現在夜11時。SNSは大変に荒れた
とっくに覚悟が出来ているcrちゃんと、彼女が大切なaokさん
8割捏造注意!!!
・押せ押せなcrちゃ
・めっちゃaokさんに惚れてるcrちゃ
・多分同棲してるアオチリ
・SNSしててわりと人気なcrちゃ
狂った勢いで書きました
モブトレの「ここのジムリ誰だっけ?」みたいな発言(たしかあったはず)に閃いた産物
crちゃん視点なので関西弁のテンションで書いてますが、筆者の地域で使ってる関西弁とcrちゃんの関西弁(コガネ弁?)はズレがある可能性があるので変かもしれない
二人はこんなことしない!!!!言わない!!!!ってなったらすみません……
需要に供給が追いつきますように!!!!!
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彼氏との楽しいディナーの帰り。家への近道兼人の目を遮る為に薄暗い道に入った途端、あー、人につけられとるなぁって気配は感じてた。声も掛けてこんとつかず離れずでいるあたり、何処ぞの記者か熱心なストーカーあたりかと目星をつける。隣の案外心配性な彼氏は「何かあれば先に逃げてくださいね」なんて小声で言いながらジャケットの内ポケットに仕舞ってあるボールを触ってたけど、残念ながらそう素直に守られたるかわいいだけのチリちゃんやない。
彼氏の心配も、後ろの人影にも気付かんフリをして、ダークスーツを纏った腕に、一息に抱き着いた。その下がりっぱなしのお口にちゅーしたっても良かったけど、流石にやりすぎかと思ってそこは我慢した。
きっと今、この背中をレンズが睨みつけている。
それでいい。思う存分撮ったらええ。
珍しく取り乱して引き剥がそうとしてくる彼氏をいなしながら、自分の肩越しに後ろへ微笑んでやった。
◆◆◆◆
「そんで出来た記事がこれ? いくらネットやからて舐めとんのか。こんなん撮られ損やわ」
「……撮られた時点で十分損だとは思いますが」
あの薄暗い道での出来事から一時間弱。部屋着に着替えて落ち着いた状態でSNSを開けば、トレンドによく見慣れた背中をサムネイルにしたネット記事が上がってた。ふぅん、思ったより画質ええやん。と思いながら読んだ記事のタイトルに、重い溜め息が漏れる。
『四天王チリ 熱愛発覚!? お相手は一般人男性か』
お互いいつもの格好なこともあって、自分がチリちゃんやとバレてることは想定内。むしろこの格好やないとこんなんしてなかったってのもある。それから、いくら普段ふざけてるって言われても(ふざけてへんけど)スキンシップはあんまりサービスせんし、これが恋愛関係として取り上げられるやろうと読んだのもその通り。やのに。
「曲がりなりにも記事書く仕事しとんのやろが! ジムリも四天王もやっとるアオキさんのこと知らんとかあるか!? もぐりやろもぐり! ほんま腹立つわ!」
中身を読んでも「二人は仲睦まじい様子で」とか、「チリより年上か」とか、「正面からは撮影出来なかったものの恐らくサラリーマンかと思われる」とか、そんなん見たらわかるわと思ってまうようなスベッた考察ばっかり。てか考察にもなってへんし。
脱力して腰掛けてたベッドに大の字に倒れこむと、ウチの手の中からスマホをするっと抜き取ってアオキさんも読み始める。画面を見下ろす目からは感情を読み取れない。
アオキさんとは、もうかれこれ二年はお付き合いを続けてきた。最初はただの同僚で、でもリーグ運営とか横の連絡とかで関わるうちに惹かれていって……今の関係に落ち着いた。ぬぼっとしてて、声が小さくて、いつも疲れ切ってて。でもバトルには真剣で実力もあるし、大人としての振る舞いとか気遣いに慣れてる。そういうところがかっこいいと思ったし、そんな人に大切にされたらどれだけ幸せやろうと思った。
それが叶って、バトルしたり仕事する傍ら、愛し合って。それで、二年。リーグには薄々バレ始めてるんやろうなと肌で感じつつも、案外世にはバレてないらしいと気付いたのが、最近。
そろそろ公表してもええんちゃいます? って何っ回もアオキさんに主張したけど、「立場もありますし」とか断られ続けて早数ヶ月。立場なんか、お互い失うつもりがないってことはわかりきってる。ウチもアオキさんもポケモンが好きで、今やガッツリポケモンバトル界に食い込んだ存在になってもうた。やのに、「立場もありますし」? そんなん一生隠しながら愛し合えってこと? そんなん耐えられへん。ウチやってもっとイチャイチャしたいし、アオキさんはウチので、ウチはアオキさんのなんやってでっかい声で言いたいんやもん! あーあ、もうチリちゃん痺れ切らしてまいました。チリちゃん、動きます。
そんなこんなで、「わざと」写真を撮らせた。
「四天王チリ&アオキ! 秘密の職場恋愛か」とか好き勝手書かれてまうんかな〜、チリちゃんがアオキさんのこと大好きなんやっていろんな人にバレてまうな! もうここまで来たら会見とか開いて公表してまう!? それかSNSで大々的に公表!? ちょっとずつ匂わせ増やしてって〜ってのもええな! いっそ結婚する? あーでもチリちゃんのガチ恋ちゃんらがヤバいかな〜でもウチはとっくにアオキさんのやから気にせんでええんやで!
とかなんとか言ってアオキさんが目ぇ白黒させとるうちに交際公表か入籍かするつもりやったのに、まさかお相手がアオキさんやってバレてすらおらんとか。こんなことあるんか。これには流石に溜め息もつかせてほしい。
「……なるほど」
いつのまにか記事を読み終えたらしいアオキさんが、そう漏らす。お返しします、とスマホが手の中に戻されたから、なんとなくそのままスリープにした。
「どうでした?」
「あまり私は好みませんでした」
「そうですやろ、やから……」
「この記事も、貴女の行動も」
「……はぇ?」
体を起こすと、じっとりと無表情な黒い瞳と目が合う。これはほんまもんの「無表情」や。背中がぶわ、と冷えていくのがわかった。
抱きついてすぐは、慌てるばっかりでなんも言われんかった。帰ってきてからも、なんも。やからきっとアオキさんも満更でもないんやろうなと勝手に思ってたけど、多分、違うかった、みたい。
きゅ、と自然に体が縮こまる。
「ぇ、と……その、ぉ……」
「……ああいえ、決して怒っているとかではなく。そう怖がらないでください」
ふ、と目尻を下げ、アオキさんが覗き込んでくる。優しく目の下の頬を親指で撫でられ、安心した。撫でてくれる手に甘えて両手で捕まえて擦り寄ったら、ゆっくり、ゆっくりそのまま撫でながら、アオキさんは話し始める。
「言い訳になってしまうんですが。交際の公表を、貴女がこんなにも本気で待ってくれているとは思わなくて。危険な行動をさせてしまいました。すみません」
「ん……ううん。アオキさんは悪ない。ウチが勝手にやったんやし。謝らなあかんのはウチです」
「いえ。本当に、不甲斐ないです。私はともかくチリさんは人気ですから、どんな反応をされるかと怖くて」
「そんで、先延ばしにしてたん?」
「……はい」
「……公表すんのは、イヤやない?」
「勿論です。もう待てないのであれば、すぐにでも」
頬を撫でていた手が首に滑って、そこもさらさら撫でていく。今更大事にされてる自覚が芽生えてきて、ちょっとだけ赤くなってまう。
なんや、「立場」ってチリちゃんだけかいな。確かに揺らぐのは怖いけど、失うかもって思ったら怖いけど、でも、もう抑えられへんところまで来てもうた。それに、男女問わず言い寄られるのを傷付けんように断るのも、アオキさんに惚れる子が出て来ませんようにと願い続けるのも、もう疲れた。
ウチは証が欲しい。大好きな彼が自分のもので、自分は彼だけのものである証が。それがあれば、きっと、もっと人生楽しくなるし、仕事にも身が入るってもん。
「言質、取ったで?」
「今更撤回はしません」
「ん。よろし」
スリープにしてたスマホを立ち上げて、そのままバックグラウンドのSNSを開く。通知にはもう数え切れんくらいのメッセージが来てたけど、全部無視して、ネット記事の共有マークを押した。投稿にURLを貼り付けて、文章を打ち込もうとして、ちょっと止まる。
「……アオキさん、ちょっとええですか?」
「はい」
すっかり乗り気になったらしいアオキさんに抱き着いて、今度はカメラアプリを立ち上げる。スマホを横長になるように構えて、インカメラに。じっとされるがままになってるアオキさんの唇を軽く奪いながら、画面をタップした。
(彼氏のキス顔全世界に見られるとか絶対嫌やけど、今回くらいはサービスしたるわ。ちゃんと目に焼き付けや)