仕事の都合で1週間ほど早い3連休がとれたので、ニッカの余市蒸留所へ見学に行ってきました。

札幌からの場合、JRで札幌駅から小樽駅まで快速エアポートで30分ほど、そこから倶知安(くっちゃん)行きに乗り換えてさらに30分ほどで着きます。

余市駅に着くと、ホームにはローリー卿の肖像が書かれた樽と余市蒸留所の看板が出迎えてくれます。

実は駅から蒸留所までの距離は歩いて5分もなく、駅舎を出るとすぐに蒸留所の正門が見えます。
自然の中に蒸留所があるようなイメージがある中で、このような立地にあることに驚くでしょう。


ということで、駅からすぐに蒸留所の正門に到着。
正門では見学の受付を行っています。見学は自由見学のほかにガイド付きの見学があり、どちらも無料です。
私はネットで事前に調べていたこともあって、自由見学を選びました。撮影が比較的自由なのもメリットです。

受付を済ませると中へ行きます。そこはスコットランドを想像させるような伝統的な形状をした建物群が迎えてくれました。

ガイド付きの見学だと近い建物から順に見ていきますが、自由見学を選んだ私は、製造工程の順に建物を回っていきました。

まずはじめが、門を出てすぐ右手に見えるキルン塔。ここでピートを燃やして発芽した麦芽を熱で乾燥させつつ成長を止めます。
ただ、今はスコットランドから麦芽を輸入しているので本格的には使われておらず、観光向けに時々フロアモルティングを見せています。
当日は閉じられていましたが、奥からピートの香りがしっかりやってきました。

次に第二乾燥棟。ここもモルティングを行う場所です。

余談ですが、竹鶴が余市を選んだ理由の一つが、豊富にピートがとれたことです。
余市周辺のほか、札幌を含めた石狩平野はピートが堆積していた土地でした。明治維新後にここで農業を営もうとやってきた移民や屯田兵たちは、膨大なピートに悩まされることとなりました。
札幌の一部地域では地面の下にピート層が残っているところもあり、基礎を深く打ち込まないと地震で簡単に崩壊してしまいます。
ただ、スコットランドのピートに比べると質が落ちるようです。

その奥にあるのが粉砕棟。ここで乾燥させた麦芽を粉砕します。

そして一番奥の建物が発酵棟です。ここで粉砕した麦芽をお湯に入れて麦芽糖を抽出、さらにそれを酵母によって発酵させてもろみを造っていきます。

ここは中に入ることができて、アクリルの窓越しに発酵させるタンクが並んでいるのが見られます。

ここでは、糖化工程でできた麦汁と、発酵してできたもろみ(ウォッシュ)が展示していました。残念ながら味見はできませんでした。
 
そしていよいよ、余市蒸留所のハイライトといえる蒸留棟です。
本場スコットランドでも、ガスやスチームを使った単式蒸留器(ポットスチル)を使っているところがほとんどですが、余市は伝統的な石炭を使った直火式のポットスチルを採用しています。
室内は暑く、どの竈も煌々と石炭の赤い炎を上げていました。
残念ながら石炭をくべる作業は見学できませんでした。

ニッカのポットスチルのもう一つの特徴は、先端付近に注連縄がかけられていることです。
創業者の竹鶴政孝の実家が造り酒屋で、軒先に注連縄を掲げている伝統を尊重してのことでしょう。
酒は神々に捧げる供え物の一つでもあり、竹鶴本人がウイスキーを神々の恩恵に浴してもらいたいと願っていたのかもしれません。

その奥にあるのが混和棟です。ここは元々ヴァッティングなどを行っていた場所です。
現在では樽作りを説明する展示室になっています。
本来の見学行程とは大きく飛んで、旧竹鶴邸の奥にあるのが1号貯蔵庫です。
中は2列に並べられたウイスキーの樽がお出迎えしてくれました。ただしここは展示用で、樽には原酒が入っていないとのことです。
ニッカの樽の天板や底板には、ヒゲのおじさん、ローリー卿の顔がプリントされています。

次回は旧竹鶴邸を探訪します。