南フランスでは有数の、闇の血を引く勇者。ワインフェチの一員である事は言うまでもない。
何不自由しない普通の家庭に生まれた彼女は、特に何に困ることもなくすくすくと成長していく。
妹が生まれてから、お姉ちゃんという意識が急に芽生えたのか、よりしっかりと家事のお手伝いをするようになっていて、近所ではかなり評判のいい娘だった。
ところで、母系が残留魔界人の子孫であり、彼女にもしっかりその面影が残っていた。其れが発覚してからも特別苛められたりなどはなかったが、逆に彼女が変なプライドを持ってしまい、学校ではどちらかと言うと避けられていた。しかし彼女も数人解り合える仲間がいればいい方だと捉えており、此れを問題視はしなかった。
ところがある日魔界で帝政が崩れ‐各地で残留魔界人とその子孫がグダグダ言われるようになると、
彼女はいきなり覚醒し、なんと他人の悪い癖を物色するような仕草を見せ始めた。

「私が代表なの…」

そうして今度は、ある数名を特別叩き出す行為にまで走り始めた。彼女は段々荒れ狂い、時に意味を間違われ‐そして彼女自身も"残留魔界人だから"と 妙に避けられるようになってしまう。
そんな険悪な空気のまま進学し、此処ではあまり当時を知る人がいなかったため、彼女も気分新たに勉学に励んだ。
此処に、彼女の過去の本能を触発する人がいた ── 年下の彼の名を、マンゴーと言った。
以前から謎多き人物として一目置かれていることは知っていた。では何故、彼女は此の少年に何か通じるものがあるのだろう、其れは聞いてみる他になかったが、流石に照れ臭いお年頃なので、其れは出来なかった。
しかし偶然にも、触れられるチャンスは早く訪れた。彼女は何とか尋ねることが出来た。貴方のオーラは、何故何処か寂しく、懐かしいのか。彼は此れだけ答えた。

「僕も君とかを見るとそう感じるさ」

詳しいことは分からなかったが、彼女は其れだけでも共感した。もしかしたら、一緒の道を辿るかもしれない。"残留魔界人"として、横に逸れた道を。
その後暫くして、マンゴーの行方は分からなくなった。
思ったよりも残留魔界人に対する迫害みたいなものは余り大きくなく、その後は彼女も比較的平穏に過ごせた。
謎の少年の存在も忘れ、バカロレア試験を通して某大学へと身を置いていた。
その頃からだろうか。今度は妹のアンが あの謎の少年に逢ったと言う。しかも同い年らしくて、余りにそのオーラに共感した妹はしばしば夜に家に帰らない日が続いた。
彼女が此の話を聞き、先ず最初にじぶんの時のことを思い出した。誘惑か何かには一応勝った筈だ。ところが妹は、其れに飲まれて付いて行ってしまいそうだ。そうはさせない、と今すぐ引き離したかったのだが、初めて此処で私が荷担して、今更何になる そう思うと、もうアンの身に任せるしかないのかなと諦めるようになっていた。
更に情勢は悪化し、ついにフランス上空にも異形の者が現れるようになった。遥か上空国では魔の力が爆発し、イヴィルを発生させた。
更にヨーロッパでは、東欧からの影響で常に夢力が上限ギリギリまで満たされている状態にある。もし此れが変な方向に走ったら。彼女はさりげなく危惧し、今後の動向を見守ることにした。
しかし夢力が上限ギリギリまで膨れている理由は別にあり、此の頃はパリ郊外に"過去精"ブランが駐留していたのだ。彼女はそれがわからないまま、何故夢力が異常に膨れているのかひたすら考えた。
締めが悪くて大学では留年が決定したが、それでも彼女はきっと何かがある筈だ、と考え続けていた。そしてある日、ついに大学休学を申請し、答えを見つけようと暫く実家を離れることにしたのだ。解決出来るのなら、中退でも別に構わない。
ああついにあいつらに間接的に荷担してしまった。とある異形の者を通して、彼女はアウトサイド常駐のリサーチャーの契約を結んだ。その直系はリビング=デッド、此れは化け身の前の本物である。
いい流れだ、しかしこのまま何処へふらつこうか迷った。仕方がないので、近郊から自由にふらつこう。それが出来るのが、ヨーロッパの勇者の強みだ。
リビング=デッド本人に謁見したのは、もう少し後の話だった。その頃は既に魔界もレグ全体へのサーチャー派遣が完了し、データを採集しているところであった。
異国では、残留魔界人が酷く扱われ‐またあるグループは暴動を起こしている。更には、"2000年問題"に関与して様々な噂がアウトサイド中を駆け巡っていた。特に彼女を驚かせたのが、アンフェルで発生したシュッソル騒動。しかも後に、彼女自身が此の国に行くとは思わなかっただろう。
彼女も、南フランスを中心にデータを送り続けていた。しかしこんな詳細を一体どうしたいのか。ある日送付するデータの隅っこにさりげなくフランス語で記入した。
返事はなかった。極秘なんだろうなと見切りをつけ、隣国イタリアへと足を進めた。
イタリアもルネサンス期から夢力の中心だった。地中海域では一番膨れ上がりやすい。しかし此の頃は、まるで嵐前後の沈着のように、その辺に関しては静かであった。
それがリサーチャーである彼女にとっては、逆に痒い。何だかよく分からないままに、足を進めていたところで、
奇襲を受けた。周りを数名に取り囲まれた。きっと魔界からの使いと思われているが、それをアピる暇もない。彼女はピンチを何とか切り抜けた。
そしてフランス国内では彼女と同じような立場で、すっかり妹が有名人になっていたことを知る。アンはパリの方まで足を進めて、彼女と同じことをしていた。
連絡がとれた。…何年ぶりだろう。互いに、涙が溢れた。何時か姉妹を此の運命に陥れた奴等に復讐を試みましょう。が言いたかったが、そもそも原因がよくわからないため、ただ妹を慰めることしか出来なかった。
間もなく、リビング=デッド(の化身)はある女勇者らによって封じられた。それと同時に彼女はリサーチャーから解放され、また地元に戻った。今度はちゃんと大学を卒業し、一般業務に専念しようとしたが。
まだ腕がうずくのだ。"ライボルト"。さりげなく噂は聞いていたが、今度はそっち方面だった。
実は彼女も、ほんの欠片なら携えていた。此れは光側に採集されるほど大掛かりではない。実際に、見逃された。
その後に仕事柄でイタリアに行く用事が出来た。あの時行けなかった場所でも、と、夜もホテルを飛び出していた。
それにしても、夢力は相変わらず落ち着かない。どころかこの時期、丁度アンフェルを中心に12魔獣が盛んに活動しており、それ以前に光側が敗北した戦いの仇返しっぽくなっていた。
イタチゴッコじゃんね、彼女は呆れていたが、此処で本気な男が現れて、なんと自ら其処に首を突っ込んで行った。
被害は基本全域だ、男は彼女が"闇側"であるとも知らず、ただひたすら精一杯の英語で彼女を説得し続けた。彼女は半分聞き流していたが、此の焦りようは、たぶん…

あの青年の影響

試しに聞いた。"マンゴー"という変なオーラの男は何処だ。
彼は知らないと言った。三回聞いても、同じことを言った。此れだからイタリア人男性は、と半ば呆れそうになったが、国民性は変えようがない。
でも気がついたら、"反逆者"と呼ばれるよりもむしろ12魔獣騒動に荷担する奴等を、此の男と共に片付けていた。あくまで荷担する奴等ではあるが、其処だから意味がある。そしてだんだん、此の男性とも意気投合し始めるのだ。
彼の名をトルニオと言った。彼女をいきなり誘った不思議キャラ、しかし何の隔たりもなく普通に反抗出来た。つまり、初対面な気がしないのだ。
また変わったオーラを、と呆れたが、いやそれでも彼の方はだいぶ積極的だった。そう、欧州中を巡るのだと。
実は彼女もリサーチャーになりたての頃、それを期待していた時があった。今まさに叶おうとしている。彼が一緒だが、別に同伴者の有無は関係ない。
彼女の地元マルセイユをスタートに、ふたりは各地を巡った。おかげで企業からはお咎めが出てしまったが、其れはこの時の彼女には関係ない。まだ完璧に闇側の騒動は落ち着いていないが、其処を上手く処理しながら、各地を観光した。
その途中から、彼の耳に"女王ルサーベル"の話が入ってくる。真意を確かめようと彼はなんとアンフェルに向かうことを提案した。彼女は旅の途中で其れはない、と、断固として否定した。おかげで数ヵ月離れることになったが、気がつけばその期間、何処か寂しいのだ。オランダとベルギーを交互に散策していた。
暫くして彼は戻って来た。各地巡りを再開するが、此処で彼の過去を初めて聞くこととなる。

いや、でも、やっぱり寂しかったんだ。

彼女は此れだけで、"マンゴー"に侵されたんだなということを知る。後はもう其処から、本当の愛へと変わっていった。
アンともたまに連絡を取っていた。妹はどうやら、フランスでも名高い風精リン達姉妹の力を借りて、復活したようだ。パリで仕事をしていることを聞き、彼女も胸を撫で下ろす。同時に、あの風精に助けて貰っていたのか と驚いた。彼女も名だけは知っていた。
彼に再びアンフェルへ行く用事が出来たので、今度は彼女も同行した。其処ではジルコンが近況報告等をし、更に彼女のためにワインやら何やら全て用意してくれた。彼はちゃっかり、彼女のことを話していたようだった。
其れからすぐ欧州に戻り、今度はイタリアの彼のいる町にて生活しようという話に。彼女は暫く考えたが、本当は考えなくたっていいのかもしれない、数日後に了解の旨を送った。

ところで 気になる"マンゴー"の行方だが、どうやらあれから故郷で静かに過ごしているというのだ。死んだりしてなくてよかった、と思いながら、内心姉妹での復讐を未だに計画していたりする。
その時、じぶんも同類だなと、思うのだ。








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