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「「神と呼ばれ、魔王と呼ばれても」」 作者:しまもん(なろう版)
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基地司令の提案

少年兵は考えるのを止め、話しかけてきたホムンクルス兵を見る。

そのホムンクルス兵は左右の目の色が若干異なり、肌の色も所々異なっていた。


「いや、特に肩はこっていないが・・・、いきなりどうした?」


彼の問いに、ホムンクルス兵は少しだけ視線を落とし、


<カタミミさんから聞きました。隊長は私達を「相棒」として見ていると。


相棒として、少しでも力になりたいと考えました>


と言ったのだ。

その言葉を聞いた彼は、不思議そうな顔をしつつ、


「・・・そういえば、少しだけ疲れているかもしれないな・・・。

やはりマッサージを頼もうかな?」


と答えた。


彼の返答を聞いたホムンクルス兵は、視線を上げる。

その一瞬、ホムンクルス兵の顔が少しだけ明るくなったように彼は感じたのだ。



それから彼がベッドに腰掛け、ホムンクルス兵が後ろから肩のマッサージを始めると、彼は何かに気がついた。

それは、己の背中に突き刺さる大量の視線だった。


彼がソッと振り返ると、そこには部屋に居る全てのホムンクルス兵の目があった。

部屋に居る全てのホムンクルス兵達は微動だにせず、ジッと肩もみを見つめていたのだ。


流石に、この大量の視線に彼は驚く。



(何か・・・、肉食動物に狙われた獲物の気分だな・・・。


・・・もしかして、他の子も何かしたいのか?)


そんな事を考えた彼は試しに、


「実は全身がこっているんだ。流石に昨日今日と走り回ったから疲れてしまったよ」


と肩もみをしているホムンクルス兵に話しかける。


すると、背後から大量の気配が近寄ってくるのがわかった。

そんな気配を感じながら、彼は苦笑するのだった。





小さくドアをノックする音の後、


<失礼します>


と言って、カタミミが若い兵士の個室に入室する。

その直後、カタミミはフリーズしてしまった。


カタミミが入室した、まさにその時、既に少年兵が横になっているベッドはホムンクルス兵に囲まれていた。

彼は大の字になってベッドに横になっており、そんな彼の手足や首、指先といった部分を一人一人のホムンクルス兵が丁寧にマッサージをしていのだ。


そんな光景を「理解した」瞬間、カタミミはフリーズしてしまったのだ。



何故、そこでフリーズしてしまったのか?

それはカタミミ本人も理解出来なかった。


彼女は必死になって動かない己の足を動かしてベッド脇まで移動するしかなかった。

そしてベッド脇にある小さなテーブルに書類を乗せると、彼に向けて小さく敬礼して退室した。


廊下に出たカタミミは、霞がかった思考の中、己の動かなかった足を見つめる。

そして、何を呟くわけでもなく、彼女は待機室へと帰っていった。




カタミミが退室した後も、彼に対してホムンクルス兵達はマッサージを続けている。

そんな大勢のホムンクルス兵に全身をマッサージされている彼は、ベッド脇に置かれた書類を読む事が出来なかった。


そこで彼はマッサージに参加出来ず、ベッドの周りをウロウロと歩き回っているホムンクルス兵に手紙を読み上げるように下命する。

彼に手紙を読み上げるように指名された手空きのホムンクルス兵は急いで手紙を広げ、透き通るような声で内容を読み上げ始めた。


その手紙には、


「少年兵が所有している員数外のホムンクルス兵達に、駐屯地周辺の整備をして欲しい」


「もし、駐屯地周辺の整備をしてくれるのならば、無人の隊舎をいくつか譲る」


と書かれていた。


この書類は軍の正式な命令書ではなく、基地司令から彼に宛てた個人的な「お願い」に近いものだったのには理由がある。

やはりカタミミが言った通り、廃棄が決定していたホムンクルス兵を修繕して再利用した場合、そのホムンクルス兵は書類上は存在しない事になっているのだ。


これは、軍隊にとって異質な存在といってもいい。

というのも、どんなに規模の大きい軍隊であっても、軍隊と言うのは役人の集団に過ぎない。


そして役人というのは根拠となる規則があって初めて動く事が出来るのだが、逆に言えば該当する規則が無い場合には動く事が出来ない。

それは役所の一種である軍隊でも同じ事であり、彼が所有している員数外のホムンクルス兵に対して、基地司令が命令を出す為の根拠となる規則が存在しないのだ。


更に言えば、彼の行動は今まで前例が無い行動でもあった。

下命する根拠は無く、前例まで無いというのであれば、それは軍隊にとってはお手上げ状態になってしまう。


その結果、基地司令は命令書では無く、個人的な手紙で彼に「お願い」をするしか方法が無かったのだ。


手紙の内容を知り、彼はどうするべきか考え始める。



(今後、ホムンクルス兵はどんどん増えていくだろう。

そうなれば、後方支援だけで彼女達を使うのも限界が来るに違いない。

必要以上にホムンクルス兵を後方陣地に展開しては、必ず古参兵達から難癖が来る。


・・・いや、それだけではない。

ある程度以上の人数になったら、この部屋だけではとても入りきらない。


そうならない為にも、基地司令には俺の「味方」になって貰わないと困るな。

ここは、基地司令の提案を受け入れよう)



そして彼は基地司令の提案を受け入れ、翌日から駐屯地周辺の整備に数人のホムンクルス兵を出すことにした。


その一方で、彼は後方任務に慣れているホムンクルス兵達を連れ、最前線で後方支援任務に勤しむ事になった。


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