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この作品「彼女からの熱い告白」は「ポケモンSV」「チリ(トレーナー)」等のタグがつけられた作品です。
彼女からの熱い告白/るべるの小説

彼女からの熱い告白

15,021文字30分

ポケモンSV、アオキとチリです…か?(5作目)

5作目だけど前作とかと全く繋がってないです。

※パルッターは、要はツ◯ッターのパクりみたいなものなんですけど、ツイッ◯ーはSNSではないらしいですよね

『パルデア全土で流行ってるSNS、通称パルッターをほぼ情報収集に使ってたチリ。知人や家族と繋がる事もなく、性別を男性と偽り、ネットでも人気のある自分自身をエゴサーチして複雑な気持ちになりつつ、1人の女性ユーザーと仲良くなって、その人の事が気になり始める』的な話

以下にご注意ください。



・話ごちゃごちゃしててごめんなさい
・関西弁がわからない…
・誤字脱字あるかも

・一人称の捏造してます
・捏造、妄想多い
・予告なく非公開 削除 手直しするかも

1
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 パルデア地方限定のSNS、通称パルッター。
パモの白いシルエットに背景が水色のシンプルなロゴが特徴のアプリである。

 スマホロトムを通して最低限の本人確認が必要ではあるが、だからと言って本名で行う必要はなく、パルデア全土の人と気軽に交流することができる。
 200文字以内で独り言のように好きに呟くのが主な使用方法で、その文と一緒に写真も一枚だけ貼ることができる。
その呟きをきっかけに色々な人と浅く緩く繋がることができるのが売りだ。
 利用できるのはパルデア民の20歳以上と限られてはいるが、約9割はパルッターを使っているとされている。
 やり取りなどはパルッター公式が厳重に監視しており、ポケモンの違法取引や暴力沙汰など危険な行為に繋がりそうな事があると瞬時に対応してくれる。
24時間の安心体制であり、パルデアの情報も色々知れて便利なので、大人達はパルッターを重宝していた。


「へー、今日はチャンプルタウンの北でサンダース大量発生かぁ」

 仰向けで寝転がりながらあたたかい布団の中にスマホロトムを持ち込む。
 時刻は7:10。仕事の時間まではまだ余裕があるので、朝起きてすぐにやる事と言えばパルッターを開くことだった。
 人との交流は最低限に留め、基本的にはパルデア地方の情報収集を目的としたアカウントとなっている。普段テレビを見ないチリにとってこのアプリは大変役に立っているが、知人や家族からは「チリはパルッターやらないの?」と言われている。それらに対しては、やるのが面倒だと言って断っている。それ自体は嘘偽りもないのだが、実際はこうして日々の生活をそれ無しでは過ごせないほどどっぷりと浸かっていると言うことだけは絶対に言えない。
 そもそも、知人や家族とネット上で繋がっても仕方ないのではないかと思う。四六時中ずっと身近な人の気配を感じてしまうというのは、どうにも心が休まらない。

「あ。またチリちゃんのイラスト描いてくれてる子おる。嬉しいわぁ」

 検索欄に自身の名前を入れると、その大半は好意的なものが多かった。ハッシュタグまで付けられており、シンプルに #チリちゃん という名前のものがメインで使用されるハッシュタグらしい。
派生で、#チリちゃんイラスト #今日のチリちゃん その他色々とあるのだが、仕事の日である今日はそこまで追うと現実世界に帰って来られなくなるので、泣く泣く諦めた。それらを検索してゆっくりと眺めるのは休みの日の楽しみとしてとっておこう。
 ただ、それらは好意的なものだけではなく、悪意も存在する。あまりに酷いものはすぐに運営が対応してくれるし、自身も見たくなければブロックやミュートで対処する事にしているのだが、悪意の書き込みを見つけたチリちゃんファンが騒ぎ立てて逆に火に油を注いでいたりもするので、それを見かけた時は深いため息をついてしまう。

「しっかし、好意も悪意もすごいなぁ。チリちゃん人に対してそこまで熱くなれんわ…」

 自分のことで騒ぐパルッター民を、どこか他人事のように見てしまう。この人たちの心を動かしているのは紛れもなく自分自身だというのに、どうにも素直に受け入れられない。

 それはきっと、自分から人を好きになった事がないからでは?
という結論に至ったのはつい最近のことだ。

自分のことを美人さんだなんて言ったり、ポケモン勝負以外の時は常にニコニコとしていたり、人に対して隙を見せることができない自分。
それらは虚勢であり、自己肯定感の低さの裏返しでもあった。
実際の自分は大したことなんて無い。ポケモンリーグ所属の人で言ったら、ポピーの方が愛嬌もあってよほど可愛いし、アオキさんの方が…営業はともかく、他の仕事はできるし、ハッサクさんみたいに人のことを思いやれる人格者でもない。もちろん、どんなことでも平均以上に色々とこなしてしまうオモダカさんの足下には到底及ばない。
 こんな年齢になっても、人のことを心から好きになったこともない、まるで欠陥品のような自分が本当に嫌で。
 人から好意を向けられても、嬉しい気持ちとは別に、あなたにチリちゃんのなにがわかるん?というどす黒い気持ちが湧いてくるのだ。
なんなら、いっそ悪意の方が有難い時だって存在する。あいつ性格悪そうだなんて書かれてた時には、自分、わかっとるやん!と声に出してしまったことが何回かある。
 自分自身のことを調べるたびにじわじわと毒でやられているのに、それでもパルッターのエゴサーチをやめられない。

「チリちゃんイケメン」
「チリちゃん美人」
「四天王で一番はチリちゃん」

薄っぺらく見えてしまうそれらの言葉に、心はどんどんと蝕まれていく。


 さて、さすがにそろそろ準備をしなければ。
シャワーも浴びなければいけないし、自身のポケモン達に餌もあげなければいけない。
そう思いながらチリちゃんタグを雑にスクロールして見ていた時だった。

「…あっ。綺麗やな、この写真」

 スマホロトムで撮影されたであろう、パルデア十景の"ひそやかビーチ"の写真。それは昼でも夜でもなく夕方に撮影されたもので、海面に反射した夕焼けがキラキラと輝いていて、泣きたくなるくらいに美しく撮られていた。
砂浜と海と太陽の位置まで完璧であり、後でスマホロトムの待受にでもしようと考えてその写真を勝手に保存してしまった。
いや、むしろこの投稿者は私が保存することを望んでいるのだ。


本文
#チリちゃん 、お仕事お疲れ様。
この間パルデア十景のひそやかビーチに行きました。
夕焼けと海と砂浜のバランスがとても良かったので撮りました。
この夕焼けがチリちゃんみたいだなと感じたので、彼女へと捧げます。


と書いてあったので、他の誰でもない自分にはこれをもらう権利があるはずだ。
 なんとなくその写真を撮った投稿主の事が気になり、プロフィールまで飛ぶと"女性"であり、年齢は"25歳"。趣味は"食べ歩き"、好きなポケモンは"可愛いポケモン"。自分と似ているそのプロフィールに親近感を感じて、思い切って彼女に話しかけてみようと思い、文章を打つ。


本文
はじめまして、volanteさん。ペペロンチーノと申します。
こちらの夕焼け、とても綺麗な写真で感動しました。
どうしてこれをチリちゃんに捧げようと思ったのでしょうか。


 これだけ見ると冷たい口調のように見えるが、あくまでも丁寧に、ビジネスのようにして書くのを崩さないようにしている。自身のプロフィールもこの彼女とそこまで変わらないのだが、自身の性別は"男"と記載している。
このくらい丁寧な方が、相手の女性も嫌な気持ちにならないと勝手に考えているのだが、実際どうなのかはわからない。

 チリちゃんのハッシュタグには #チリちゃんへ捧ぐ というものもあり、その大半は"いつも元気なチリちゃん"のために、自作のポエムが書かれていたり、流行りのポケモンの道具のオススメ画像が貼られていたり、ニコニコと笑っているイラストが載せられていたり、澄み渡った綺麗な青空の写真だったりする。
世間一般でのチリちゃんとは真逆に近い、海辺の夕焼けの写真を贈られ、しかも"チリちゃんみたい"だと言われるのは初めてだった。

 返信はきっと遅くなるだろうと思っていたのだが、ピコっという聞き慣れない音が2つほどスマホロトムから鳴り、パルッターで返信があったことを知らせてくれた。
意外にも早く返信がきたこともあり、少し焦りながらも仕事用のネクタイをしめながら片手でスマホロトムを操作する。


本文
ペペロンチーノさん、はじめまして。
自分なんかがチリちゃんに対してこんなことを思うのはどうかと思ったのですが、彼女はたまに無理して笑っているように見えるのです。

本文
青空の写真や笑顔のイラストは"元気"な感じがしてとてもいいけれど、夕焼けを見ていると"今日も一日お疲れ様でした"という気持ちになりませんか?
なので、毎日頑張ってるチリちゃんと似てるなと勝手に解釈してしまいました。
あまり語ると気持ち悪いかもしれないので、この辺にしておきます。


 長すぎたためか2つに分けて送られてきたその文を見て、その人のプロフィールにあった"volanteさんをフォローする"と書かれていたところを無意識に押してしまっていた。


***

「チリちゃん、最近楽しそうです。何かいいことありましたの?」

 ポピーにそう言われてから、自然と口角が上がっている自分に気付いた。

 あれからvolanteさんとの交流が始まったのだ。
フォローはすぐには返ってこなかったし、別にされなくても良いとは思っていたのだが、仕事終わりにスマホロトムでパルッターを見ると"volanteさんからフォローされました"という通知が入っていた。
 初めてと言っても過言ではない、自分から興味を持った人間と交流ができるという嬉しさで、その文字を見た瞬間に自分の心臓の鼓動は50mを一気に駆けた直後のように早くなっていた。
 買い物をして帰ろうと思ったはずなのにすぐさま家へと飛んで帰ると、自分のご飯は冷凍の焼きおにぎり1つで軽く済ませ、ポケモン達へはしっかりと餌をやり、どうしても気になってvolanteさんの過去の文章や写真を1つ1つ丁寧に確認していた。


本文
#今日のチリちゃん
ナンジャモさんのドンナモンジャTVにチリちゃんが出ている。
彼女はいつも通り綺麗だけれど、少し元気がなさそうに見える。病気なのだろうか。心配。


「あぁ、数日前のアレかぁ…」

 おはこんハロチャオ…と、意味もなくぼそっと呟く。
あの時の自分は、volanteさんの言う通り具合があまり良くなかった。見抜かれているということに気持ち悪さは感じない。チリちゃんに夕焼けを贈ってくれたこの人ならきっとそんなことまでわかるんだろうなと思ったから。


本文
#チリちゃん
四天王に密着!という番組にチリちゃんが出ていた。
髪留めがドオーになっていて気合いが入っているなと感じた。相変わらずとても綺麗だった。
バトルもいつも通り指示が的確で、自分もああなりたいと思った。


「おぉ!よく見てくれてるなぁ、凄いなぁvolanteさん」


 彼女の過去の発言は本当に納得のものばかりで、自分自身よりもこの人の方が"チリ"を理解しているのではないかと感じられるほどだった。
載せられていた写真も相変わらず世間一般でのチリの評価とは異なっており、逆にそれがとても嬉しかった。
自分の表面だけでなく、自分の内面まで考えてくれる人もいるのだと。しかもそれが一般人であることも有り難かった。

「みんな、チリちゃんの表面しか見てないもんなぁ。こんな人もいるんやなぁ」

 volanteさんの過去の発言を見返していると、約1ヶ月ほど前に書かれていた文章が目に止まった。
それらは長すぎる為か何個かに分けられていて、volanteさん本人の感情と共に綴られていた。


本文
チリちゃんに会ったことがある。
とても素敵な女性で、見ているこっちが元気を貰える。
私だけではなく、彼女から元気を貰える人間はこの世にたくさんいると思う。

本文
でも、彼女は時折辛そうな目をしている時がある。
彼女自身は、誰から元気を貰うのだろうか。
勝手ながら、そこがとても心配だ。

本文
私はこの年になっても恋をしたことがない。
でも、彼女に対しては、恋に似た何かを感じてしまうことがある。
そんな彼女を元気付けたいけど、私が彼女の日常に入り込むというのはあり得ない。

本文
だから私はここで彼女を静かに応援したい。
本人が見ているかどうかは関係ない。
ここでしかできないから、ここで自分ができることを精一杯したい。

本文
批判されても構わない。彼女に対する世間との評価がズレてるのも否定しない。
でも私は彼女に対して自分が思ったありのままを伝えたい。
いつだってずっと元気な人間なんてありえない。
彼女がもっと心を落ち着かせられるような場所を作ってあげたい。


 1つ1つを読み進めていく度にどんどん涙が溢れてきて、視界はぐちゃぐちゃになってしまう。とまることなく湧き出す涙は拭っても拭っても邪魔にしかならなく、画面の文字が滲んでしまって全く読めない。
彼女からの熱いメッセージに、思わず笑ってしまう。

「…もぉ。こんなん、まるで告白やん…」


 そんな彼女とのやりとりだが、日に5回以内でおさめることにしていた。あまりしつこすぎると嫌われてしまうかもしれないし、相手の返信がかなり遅いので恐らく学生ではなく社会人なのではないかと思う。
 それでも、彼女とパルッターで他愛のないやりとりをしている日々の生活が楽しくて、仕事中でも思い出してニヤリと笑ってしまうことがあるのは周りからしたら少し気持ち悪く見えるかも知れない。
 つい先ほどポピーに指摘されたばかりだが、今朝も彼女とパルッターでやり取りをしたばかりだった。

「チリちゃん、最近気になる人できたんよ」
「え!好きな人ですの?」
「んー、相手は女性なんよ」
「? 女性だと問題ですの?」
「え、チリちゃんの性別知っとる?」
「? チリちゃんは女の子ですけど、女の子を好きになったらダメなんですの?」
「……確かに」

 盲点だった。
男性だとか女性だとか、そんなことは今のこの時代に合っていない。
まだ出会って日が浅い上、お互いの顔すらも知らないのに、ポピーからの指摘でvolanteさんという人間そのものが割と好きになっていることに気付いてしまった。

「ポピー、ありがとう。ちょっと考えてみるわ」


***

 考えてみるだなんて言いながら、数日が経った。
相変わらずvolanteさんとのやりとりは続いているし、彼女への気持ちは全く冷めることなく、むしろどんどんと興味が湧いてきている。
 そもそも、だ。パルッターは犯罪行為・それに繋がること以外は寛容なアプリであり、volanteさんが女性で25歳というのが正しい情報だとも限らないのだ。
 ネカマなのかと疑う、というよりも、そうであってくれたなら将来的にお付き合いできたり…なんていう淡い期待が自身の心の中にあって、ついつい彼女のことを探ってしまいそうになる。
 ポピーに言われた通りこの人が本当に女性であっても構わないが、自身の性自認が女である以上、男である方が私にとってはありがたいわけで。
 女性にしかわからないことを聞いて、どうやって返事が返ってくるかを試してみようと思い、文を打つ。


本文
スカートってスースーしますよね。


打ってから、それをすぐに消す。

「あかん!チリちゃんのプロフィールは男のままや!変態になってまう!」


本文
アレの2日目ってキツイですよね。

「アホか!さっきより酷いやん!どうしよ!」


 何より、volanteさんに嫌われることだけは避けたかった。あれからもvolanteさんはチリちゃんのことをたくさん書いてくれていたのだ。
 たまに、チリちゃん以外にハッサクさんやポピー、オモダカさんのことも書いていたりするので、ポケモンリーグマニアなのかもしれない。自分から見ても、他の人たちのこともやはり的確に書かれているように見える。ちなみに、アオキさんに関しては四天王だと公にはされていないので書かれていることは無い。
 彼女の呟きは、基本的にはチリちゃんのこと、たまにポピーとハッサクさんとオモダカさんの話、あとは食べ物の写真と、彼女の手持ちであるオドリドリの写真。それに、ひそやかビーチだけでなく、他のパルデア十景の写真が載せられていたこともあった。ここ最近だと100万ボルトの夜景やナッペの手が貼られており、出張が多い人なのかな?と思いつつ、仕事で体を壊さないか勝手に心配になっていた。
 結局何も思い浮かばず、今日は彼女になんて送ろうか…と考えていたら、スマホロトムがピコっと鳴ったので、パルッターを確認をする。


本文
男性にこんなことを聞くのもどうかと思いますが、恋ってしたことありますか?


 なんの脈絡もなく突然volanteさんから世間話を振られた。いつも自分から話しかけて会話が始まっていたので、これは少し嬉しい…と思いつつも、この話題そのものは凄く難しいところではある。
 約1ヶ月前に書かれていたvolanteさんの文章を読み返す。


『本文
私はこの年になっても恋をしたことがない。
でも、彼女に対しては、恋に似た何かを感じてしまうことがある。
そんな彼女を元気付けたいけど、私が彼女の日常に入り込むというのはあり得ない。』


 今、彼女に"実はチリちゃん本人でした"と伝えたらどうなるのだろうか。騙してたのかと怒られるのか、それとも受け入れてくれるのだろうか。
人の気持ちがわからない。いや、わからなくて当たり前だけど、こんなに必死に人のことを考えたことがないので、どうしたら良いのかわからない。
最初から真実を伝えていたらこうはならなかったのだろうか、プロフィールの年齢に偽りはないけれど、チリ本人だったというかはともかく、今更女だったと言って良いものなのだろうか…

 返信に困りすぎて、volanteさんの"恋ってしたことありますか?"の文章を眺めながら20分が経とうとしていた。
 …その時、スマホロトムがまたピコっという通知音を鳴らした。


本文
ごめんなさい、ペペロンチーノさん。
実は自分は男なんです。騙しててごめんなさい。


「はい??????」

 あまりに突然な暴露に、頭が混乱してしまう。なにが?え?男??ほんまに?
…しかし、なんてタイミングなのだろうか。追撃が早すぎる。いや、実際は20分経っているのだが。
 ここで自分まで"性別偽ってましたーネナベでしたー"なんて言うのはさすがに嘘っぽくならないだろうか?
 それはともかく、volanteさんが男だということは自分にとってはかなりありがたい話ではあった。割と好きを通り越して、完全に好きになっている…ような気がしているからだ。
 さっきの恋の話はともかく、性別の話であれば今がチャンスだ。かと言って、今ここで証明も無しに女だと言っても信用してもらえないかもしれない。

「せや、チリちゃんの指の写真貼り付けておこ」

 急いで四天王の黒い手袋を外し、テーブルの上に置いた。
手袋から解放された自身の指に力を入れてピンと伸ばす。自分で言うのもなんだがこの細くてスラッとした指はどこからどう見ても男性のものとは思わないはず…!
背景が映らないように気をつけながら、上から手の甲を撮る。

本文
ごめんなさい、自分も性別偽ってました。
男じゃなくて女なのです。
写真:添付1枚


 どう返ってくるかドキドキしていたのだが…
 その日volanteさんから返信はなくなり、次の日も、次の日も、次の日も…

volanteさんは、投稿そのものをやめてしまったようだった。



***

「チリちゃん、最近元気ないですの?」

 四天王の執務室。午前11時を少し過ぎた頃。
ポピーは手持ちのデカヌチャンの頭を撫でながら小さな声で話しかけてきた。珍しく四天王全員とオモダカさんがいるので気を利かせてくれているのだろう、こんなに小さいのに気配りのできるしっかり者のポピーの将来は安泰だなと心の中だけで称賛する。

「せやね、前に言ってた人と連絡とれなくなってん」

「まぁ、それは…辛いですの」

 リアルでは誰に言うこともできないので、こうしてポピーに言うことで少し心が落ち着いているという自分自身に複雑な気持ちを抱く。
 しかし、今でも自分の発言の何が悪かったのかわからない。女だったのが良くなかったのか、写真が嫌だったのか、それとも単に忙しくなってしまったからなのか。
 しつこい女だと思われたくなくて、何かありましたか? 大丈夫ですか? という返信の文章を打っては消して…を数回繰り返している。
 彼女…ではなく、彼とのやりとりはチリちゃんタグを読み漁ることより遥かに大切で、尊い時間だった。
顔も知らない相手に本気になってこんな気持ちになるのならば、恋なんてものは知らなくて良かったのかもしれない。
 人のことを本当に好きになることがこんなにキツいなんて知らなかった。


「え、あ、チリちゃん!泣かないで!」
「な、泣い…て…?」

 世界が歪む。パチリと大きく目を閉じると、両目から大きな涙の粒がこぼれ落ち、頬を濡らした。

「オモダカさんすみません、私なんだか情緒不安定のようなので、早めに昼休憩いただきます」
「…わかりました。事情は知らないですが、大丈夫ですか?」
「大丈夫ではないですが、どうにかします」

 ポピーに手を振って執務室を出る。
自身に与えられた私室へ行き、ベッドに寝転がる。タオルケットを頭まで被り、その中でスマホロトムを起動する。
前よりも使用頻度の減ったパルッターを開き、フォロー一覧からvolanteさんのプロフィールを見る。
"女性" "25歳" "食べ歩き" "可愛いポケモンが好き" "チリさんも好き"

「チリさんも好き??前にこんなん書いてあったかなぁ…」

 呼び方が何故かチリ"さん"となっているのが気になるが、多分これは最近追加されたプロフィールだと思う。連絡がつかなくなってから10回くらいはvolanteさんのプロフィールへは飛んでいる。だから、見間違えるはずはなかった。

「てことは、ログインはしてるんやな…でも、返信はしてくれないんか…」

 はぁ…と深いため息をつくと同時に、部屋のドアが叩かれる。遠慮がちなそれのおかげで、その音の主が誰なのかを知らせているようなものだった。

「アオキさんやな、どうぞ」

 もう、涙は乾いていた。もしかすると目が少し赤かったりするかもしれないが、泣いていることは先ほど全員にバレているので、今更隠しても仕方がない。

「…自分なんかに心配されても仕方ないかもしれませんが…どうぞ」

 ゆっくりと歩いて私のベッドの横に立ったアオキさんは、そう言って甘いカフェオレを渡してくれた。

「あ、ありがとうございます。珍しいですね、チリちゃんに甘い飲み物渡してきたのアオキさんが初めてかもしれないですわ」
「そうですか…あ、もしかしてブラックの方がお好みでしたか?」
「いや、チリちゃんこう見えてもブラックより甘い方が好きなんでありがたいです」
「良かったです、では」

 それだけ言うと、アオキさんは一礼してからすぐさま部屋の出入り口へと歩き出した。今までこんなことはなかったのだが、アオキさんなりに私の事を心配してくれたのだろう。

「…口下手というかなんというか、でも…ありがとう」

 砂糖の甘さとミルクのコクがなんとなく優しく感じられて、ゆっくりと味わいながら心の中でアオキさんに何度も感謝した。

「…ごめ………い」

 部屋を出ていく瞬間、アオキさんが何か言ったような気がしたけれど、いつも通り声が小さかったせいでこちらの耳に届くことはなかった。



***

「先ほど、四天王に密着!という番組の第二弾がハッサクさんに決まりました。チリとハッサクさんは、別室で前回の動画を確認してきてください」

 前回、私が出た時の企画が好評だったらしく、第二弾の撮影が決まったと告げられたのは昼休憩後すぐのことだった。
 と言っても、あの番組の時に自分がやったことといえば…面接室の机を端へ避けて、机があった場所あたりに立って、ポケモンリーグの出入り口辺り…つまり自分の真正面から向けられているカメラを意識しつつ、番組側が用意したゲストとただいつも通りポケモン勝負をするだけだった。
 自身の後ろにはオモダカさん、ポピー、アオキさんが立ってその様子を見守っており、あまり知名度のないアオキさんがリーグ側のスタッフだと言われているのを見て笑った記憶がある。
ハッサクさんはこの時アカデミーでの授業があったため出演していなかった。


「小生がチリの後にこれをやるのは…盛り上がりに欠けるような気がしないでもないのですが」
「大丈夫やって!ほらここ、相手のゲストが盛り上げてくれてるやろ?基本的にチリちゃんらはピエロみたいなもんや」
「うーむ、それはそれでどうかと思いますが…」

 しかし、画面越しに自分の姿を見るのはなんとも妙な感覚であり、なんだか恥ずかしくもある。

「基本的には真正面のカメラを意識しつつ、ゲストの両横のカメラもたまに見たりするとええですよ。番組見ててわかるとおもいますけど、チリちゃんらがそんなに大きく映ることはない…ので……」

 そう言って、ふと思い出したことがある。
自分はこの時、番組や!第一弾や!気合いや!!と思って、ドオーの髪飾りを使って髪を結んでいたはずだ。
だが、画面を見ても自身の髪につけられているドオーの髪飾りは確認ができない。
モンスターボールを投げる時にその場でくるりと回るクセがあるのでその時に見えるのだろうかと思ったが、ゲストの人ばかりが映されていて、そもそも自分が回るシーンは全く映らない。
 …そんなわけない、と思いつつそのまま見続けたが、ドオーの髪飾りは画面に映ることなく番組が終わってしまった。

「…ハッサクさん、仕事と関係ないんやけど、今の番組見ててチリちゃんの髪飾りって見えた?」
「え?髪?意識して見てなかったですが、そもそもチリが映ってても小さすぎて小生には全く…」
「そう、ですよね…」

 ハッサクさんには悪いが、今は番組のことを考えることができなかった。
仕事だということも忘れてスマホロトムを取り出し、パルッターを開く。何度見たかわからない、相変わらず何も更新されないvolanteさんの過去の文章を引っ張り出す。


『本文
#チリちゃん
四天王に密着!という番組にチリちゃんが出ていた。
髪留めがドオーになっていて気合いが入っているなと感じた。相変わらずとても綺麗だった。
バトルもいつも通り指示が的確で、自分もああなりたいと思った。』


「…何か、ありましたか?」
「あの…これ…いや、なんでもないです。番組見たし戻りましょうか」

 1つの可能性を考えたら、volanteさんの文章をハッサクさんに見せることができなかった。
 執務室へ戻って、とある人に今すぐ問い詰めたいことがある。ハッサクさんを置いて足早で執務室へと戻ったのだが、そこにいたのはポピーだけだった。

「…アオキさんとオモダカさんは?」
「アオキのおじちゃんは早退しましたの、珍し「わかった!ありがと!じゃあチリちゃんも早退します!!」

 くるりと引き返すと、ちょうどそこへハッサクさんがやってきて、神妙な面持ちでうんうんと頷いていた。

「…よくわからないですが、チリはアオキに急ぎの用があるんですね。では小生は番組の流れを考えてポケモンの編成をシミュレートすることにします」

 トップには誤魔化しておきますね。とウインクをしながら言うと、柔らかな優しい笑顔で送り出してくれた。一気に2人も早退するなんて明らかにおかしいはずなのに、何も聞かないでくれるハッサクさんの気遣いが今はとてもありがたかった。

 荷物を持って、急いでポケモンリーグから出る。
そらとぶタクシーを待ってる間に、volanteさんに対して文章を打つ。
どんな文を送ろうか、嫌われないためにはどうしたら良いかとあれだけ散々悩んでいたのに、すんなりと打ててしまった。


本文
早退されたそうですが、自宅におりますか?


約30秒ほどで、スマホロトムがピコっと鳴る。


本文
自宅です。覚悟してます。


「なんの覚悟やねん…」

 澄み渡った青空の向こうからこちらへとやってくるそらとぶタクシーの姿が見えた。
 その時、ふと気になってvolanteの意味をスマホロトムで検索すると、これはどこか遠い世界の言葉らしく、意味は"飛ぶ"だとか。

「チリちゃんは覚悟できてないけどなぁ、でもなんだろ、嫌な気分ではないなぁ」

 そらとぶタクシーに乗り込むと、またまたvolanteさんのプロフィールを眺めていた。
数時間前まであった、"チリさんも好き"の一文が消えていて、なんともいえないモヤモヤ感が胸いっぱいに広がっていた。

「こんな早くから珍しいですね、テーブルシティですか?」

 馴染みのあるそらとぶタクシーの運転手にそう言われるが、大きく首を振る。

「チャンプルタウンまでお願いします」



***

「…どうぞ」

 初めて訪れるアオキさんの部屋に多少緊張しつつ、普段のアオキさんくらいの小声でおじゃましますぅ…と言って、靴をきちんと揃えて部屋へと入る。
 アオキさんの後を追いリビングへと通されると、生活感のあまり無い…いたってシンプルな白い部屋の中で、彼のポケモン達が色とりどりに放たれていた。

「…オドリドリ」

 彼女、いや、彼の投稿に出てきたオドリドリが頭に浮かぶ。こっちの視線に気付いたのか、ぱちぱちスタイルのオドリドリが、ぴぃぴーぃ!と楽しそうに鳴いている。
 アオキさんに促され、紺色をした2人掛けのソファに座る。2人掛けだからと言ってアオキさんは隣に座るわけでもなく、彼は私のすぐ近くでこちらを向きつつ正座をしていた。

「……」

「……」

 重苦しい空気が流れる。
オモダカさんから説教されている時よりも遥かにずしりとくる。何から聞こうか、何から話そうか。ここまで来たのに頭の中で話がまとまっておらず、手のひらにはじわりと汗が浮かぶ。

「…どうして、自分だと?」

この静寂を破ったのはアオキさんの小声だった。

「え。あぁ、あの…四天王に密着のテレビを見返したんよ。そしたらドオーの髪留めなんてテレビには全く映ってなかったんや」
「…なるほど、そうですか」
「はい、そうなんです」

 毎日のように会うただの同僚との会話のはずなのに、今日だけは何もかもが違っていて。
あれだけたくさんの熱いメッセージを書くような人と目の前にいるアオキさんの姿がどうにも結びつかず、胸のモヤモヤが晴れない。

「…本当にすみませんでした」

 アオキさんが正座したままこちらに大きく頭を下げる。それは所謂土下座というやつで、そんなことされたことがない私は一瞬停止してしまった。

「…は。いやいや!なんで?やめてやアオキさん!」
「気持ち悪かったでしょう。本当にすみません。…貴女が自分に指の写真を送ってきた時は冷や汗が出ましたよ」
「…あの写真でチリちゃんだって気付いたん?」

 あの時撮った写真を見返す。部屋の背景が映らないように、テーブルにピタっと手のひらをくっつけて上から撮られた写真。
 そして、気付く。

「…四天王の手袋、めっちゃ映っとる…」

 あまりにも初歩的なミスだった。背景を映さないようにという事ばかりに気を取られてこんなアホなことをしていたなんて、頭を抱えたくなるレベルで恥ずかしい。手の甲のマークもバッチリ写っており、四天王であるアオキさんが気付かないわけがなかった。

「…アカウントを消そうとも思ったんですよ。でも、消せなかった。貴女とのやりとりも楽しかったですけど、何より自分の投稿を消すのがなんだかもったいなくて」

 彼の書いた告白のような文章を思い出す。他の人よりも自分のことをわかってくれてる彼の投稿の1つ1つが私にとっては本当に宝物のようだった。

「…アオキさん。シンプルに、1つだけ聞きたいことがあります」
「…はい。なんでもどうぞ」

何かを諦めているような、半ば投げやりな言い方でアオキさんは頭を下げる。

「アオキさんの投稿に、嘘偽りは無いですか?」
「…ないです。性別と年齢は貴女を参考にして偽りましたが、投稿そのものは何1つ嘘はついておりません」
「…そうですか。わかりました。じゃあチリちゃんとアオキさんお付き合いするってことでよろしいですか?」
「は?」

 彼のいつもの無表情が崩れ、大きく目を見開いてこちらを見る。目を合わせるといつもの無表情にシフトチェンジして、少しだけ俯いて何かを考え始めてしまった。

「…えっと、チリちゃんのこと好きなわけではないと?」
「逆に聞きますけどチリさんは自分のこと好きなんですか?」

 無表情には戻ったが、いつもよりも早口で話すアオキさんは妙に新鮮だった。

「いやな、ネット上のアオキさんおるやん?読み方わからんけど、チリちゃんあの人の事好きになってたんよ」
「…え?自分、女性でやってましたよね?」
「うん。でもな、ポピーに言われたんよ、女性で何か問題あるの?って。確かに、と思って…」
「それはまぁ…確かに、言われてみれば…」

 きっとアオキさんもあの時の自分と同じで、盲点だった…!と思っているのだろう。お互いポピーのような柔軟な考え方を取り入れなければならないですねと心の中でアオキさんを小突いた。

「…アオキさんの投稿の1つ1つが、チリちゃんには本当に嬉しかったんです。みんなが書いてくれる文章よりも、アオキさんの投稿の方がチリちゃんのこと本当にわかってて、涙が出るくらい嬉しくて。こんなに想ってくれて、わかってくれて、夕焼けの写真を貼ってくれて…」

 普段口に出すことのない、自身の気持ちを吐き出す。切なくて、嬉しくて、でも連絡がとれなくなって悲しくなった日々を思い出す。

「つい最近気付いたんです。この気持ちが恋なんだなって。アオキさん、いつだか聞いてきましたよね、恋のこと。その時はまだ自分でもよくわかってなくて答えられなかったんです。アオキさんはどうして恋のことを聞いてきたんですか?」
「…それは」

 言いづらそうに視線を外すアオキさんの姿はいつもよりも小さく見える。
 ソファから立ち上がり、私はアオキさんと膝をピッタリと合わせるようにして正座をした。
 意を決して、こちらを全く見ようとしない彼に真正面から抱きつく。

「え、チリさん?何を…」
「…うん。嫌じゃない」

 数時間前までただの同僚であったアオキさんを抱きしめても自分の心に違和感がなかった。ネット上の彼と目の前にいるアオキさんがゆっくりと結びついて、むしろ愛おしさすら感じられる。彼から送られた数々の告白を脳内に駆け巡らせ、アオキさんの耳元で囁くように言葉を発する。

「…あれだけ熱い告白してくれてんのに、その気持ちが恋かどうかわからんの?」
「…いや…えっと…」
「こんなにチリちゃんのことわかってくれてる人、アオキさんしかおらん。お願いだから付き合ってください…」

 拒否されたらどうしようかと、心臓がバクバクと激しく動く。
5秒ほど待ったその時、背中の辺りにふんわりと大きな手が添えられ、何かを決心したかのように一気に引き寄せられた。

「…本当に、自分で、いいんですか…?」

 相変わらずの小さい声だった。でも、彼から肯定の言葉を聞けたことが嬉しくて、一気に涙が出てきて止まらなくなる。
最近泣きすぎてるなぁと思いつつ、鼻をすする。それに気付いたせいか、アオキさんは私の両肩を持って体を引き離してきた。

「え、あ…泣かないでください」
「今回のこれは嬉し泣きだからいいんです!でも今日の午前に泣いてたんは、自分が急に連絡してこなくなったせいやで」
「…あぁ、やっぱりそうだったんですね。本当にすみませ…」
「アオキさん謝りすぎや。結果オーライやないですか。チリちゃん今めっちゃ幸せなんですけど、アオキさんはどうなんですか?」

 私の両肩に手を置いたままのアオキさんが、無表情のまま私の体を抱き寄せる。小さな声に見合わない、しっかりと男を感じられるその力に少しドキっとしつつ、厚みのある背中を抱きしめ返した。


「貴女の日常に自分がいられること、光栄に思います。貴女の心を落ち着かせられる場所を作れるように努力します」
「…嬉しいけど、固すぎやろ。もっとシンプルにいきましょ?」

 こつんとアオキさんのおでこに自身のおでこをくっつける。察してくれるか少し心配だったが、アオキさんの顔がゆっくりと近付いてきて、ほんの少し唇に触れるだけのキスをしてくれた。
 すぐさま顔を背けて「すみません、恥ずかしすぎて」と言って顔を赤くするアオキさんの姿を見て、この先、この男はどれだけ自分の心を乱してくれるのだろうかと思いつつも、それが楽しみで仕方がなかった。




コメント

  • ほうほう
    2023年4月23日
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  • みーこ
    2023年2月1日
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  • 透夜@周防国審神者
    2023年1月20日
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