100年前は存在すらわからなかった、未知の病原体「ウイルス」を世界で初めて発見した天才科学者は誰なのか?

ウイルスの発見

「ウイルス(virus)」は、英語ではヴァイラスと発音する。ものの本ではしばしばウイルスはドイツ語の「ビールス」由来だとしているが、実際、ドイツ語では「ウィールス」に近い発音で、日本語のウイルスと近い。

ウイルスという言葉は、もとはラテン語に由来し、「病毒」という意味だった。歴史を紐解くと、かのギリシャのヒポクラテス(紀元前400年ごろに活躍した「医学の父」とよばれる学者)が「病気の原因の一つにウイルス(病毒)がある」と言ったのが、起源であるようだ(山内一也:『新版 ウイルスと人間』岩波科学ライブラリー)。

しかし、病原体としてのウイルスの実体が見えてきたのは今から100年ほど前、1890年ごろのことだ。ロシアのディミトリ・イワノフスキー、ドイツのフリードリッヒ・レフラーとパウル・フロッシュ、さらにはオランダのマルティヌス・ヴィレム・ベイエリンクが、ほぼ同じころに、ウイルスが「細菌よりはずっと小さく素焼きの陶板まで通り抜けるほど微小な『病原体』である」ことに気づいた。

素焼きの陶板とは、当時、シャンベラン型濾過器ともよばれ、1880年代にかの有名な細菌学者のルイ・パスツールの実験助手だったシャルル・シャンベランが考案したものだ。彼は、素焼きの陶板に圧力をかけて液体を通すと細菌が除去されることを発見し、パスツールをはじめとする当時の医学者たちはこれを細菌除去用のフィルター=濾過器として用いた。