default

pixivは2023年6月13日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴

この作品「チリちゃん検定」は「アオチリ」「二次創作」等のタグがつけられた作品です。
チリちゃん検定/松ぼっくりの小説

チリちゃん検定

8,188文字16分

チリちゃんに告白して両思いだと判明して浮かれていたアオキさんに突如降りかかる『チリちゃん検定』の話

2人の出身地捏造、チリちゃんの家族関係の捏造があります

相変わらず暴走機関車チリちゃんと制御できず振り回されるアオキさんの二人です

1
white
horizontal

 終業後の面接室、面接官モードで手を組むチリの対面で、アオキはどこから持ってきたのか分からない備品であろう一人掛けの机と椅子に座り、『チリちゃん検定』とだけ書かれた紙を凝視していた。
「……あの、」
「試験前ですよ。私語は厳禁です。ちょうど十八時になったら開始しますので、あと数秒お待ちを」
 時刻は十七時五十九分。ここがどういう場所で、目の前にある紙はいったいなんの紙で、というのが分かるまであと一分ほど待たないといけないのか……とアオキは項垂れた。
 アオキは先日、チリに告白した。ずっとずっと隠しておくつもりだったのだが、もう抱えきれなくなったのだ。もういっそ気持ち悪いと思われてもいい、エゴの塊でしかないこの想いをぶつけ、忘れてくださいと、そうするつもりでチリに好きだと告げた。するとまさか、チリから返ってきたのは「チリちゃんも好き」だった。年甲斐もなく浮かれ、今日からチリさんと恋人同士なのか、などと寝ぼけたことを思っていた。——のが、いけなかったのだろうか。
 カチ、と音が鳴り、時計が十八時を示した。チリは居住いを正すとアオキの目を眼鏡のレンズ越しに見据えて口を開いた。
「今から、チリちゃん検定を受けていただきます。これはアオキさんとチリちゃんがこれからどうしていくのか、の参考にしていただけると幸いです。また、それぞれの不安はここで解消できたらと思っております。
 そちらの紙面にはチリちゃんのことに関する質問がいくつか書かれていますのでお答えください。全て選択制です。では、どうぞ」
「いやあの、状況があまり飲み込めなくて、」
「要するにチリちゃんに関するクイズにお答えいただくような形です。制限時間はありませんので、どうぞ」
 とにかくこの紙に書かれてある質問を答えろ、とそれ以外は何も話そうとしないチリに少々不満を抱きつつ、アオキはぺらりと紙を表に返した。ざっと二十問ほど書かれているそれを処理しきれず、キュ……と目を閉じて通し番号が振られた一つ目を読んだ。
『チリちゃんの出身地は』
 選択肢は四つ。コガネ、エンジュ、フスベ、テーブル。これは簡単すぎるのでは、と思いながら『コガネ』に丸をつける。初対面の自己紹介でコガネ出身ですと大きな声で言っていたのをよく覚えている。この調子でいけばすぐに終わるのではと思いながら、二問目。
『チリちゃんの体重は』
 五十キロ、四十五キロ、四十キロ、どんな姿でも好き……女性の体重が大体どれくらいなのかなど、アオキには見当もつかない。そもそも気にしたこともない。チリは細身だが身長はあるし、あの投球フォームを見る限り体幹もしっかりしているようで筋肉はあるのだろう。……だとしても分からない。ここはやはり、一番最後の『どんな姿でも好き』を選ぶのが良いのではないか、と考えてアオキは一番最後のものに丸をつけた。
 三問目、『チリちゃんの得意料理は』。
 これに関しては本当にわからない。選択肢はパエリア、たこ焼き、煮物、料理はしないの四択。わざわざ『料理はしない』を入れているくらいだからこれなのかと思ったが、もし間違っていたらとてつもない勢いで怒られそうな気もするため、消去法で『たこ焼き』を選ぶ。
 四問目、『チリちゃんの趣味は』で、選択肢はギター、映画鑑賞、フットサル、ショッピング。これに関しては「ギターはバレーコードが無理でイラッとしてやめた」と前に話していたし、映画鑑賞も「映画自体好きは好きやけど、二時間も三時間も拘束されてんの無理で」と語っていたし、フットサルは「チリちゃんサッカーめっちゃ苦手」と言っていたから消去法で『ショッピング』である。
 五問目、『チリちゃんの兄弟構成は』。
 選択肢を見なくても分かる。これは以前話したことがあった。『兄一人』に力強く丸をつける。
 六問目、『チリちゃんの初恋は』。
 選択肢は幼稚園の頃、小学生の頃、ティーンの頃、今の四択。いやいや今なわけないだろう、どんな選択肢だと心の中でツッコミを入れた。こういった話をチリさんとしたことは一度もない。男なら初恋をティーンの頃に経験した者も一定数いるだろうが、女性はもう少し早いという勝手なイメージがアオキにはあった。そんな思考もあって、アオキは『小学生の頃』に丸をつける。
 七問目、『アオキさんの見た目で特に好きなのは』。
 キュ……と目を瞑った。己の見た目で誇れるものなど何もない。選択肢は身長、顔、手、肩幅。どういう選択肢だと思いながら、アオキはどれも違う気がしてハァとため息をつく。全てにおいて平凡、どれにも自信はない。身長だって、確かに周りの人と比べれば高い方なのだろう。しかし猫背のせいで全てが台無しになっているし、顔も平凡。かっこいい等言われたこともない。手も身長のわりにそこまで大きいという訳でもないし、肩幅もハッサクと比べてがっしりしている訳でもない。かろうじて、消去法で……そんな言い訳をしながら『身長』に丸をつけた。
 八問目、『アオキさんを好きになったきっかけは』。
 恥ずかしさやら居た堪れなさで手で顔を覆う。アオキの告白に頷いてくれた時点で、チリがアオキに恋に落ちたきっかけは必ずあるのだろうが、それを知るのが恥ずかしくてたまらない。選択肢は一目惚れ、初めてのバトル、さりげなく助けてもらって、告白されて。一目惚れはまず無い。それと、告白した時のチリの返答を考えると告白されて、というのも考え難い。ということは初めてのバトルかさりげなく助けてもらってのどちらかになる。……そういえば、とアオキは思い至る。チリに告白する前、よくアオキに向かって「アオキさん優しいなぁ」と言っていた気がする。それならば、とアオキは『さりげなく助けてもらって』に丸をつけた。
 九問目、『チリちゃんの理想は』。
 選択肢は友だちみたいな関係、いつまでもラブラブ、刺激のある関係。これから交際関係になるアオキとどのような関係性を築きたいか……という問いであろう。選択肢の後ろ二つを望むチリをあまり想像できず、ひとつ目の『友だちみたいな関係』に丸をつけた。
 十問目は『チリちゃんの理想のプロポーズは』。
 これは、この関係は結婚前提だという無言の圧だろうか。アオキも元よりそのつもりであった。というよりも、アオキの歳で遊びで恋人関係を結べるほどの余裕はアオキには無かった。だがしかし、チリの年齢を考えると結婚して身を固めるよりもまだまだ遊びたい年頃であろう。だからこそ結婚前提の気持ちがあることはチリには伏せていたのだが、この設問を見てアオキはほっと息をついた。……安心できた。選択肢は夜景の見えるレストラン、テーマパーク、家のリビング、ベッドの中。やはり女性は夜景の見えるレストランでスタイリッシュにプロポーズされるのが嬉しいのだろうか。はたまた、チリの年齢を考えるとテーマパークも嬉しいのだろうか。テーマパークの中にあるお城の前で、なんて話を耳にすることがあった。アオキとしては、家のリビングが一番しっくり来ていた。やはり肩肘が張ってしまう場所も特別感があって悪くはないのだが、結婚とは二人の日常の積み重ねである。スタートラインも日常にするのが、その方がアオキらしい気がしていた。ベッドの中、というのはどういう状況なのかいまいち汲み取れなかったのだが、そういう時に、という解釈でいいのだろうか。ともかく、アオキはこの質問についてはどれだけ考えても分からなかったため、チリもアオキと同じ価値観であればいいなと願いを込めて『家のリビング』に丸をつけた。
 十一問目は、『子どもは何人欲しい』。
 これについては、アオキは何人でも、そもそもいてもいなくてもどちらでも良かった。妊娠、出産、どちらも男性であるアオキに負担は無い。全て、チリの身に降りかかる。チリが望むのであればアオキはその希望に応えるのみであった。……そもそも年齢的にどうか分からないのだが。
 選択肢は一人、二人、三人、子どもはいらないの四択。チリはどうなのだろうか。アオキはんー、と頭を抱えた。いくら考えても、この問いに関しては答えは出ない。なんとなくという理由で『一人』に丸をつけた。
 十二問目は『エッチは週に』。……選択肢が三日、五日、七日、一日。七日は確実に無理である。アオキの体力的にも、業務的にも。五日もキツい。腰がお亡くなりになってしまう。一日……と言いたいところであるが、アオキとは違いチリは年若い。となると、週一は物足りなくなってしまうのか……? いや、女性がどうなのかが全くわからない。しかし、三日も多いような気がしてしまう。この問いも考えたところで答えは出ない。三日と一日に答えを絞り、天の神様の……と古の呪文を心の中で唱えた。そして、『三日』に丸をつけた。
 十三問目は『アオキさんと一番行きたい場所』。選択肢は宝食堂、マリナード、シンオウ、アローラの四択。アオキは自分の出身地の名前が入ってるのを見て、自然と頬を綻ばせた。これについては自惚れても良いのではないかと思う。アオキは自身が大好きなソノオの花畑と、シンジ湖の絶景をいつかチリに見せたいと思っていた。同じ気持ちであってほしいと、願いを込めて『シンオウ』に丸をつけた。
 十四問目『アオキさんが浮気したら』。これは絶対に無いと断言できる。アオキはチリを手放す気は一ミリたりとも無い。チリの方から別れたいと言い出した時は、みっともなく縋ったりすることなく全てを受け入れようと決意してはいるが、自分から切り出すことは絶対に無い、のだが。選択肢は怒る、泣く、諦める、気にしない。どちらかといえば感情的になりやすいチリのことだ、気にしないわけがないだろうとアオキは考える。だからと言って泣く姿も、すっぱり諦める姿も想像がつかなかった。とすれば、やはり『怒る』であるか。そう思い、アオキは丸をつけた。
 十五問目『チリちゃんのことどれくらい好き』。先程までとは違い、一から十まで番号が書いており、十段階で評価しろという文言が記載されていた。これは『チリちゃん検定』とは関係がないのでは、とツッコミたくなる衝動を抑え込み、ここは自信満々に十に丸をつける。舐めてもらっちゃあ困る。アオキはおじさんと呼ばれる年齢にして、歳下の同僚に告白するほどチリのことを愛しているのだ。
 十六問目は『チリちゃんはアオキさんのことをどれくらい好きか』。こちらも十段階評価の番号が記載されている。これについては、チリの気持ちを疑っているわけではないが、アオキとしてはまだまだ不安が勝っている。どうなのだろうか、さすがに五は超えているはずである。だからといって十にするほどの自信はなかった。どうすべきか、アオキはうんうん悩みながら、八のあたりに丸をつけた。これならば妥当である。そうに違いない。
 十七問目は『もしチリちゃんが先に死んだら』。順番的にはアオキの方が先なはずであるが、人間の命はいつどこでどのような終わりが来るかは誰にも分からない。もしも、仮に、チリの方が先立ったならば。この設問からまた選択制に戻っており、選択肢は忘れないでほしい、他の人と幸せになってほしい、後を追ってほしいの三つ。アオキが先立つ側であれば、もっぱら『他の人と幸せになってほしい』であるのだが、チリについてはよく読めない。まぁしかし一般的には……そう思い、アオキは『忘れないでほしい』に丸つけた。
 十八問目『アオキさんがもし先に死んだら』。……順番にいけば、こうだろう。そしてこれについてをチリが入れているということは、アオキが死ぬまで添い遂げてくれるということなのだろうか。寿命で死ぬまで生きてやるつもりだぞ、とふっと柔らかく息をついた。選択肢は忘れる、忘れない、後を追いたい。チリは強く、自分の力で確かに歩み続けられる女性だ。後を追うことはまず無いだろう。また、アオキがそんなことを望むはずがないことも理解しているはずである。残る選択肢は忘れる、もしくは忘れない。アオキの願望としては、アオキのことなど忘れてほしい。歳の差を考えれば、アオキがどれだけ老いて死んだとて、彼女にはまだ希望があるはずだ。自分のことなんてさっぱり忘れて、他の誰かと幸せになる道を歩んだっていいし、一人でのんびりと幸せになる道を歩んだっていい。アオキのことは、本当にたまに、命日くらいにでもほんの少し思い出してくれれば僥倖である。アオキはそんな願いを込めて『忘れる』に丸をつけた。『る』にバツをつけて、『て』に変えて。
 十九問目、『チリちゃんが辛くなってる時は』。選択肢は話を聞いてほしい、そっとしてほしい、黙って抱きしめてほしい、気分転換させてほしい。これについてはどれが正解なのだろう。どれも正解な気がするし、どれも間違っているような気もした。彼女の芯の強さを考えれば寄り添うよりも彼女のバネの強さを信じる方が良いのだろうし、彼女の危ういところを考えれば寄り添う方が良いのだろう。だが、誰に対しても弱みを見せたがらないチリのことだ。寄り添うよりも、強さを信じることの方が良いような気がしたて、アオキは『そっとしてほしい』に丸をつけた。
 二十問目、最後の設問である。『アオキさんのこと』とだけ書かれていて、選択肢は四つとも全て大好きであった。これはもう、自惚れて良いのだろう。全てを囲むように大きな丸を一つ書く。
 そして全ての設問を終え、チリと目線を合わせた。
「……終わりましたか?」
「ええ、終わりました」
「では、回収します」
 チリがアオキの回答を回収し、向かい合わせに座り直すとその紙をじっと見つめた。彼女の大きくて赤い瞳がくるくると動き、文字を追っている。そうして息を吐くと、赤ペンを取り出して丸つけをし始めた。無表情のまま淡々と作業をするチリに、どうなんだと内心ヒヤヒヤしながらも無言で待つ。かつてないほど長い三分が過ぎ、チリが事務椅子に座ったまま器用にじりじりと近寄ってきた。
「正解数六個」
「え、」
 二十問中六問……? これは恋人の座を撤回されるのでは、とアオキの背に冷や汗が流れる。
「一問目、出身地合ってる。
 二問目、残念、チリちゃんの体重は四十五キロです。なんかあった時のために覚えといてな」
「……じゃああの選択肢は」
「アオキさん選ぶかな思って」
「……」
 キュキュ、とペンが走る音がする。三問目の得意料理の設問で「料理はしません」と言ったチリにやはりか、と思ったのは秘密である。四問目の趣味と五問目の兄弟構成の二問は正解していた。過去にチリが語っていた通りだなとぼんやり思う。
「六問目、これも残念。チリちゃんの初恋は今です」
「は!?」
「なんやねん、デカい声出るやんか。なんべんでも言うたる、チリちゃんの初恋は今です」
「はぁ? それ、は、」
「うん、アオキさんが初恋」
「え、」
「だからぁ、アオキさんが初恋やねんて」
 チリの衝撃の告白にアオキは開いた口が塞がらなかった。こんなおじさんに、何もこんなにも可愛らしく美しい人が、と浮かんではアオキの思考の海に沈んでいく。
「なんで、」
「まぁそれはあとの問題でわかるやろ。とりあえず、アオキさんが初恋。よろしい?」
「……は、」
「返事!」
「はい、」
 チリの勢いに押されて思わず返事をするが、未だアオキは思考回路を整えることができずにプスプスとシステムエラーを起こしていた。次はーと声を上げたチリが、アオキの好きなところの設問で顔に丸をつけるのを、なんでやねん……と思いながら見つめていた。
「ほんで、好きになったきっかけは一目惚れです。顔がタイプ、背格好もタイプ、こんなかっこええ人おるんやって思って! バトルも強いし仕事もできるし、丁寧で優しいしマメやし! チリちゃん今まで告白されてばっかでこう、自分から好きになるみたいなんが分からへんかったんやけど、アオキさんが初めて教えてくれたんよ」
 にひひ、と笑い声をあげてこちらを見るチリが可愛らしくて、アオキはもう何も考えずチリの頭に手を伸ばしていた。ぽんぽん、と撫でるとチリが目を見開き、その次の瞬間にはヘラ、と嬉しそうな顔で元々垂れ目気味な目が更に垂れていた。
「はい次、チリちゃんの理想の関係はいつまでもラブラブ! 初めて心から好きになった人とお付き合いできるんやもん、そんなんラブラブでいたいに決まってる。
 ほんで次、理想のプロポーズはピンポーン、大正解! チリちゃんも家のリビングがええです」
 理想のプロポーズが一致していたことにアオキは安堵した。未だ初恋の衝撃からは完全には戻って来られていないのだが、すこし余裕が出てきた。アオキは、特別なものよりも日常の延長線を大切にする価値観が一致していて嬉しかった。
「はい次、子どもは二人欲しいです。まぁでも授かりモンやからできへんくてもええし、養子をもらう事も考えてます!
 ほいで、エッチは週に五日がええです」
「子どもの件はそうしましょう。……ですが、せ、性交が五日というのは、その……自分も体力が持ちませんし」
「ええよ、チリちゃんが乗るから」
「の……っ!?」
「もー、それくらい一緒におりたいってことやから、そんな気にせんでええの! 次!
 アオキさんと行きたい場所、シンオウです大正解!」
「自分の、」
「そう、アオキさんの生まれたところ。また連れてってな」
 可愛く微笑んでそう告げるチリに、アオキもゆっくり確かに頷く。良い場所だから、ぜひ。そう小さな声で伝えると、チリはさらに嬉しそうに笑った。
「次チリちゃんのことどれだけ好きか、十段階中マックス、よし!
 その次、チリちゃんがアオキさんのことどんだけ好きか……ここまできたら、分かるやんね?」
「十、ですね」
「はい、そうです。侮らんといてな。
 はい次、もしチリちゃんが先に死んだら。……これはな、チリちゃんのこと忘れてほしないなぁとは思うけど、それ以上にアオキさんには幸せになってほしい。やから、そのためにチリちゃんのことを忘れる必要があれば忘れてほしい」
「それ、は、」
「アオキさんも同じやから、この次のんで忘れるに丸つけたんやろ。ご丁寧に忘れて、に変えよってからに」
 なはは、と笑うチリに口を噤む。そう、そうだ。置いていく側はいつだって、その相手の幸せを祈る。チリが言いたいこともそうなのであろう。アオキだってそうだった。
「まぁ、チリちゃんもアオキさんが先やったら忘れたないんやけどな!」
「……なら、お互いに忘れずに幸せになりましょうか」
 アオキがそう伝えると、チリが口をムズムズと動かして変な顔になった。そういうとこがな、等ともにょもにょ何か言っている。アオキが何かあったか尋ねようとすると、次! と遮られた。
「チリちゃんが辛くなってる時は、そっと抱きしめてほしいです」
「……はい」
「何も言わんでいいから、ぎゅってして」
「……はい」
「ん。ほいで最後、正解!」
 青いペンで、最後の設問のところに大きな花丸をぐるぐると書いた。チリはアオキの方に向き直ると、かけていたメガネを外して椅子に座ったままアオキに抱きついた。
「チリさ、」
「アオキさん、チリちゃんが好きやって言った時、全然信じてくれてなかったやろ。やからチリちゃん検定作ってみました。どうでした? チリちゃん、思ってた以上にアオキさんのこと大好きやろ?」
 チリがアオキの首元に腕を回し、力をキュッと込めた。アオキもそっと腕を伸ばし、おそるおそるチリの背に触れると、チリは嬉しそうにんふふ、と微笑む。信じていなかったわけではない。だが、チリはアオキが思う以上に、アオキのことを愛してくれていた。
「……はい。それと同時に、チリさんのことを大事にしたいなと、さらに身が引き締まる思いでした」
 耳元でチリがくふくふと上機嫌に笑う声がする。
「これからよろしゅう、アオキさん」
「ええ、こちらこそ」

end.


コメント

  • げん
    2023年11月5日
センシティブな内容が含まれている可能性のある作品は一覧に表示されません
人気のイラストタグ
人気の小説タグ