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「「神と呼ばれ、魔王と呼ばれても」」 作者:しまもん(なろう版)
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人工第二心臓

この時代、新人類は一つの「事」と、一つの「物」を手に入れる事に成功する。


一つ目の「事」とは「ホムンクルスとの絆」だ。

この絆はこれ以降の時代においても重要視され、新人類を心身ともに支える事になる。


そしてもう一つ。

新人類の発展を支える「物」となる「ある研究」が、賢者の国で進められている。



今、世界では大量のホムンクルスが市場に流れ、人々は気軽にホムンクルスを購入する事が可能となっている。

その結果、賢者の国は莫大な富を手に入れることに成功していた。


そんな賢者の国では手に入れた莫大な富を利用し、新人類の発展を支えるであろう「ある研究」を急ピッチで進める事が可能となったのだ。




賢者の国にある最重要研究エリア。

ここは分厚い城壁で守られた場所であり、国家機密レベルの研究をしている研究所が乱立しているエリアだ。


そんなエリアの地下に、極秘扱いの巨大な研究所がある。

ここは大昔に極大魔法を研究していた地下施設であるが、現在は巨大な魔石の代わりに様々な実験魔導具が並んでいる。


この地下施設は、地上で行われている全ての研究が「子供のお遊び」に感じる程に重要な研究をしている、まさに賢者の国の心臓部と言っていい場所なのだ。



そんな地下研究所の中心部に、巨大なプールが存在している。


もちろん、それはただのプールではない。

プールに満たされている液体はホムンクルスを製造する際に使用されている培養液だ。


そんな培養液が、巨大なプールに並々と注がれている。


一見すると、薄い青色をした培養液の満たされたプールには、培養液以外に何も存在していないかに見える。

しかし、実際はとても重要な物が浮かんでいた。



その時。

地下研究所に属する全ての研究員達がプールの見える場所まで来ていた。


そしてプールの脇では、数人の研究員達が複雑な魔導具を操作している。

魔導具を操る研究員達は額から汗を流し、緊張から震える己の手を必死に抑えながら魔導具を操作している。


そして、その時は来た。



プール脇に設置されていた魔力を測定する魔導具の目盛りが、僅かに動いたのだ。



その瞬間、研究員達は飛び上がり、大歓声を挙げ、お互いに抱き合う。

普段は何を考えているのか分からない賢者の国の天才達が、まるで子供のように飛び跳ね大喜びしている。



一体、彼らは何を完成させたのだろうか?

それは培養液の満たされたプールを良く見れば分かるだろう。



巨大なプールの中心に、米粒サイズの「何か」が一粒だけ浮かんでいる。

そして「何か」は、小さく鼓動しているのだ。


そう、長い時間をかけて、終に新人類はやり遂げたのだ。


鼓動する米粒サイズの物体の正体・・・、それは人工魔力臓器・・・いや、新人類風に言うならば、「人工第二心臓」である。


終に彼らは、人工の第二心臓を作り出したのだ。





人工第二心臓を賢者の国が作り出す事に成功したというニュースは、まさに一瞬で世界に広まった。

賢者の国も自身の偉業を世界に発表し、大々的に人工第二心臓の完成を宣伝したのだ。


まだ、この時点では魔力の出力は低かったが、


「栄養さえ与えれば永続的に魔力を生み出し続ける」


という人工第二心臓に世界中が飛びついた。


各国は量産の目処すら立たっていない人工第二心臓を他国よりも早く手に入れようと、賢者の国に押し寄せた。

そして大金を前払いし、賢者の国に人工第二心臓の生産体制の構築を急がせる。


その期待に賢者の国も全力で答えた。


人工第二心臓の大型化。

出魔力の増加。

安価で量産可能な方法の模索。

維持の手間を抑えるべく、極限まで無駄を省いた構造・・・・。


まさに不眠不休の研究が続けられ、何人もの研究員達がバタバタと倒れた。

しかし、賢者の国は止まらない。


研究員が倒れたら、直ぐに新しい研究員が補充された。

機材の調子が悪くなったら、数分で新品に交換された。

研究員への待遇は、まるで王族を相手にしているかのような待遇が用意されたのだ。



そんな血のにじむような努力が実り、完全なる人工第二心臓を賢者の国は作り上げる。


そして生み出された人工第二心臓は、世界を一変させるに足る力を持っていた。



この時代。

賢者の国以外の国は血で血を洗う戦いに明け暮れていた。


しかし、それは元を正せば単なる領土争いに過ぎない。

どこの国も大義名分を掲げてはいたが、本音の部分は極めて単純だ。


「今よりも広い領土や豊かな土地を獲得し、少しでも楽な生活がしたい」


それだけだった。

それだけの為に、新人類は殺し合いに明け暮れていたのだ。


しかし、人工第二心臓はそんな争いの全てを停止させた。


理由は単純だ。

無限とも思える魔力によって、領土が広くなくとも生活には困らなくなったからだ。


極寒にある国は、凍らない港を求めて南進していた。

痩せた土地が広がる国は、緑豊かな土地を求めて隣国に攻め込んだ。

雨が殆ど降らない国は、水を求めて侵略を開始した。


人工第二心臓は、それら全ての問題を解決する力を持っていた。


港が凍ったら魔法で氷を融かす事で、船は問題無く進む事が出来るようになった。

土地が痩せているなら、魔法で土地に栄養を与える事が出来るようになった。

雨が降らないのなら、魔法で水を作り出す事が出来るようになった。


最早、新人類にエネルギー問題は存在していない。

人工第二心臓は新人類の救世主となったのだ。


そんな人工第二心臓の活躍により、世界中に広がっていた戦争は、いともたやすく終結した。



戦争が終結した事により、大量の元ホムンクルス兵が市場に流れる事になった。

殆ど捨て値に近い値段で販売された元ホムンクルス兵達は飛ぶように売れ、様々な仕事をこなす事になる。


その仕事の大半が復興作業に関する事ではあったが、人々はホムンクルス達と共に、そして人工第二心臓と共に歩み始めていたのだ。

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