2023年、AIの影響で『絵に求められる事』が激変してきている話。
2023年10月28日 07:15・全体公開
今年僕は、PIXIV高校生イラコン2023の審査員を
務めさせて頂き、審査会で1000点を超える
作品を審査させて頂きました。
『これは高校生が描いたとは思えない!』
『上手すぎる!!』
そこでは毎年このような感想を耳にします。
そして例年、すごく上手くて技術的に
とても優れている作品に賞が贈られている。
そういう印象をもっていました。
ただ、2023年の審査会は、
少し違う様相を呈していました。
『絵』を志す若者の変化。
絵を観る側の審査員の見方の変化。
その両方が起きているような感じが
したのです。
『あ!なんか空気感が変わった...!』
僕は絵をとりまく環境や評価軸が
丸ごと変わるような.....
そんな『気配』を感じました。
かなり大事な事だと僕は思うのですが、
一方で、これは僕個人の感想ではあるので
確実にこうなる!といったような
確定的な事は言えません。
なので、リテラシーの高いFANBOXの皆さんに
まずは先んじて伝えてみようと思い、
記事を書いています。
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●上手さの価値が下がった
僕がこの審査会で感じた、一番衝撃的な感覚は
『上手さの価値が下がったな....!』
という感覚です。
そしてこの変化は、今年だけにとどまらず
僕の予想ではどんどん顕著になって現れて
いくように感じるんです。
もちろん、絵を通して、他人に的確な情報や
感動を伝えるには、一定以上の技術が必要です。
そういう意味において、賞を取った絵は
非常に『上手い』作品だという見方も
出来る事は間違いありません。
これは大前提です。
なので、最低限の技術を上げる事。
上手くなる事の重要性は
あいかわらず変わらないのですが、
もっともっと技術を追い求めよう!という
技術に固執したような感じ
はなくなった気がしました。
具体的にいうと、
2021年、2022年までは、流行りの絵柄を
上手に取り入れて、その上でより上手く
美しいビジュアルを作り上げようとする
エネルギーをものすごく感じました。
ですが2023年にはいって、
そういった分析的なアプローチよりも、
一見してどんな作品に
影響をもらったのかわかりにくいような
オリジナリティーに溢れた作品がぐんと
増えたように感じました。
受賞した作品も、そうでなかった作品も
です。
そして何より僕が『え!!』と驚いたのが
作品を描いた側ではなく、作品を見る側。
つまり審査員の空気感の変化です。
今年の審査員の賞の選び方として、すごく
印象にのこった言葉があります。それは....
『このイラストは凄く上手くて、自分が
選ばなくても企業賞に選ばれるだろうから
自分は、まだ拙いけれど素直に感動できた
作品に賞を贈りたい...!』
といったような言葉です。
全員が全員同じ基準で賞を選んだわけでは
ないのですが、そういう目線で2023年の
審査員賞の選出作品を見てみると、
『オリジナリティー』に重きをおいたような
作品が並んでいるような気がします。
作品を作る側のみならず、評価する側にも
変化が起きている。
これはとても大きな変化だと感じました。
上は、賞には選ばれなかったけど
僕がすごく印象に残った作品。
『結ぶ』というテーマから、自分自身の生死感
にまで繋げている。目を見張るような上手さは
ないまでも、モチーフの置き方や何気ない
キャラクターの表情から、命について考え
させられるとても深い作品。
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●大切なのは『自分から染み出す何か』
なぜこのような変化が起きているのか。
僕の考えは『AI』の影響がかなりあるように
思います。
AIは『上手い絵を大量に』生み出すことが
可能です。
すでに皆さんも、多くの画像生成AIが
生み出した絵を見ていて
嫌というほどご存じだと思います。
これは単純な市場の論理ですが、沢山溢れて
いる物、希少性が無い物の価値は下がります。
同じ鉱物でも、その辺に落ちている石が
タダ同然なのに対して、ダイヤモンドはとても
希少なので、高値で取引されるのと一緒です。
AIが、上手い絵を無限に、大量に生み出せる
世の中になったという事実を、この考え方に
当てはめるなら、
これからどんどん『上手いだけの絵』が
評価されなくなるという僕の予想も、
ある程度信ぴょう性があると思います。
では、これからの時代の絵には何が
必要になってくるのかというと、
僕が思うにそれは『自分視点』です。
もっというと、『自分から染み出す何か』
をいかにして絵に込めるのか。見ている人に
伝えられるのかが重要度を増してくると
思います。
上手い絵、技術的に巧みな絵は、AIは大量に
模倣して作る事ができますが、
人生が滲みでるような、その作家独自の視点は
真似をするのが困難だと思うからです。
PIXIV高校生イラコンの審査員は、現在
イラストやアニメの最前線にいる方ばかりです。
当然、AIの現状についても、誰よりも
自分ごととして考えなければいけない立場の
方々です。
そんな審査員だからこそそういった時代の変化や
それにともなった価値観の変化を敏感に感じ取り、
今回のような審査結果に至ったように
僕は感じました。
これからはおそらく『自分視点』を
『どう伝えるか』時代に突入していきます。
そのために....。
何を見て、何に感動するか、
それを伝える熱量とそのための工夫。
そういった表現の本質的な部分が、さらに
重要視されていくように僕は感じました。