家族が殺された事から酷いうつを抱えてしまっていた女性。皆の支えが慰めになりだいぶ回復してきた。
温かくて幸せな家庭に生まれた彼女。親戚からは初めての子どもだっただけに注目されていた。
更に妹もふたり生まれ、彼女はお姉ちゃんとして精一杯に尽くしていた。周りからも素直でいい娘と褒められ、仲良く過ごしていた。
ある日、父が帰宅して祖父母も含めた家族みんなで夕食を楽しんでいる時だった。呼び鈴の音と同時にドアが開き‐なんと男3人組が家に侵入して来たのだ。
母は祖母と三姉妹を奥の部屋に逃がし、父と祖父は魔法で男達と戦う。しかし彼女とバルシアがちらりと外を覗いたところ、なんと父がある男にやられているところを見てしまった 更に恐怖でドアを閉められなくなったふたりは、続いて祖父までもがこの刃に屈伏するところを見てしまう。
ふたりは恐怖で動けなくなり、足音を感知した祖母が部屋から飛び出て魔法を放った結果、男達は逃げ出した。一人は、力尽きた様だ。
リビングはめちゃめちゃで、家自体に破壊の形跡はなかったが酷く汚れていた。増して、彼女と次女は部屋から出られなくなってしまった。
母と祖母‐その他事件を知ったご近所が協力して全てを片付け、一週間後には元通りになった。しかし彼女と次女は、此れまで付き合って来た男性にすら拒絶反応を起こす様になっていた。2人とも、不安症を抱えてしまった。
懸命にカウンセリングや治療を続けるが、2人とも学校に行けるようになるまでかなりの時間がかかった。彼女は通信制にして、卒業を遅らせた。
そんな最中、再び国家が動き出した ── 当時発展途上国だったこの国は、産業革命を推し進めて‐科学的に証明出来ない現象の改善に努めていた。"魔法"など、その典型的な例だ。
そして 魔法師の家系は国外追放対象になってしまうのだ。
彼女の家にも通知が届いた。パース州は特に魔法師の取締が変にキツい地域で、後に国中からガミガミ言われるのだが、此の家族はあくまで移住するつもりはなかった。
しかし勧告が五月蠅い上に‐従わないと後々厄介なことになりそうなので、知人に管理を委託して彼女達は母方の祖母の家に身を寄せた。
しかし 彼女の、男性に対する見方は依然変わらぬ侭だった。
ところで、封印の身だった筈の大魔法師‐ニゼは、第一回目の「排除プロジェクト」の時に闇側から封を解かれていた。プロジェクトを恐れ‐魔法師に襲撃を協力して貰おうとしたのだ。
全宇宙で"魔法排除"がピークだったこの時代、ニゼは積み上げた魔力で時力を割り‐そして一気に光側を排除する無謀な作戦に躍り出ていた。
だがそれは失敗に終わり‐逆に時力が全てを無にした。彼女も勿論のこと‐彼女と同国出身のクロードなど、立場上の光闇を問わず別の魔法師達に多大なる被害を与えたのだった。
此のダメージから彼女は、魔法の力の本家が揺らいでいる可能性を何となく感じる。しかしその世界には男性がいて‐劣等感を呼び起こさせる自分がいる。そう考えると、怖くて手も足も出なかった。
その頃、母が勤務先でよく一緒になる男性と結婚したいという旨を三姉妹に話した。彼女は"男"と考えるだけで嫌気がさしたのか、此の件についてはコメントを控えた。そして何日も開かずして、ポストと名乗る男性が家に挨拶をしに来た。
次女‐三女は渋々挨拶をしたが、彼女は部屋からも出られない。其処に、足音が聞こえて‐再婚相手の声が…

「はじめまして、マリンさん」

彼女はただ「来ないで!!」と叫んだが、その数週間後から此の男性を迎えることになった。その方が経済的にも安定する。母はそう言い、三女は納得した。
依然としてカウンセリングを続けていた彼女と次女。しかしポスト氏は、2人の不安を理解してるのか、優しく話しかけてくれた。
そして次女がついに此の恐怖の理由を口にした。彼女も殆ど同じ理由であることを打ち明けて、ふたりでポスト氏に謝罪した。彼は、謝ることはないと、笑ってくれた。
以降、2人ともポスト氏には心を開く様になる。
此の頃からだろうか。一度動きのあった"排除プロジェクト"が再始動することが決まった。前回の此れでアドの動きでダメージを受けていた彼女は、此れに参加するかどうか迷った。しかしポスト氏を始めとした近所の男性とはだいぶ話が出来る様になっていたため、みんなが彼女の背中を押してくれた。暴れ盛りの三女ルチアも連れて、2人は其れに参加を決める。
彼女は魔法師という点から施行チームに招待され、其処には、レグジェ期の元傭兵マレフィを筆頭に‐パイロットのラグや‐マートルなど 男性ばかりだがおおらかで心強い仲間達がいた。三女は自ら裏方に回った。
裏方チームとはマメに連絡を取り合い、パイロットの操縦する飛行機で現場へ接近する。何度もバリアに妨げられたが、彼女の魔法を中心に此れを切り崩し、こちらのチームともう既に魔界に侵入したチームと協力してこれらを破壊する。最年少のガーネットと兄は、バリアに隠されたトリックを"子どもにしか解らない暗号"で読みといた。
メインは別チームの協力有りで比較的スムーズに流れたが、先に魔界に侵入したチームやメインを後押ししたチームにはかなりの被害が出ている事も把握していた。特にルチアは此処で大怪我を負っていた。彼らの為にも、成功以外は許されない。メインは力を集わせ、最後の瞑想を捧げた。彼女の不安症を知った男性陣は、此れまでよく頑張ったと沢山褒めてくれた。男性恐怖症は、段々引いて行く。
そして、待ちに待った漆黒封印が完成したのだ。二度結成されていた事を知ってはいたが、今のメンツが揃わなかった前回はどうもうまくいかなかった事を知った。此の絆はみんな大事にすると約束し、少年達も誘って宴会を開いた。
彼女は祖国に引き上げてから、薬の量を減らして貰うことにした。本当にいい経験が出来て、じぶんでも世の中をよくして行けたらな、と考え始めていたのだ。
しかしまだ完全自立までは難しいと、医者に言われた。再発の可能性が見込まれるため、もう少し様子を見ましょう、と。
此の頃次女も精神が回復し‐実は彼氏と同棲を始めていた。一緒に戻って来た三女も、よかったねと胸を撫で下ろす。
ところが、彼女の病状は再び悪化していった。薬の量をまた増やすことになり、もう暫く 外界での本格始動はお預けとなる。しかも在宅なため、彼女は段々親に扶養して貰うことに申し訳なさを感じる様になる。その旨を相談すると、今度は簡単に出来るボランティアを紹介された。
魔法師の血を引く者への取締やらもだいぶ緩み、徐々に人口が増えて国が潤っていく。彼女は医師やカウンセラーが進めるボランティアを 一生懸命に行った。此れにて再び回復の兆しが見えたかと思われた。今度こそ、独り立ちを。
…といった頃、パラレルへ通じる神殿の門が開き、レグの勇者達が次々にこちらに介入する様になる。彼女は時々ラグの運転する飛行船に乗り、ビクビクしながらではあるけれどもパラレルの勇者達と度々お話をした。
その中で、彼女は何故かループと話していると心が落ち着く感じを覚える。他愛もない話から互いの背景の話になり、彼女は一瞬まごつくが、いざ打ち明けるとただ黙って聞いてくれていた。其れだけでよかったのだ。
以降、彼女は祖国にいながら‐度々彼に付いて行くことになる。
彼といる時はなんせ空間を超えるので、想像以上の世界が彼女の目の前に飛び込んで来た。同じものや違うもの‐あるものとないもの 彼女にとって全てが刺激だった。
だが。
ある日アンフェルのアルトでお散歩していた時、ある青年が女性の左腕を撃つ事件があった。彼女は撃たれた女性が痛みを抱える姿と‐父が痛みを抱えていた姿を思い出して、わっと泣いてしまう。
其れは華族で保護されている間も暫く止まらなくて、一時はうつの再再発かと言われた。彼も其れを心配していたが、思ったより症状は酷くなかった。
更に彼が一番心配していたのは、彼自身がレグで背負ってきた汚名が彼女にもつかないかどうかだった。彼女は最初に其れを打ち明けられた時、余り意味が解らなかったらしい。しかし彼の旧友達に逢って話を聞くに連れ、何を示唆するのか彼女も漸く解った。
だけど、彼女は別に大丈夫と声を掛けた。じぶんの罪の意識も、似た様なものだから。背負ってもなんてことはない。
やりたいことはまだ決まっていないけど、彼女は昔見られなかった広い世界を、今あなたと見たいと言った。








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