同会社 マネージャー。大学で情報工学を専攻し、分散処理を用いた行列積の応用に関する基礎研究を実施。国内デジタルマーケティング企業を経て、2018年にPwCコンサルティングに入社。電力、製薬、通信、消費財などで、一貫してAIを活用した業務効率化、実装プロジェクトに従事しており、企画、PoC、開発、運用/保守まで一貫した支援業務の経験を有する。

中島義耀◎PwCコンサルティング合同会社 シニアアソシエイト。医療工学を専攻し、外資系医療機器メーカーを経て2021年にPwCコンサルティングに入社。小売、金融、サービス業などで一貫してAIを活用した業務高度化と効率化に従事、企画・ PoC・ 開発・保守運用まで一貫した支援業務の経験を有する。

Promoted by PwC Consulting LLC / text by Takako Miyo / photographs by Shuji Goto / edit by Kaori Saeki

マーケット

2023.07.19 10:30

異常気象で株式市場に暗雲 米証券大手が警鐘

遠藤宗生

米カリフォルニア州デスバレーに掲げられた高温注意の看板(2023年7月15日撮影、David McNew/Getty Image)

7年ぶりに発生したエルニーニョ現象による異常気象は世界の株式市場の活況に水を差しかねない──。米証券大手チャールズ・シュワブは今週、そう注意を促した。異常気象という材料はあまり検討されていないが、物価を再び高騰させる可能性があると指摘している。

チャールズ・シュワブのチーフグローバル投資ストラテジスト、ジェフリー・クレイントップは17日のリポートで、世界各地で記録されている最高気温やカナダの山火事といった異常気象はエルニーニョ現象によって近く拍車がかかることが予想されると説明。そのうえで、異常気象による経済的影響は「インフレと経済活動のいずれに関しても重大なものになりかねない」との見方を示した。

クレイントップは「気象がマーケット全体に大きな影響を及ぼすことはめったにない」としつつ、今回はまさにその例外的な事態になる可能性があるとみている。

理由は、インフレに対する株価の感応度が高くなっていることがひとつ。もうひとつは、農産物の収穫量の落ち込みが懸念されたり、冷房の使用で電力需給が逼迫したりするなか、食品・エネルギー価格を中心に物価上昇が見込まれることだ。

ここ数年、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)や、ロシアがウクライナに対して起こした戦争の影響で、物価は高騰した。ウォール街では、ここへきてようやくインフレが沈静化したとの判断から、米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめとする中央銀行が利上げを抑制することへの期待感が広がっている。

クレイントップによると、前回エルニーニョ現象が起きた2015〜16年にS&P500種株価指数は最大15%下落した。ただ、この下落は長くは続かず、気象が直接の原因ではなかったとも考えられている

S&P500は年初から約20%上昇し、構成銘柄の4割超は2桁の伸びを記録しているだけに、仮に2015〜16年のような下落が起これば大きな波乱になる。

エルニーニョは、中部太平洋の赤道域から南米沿岸にかけての海面水温が平年より高くなる現象。世界気象機関(WMO)は今月4日に新たな発生を宣言した。米国立海洋局(NOS)によると、米国ではその影響で南部では降水量が増え、北部では気温が上がる傾向にある。

米銀大手モルガン・スタンレーによると、気象災害による世界経済の損失額は2017〜19年の3年間で6500億ドル(約90兆円)に達している。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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