UTグループの女性活躍推進。製造業の現場は変化を始めている

UTグループの女性活躍推進。製造業の現場は変化を始めている

UTグループは、製造業向け人材派遣業において、いち早く人材育成の重要性に気づき、業界初の株式公開を実現したリーディングカンパニーです。

派遣でありながら業務の習熟度に応じて賃金が上がる「ジョブグレード制度」、入社年次に関係なく誰でもリーダーに立候補できる「UTエントリー」、グループ内のエンジニア職にキャリアチェンジできる「One UT」、派遣先企業の社員になれる「Next UT」など、「はたらく力で、イキイキをつくる。」というミッションが形になった例は枚挙に暇がありません。

「一人ひとりに、寄り添い、向き合う。」という価値観を大切にしてきたUTグループは、これまでも女性・シニア・外国人の活躍を、公式HPなどで紹介してきました。それが2021年、ダイバーシティ推進の決意を新たにし、なかでも女性活躍推進を強化する方針を打ち出しました。UTグループが本腰を入れると何がどう変わっていくのか。

インタビューでは、長いあいだ製造業の「人」と真摯に向き合ってきたからこそ溢れ出る、製造現場の課題と女性活躍への想いが垣間見られました。

インタビュー対象者略歴

辰口 健介(写真・左)
経営改革部門 人事ユニット 統括部長/コンサルティング企業や情報サービス企業での人事制度設計や人材開発を経て、2018年にUTグループへ入社。

米倉 雅恵(写真・右)
経営改革部門 人事ユニット 人事統括セクション 担当部長/2021年入社。労務管理を経て、社内の組織統合により現ポジションへ。全社におけるダイバーシティ推進のリーダーとして活躍中。

企業情報

■UTグループ株式会社
■所在地/東京都品川区東五反田1-11-15
■創業/1995年4月14日
■従業員数/48,163名(連結)※2022年3月末現在
■事業内容/「マニュファクチャリング事業」「ソリューション事業」「エンジニアリング事業」の3つの事業セグメントから成り立つ。製造工場への人材派遣・請負等の人材サービスの提供から大企業向けの構造改革ソリューション提供、設計開発・ソフトウェア・IT・建設エンジニア等の技術者派遣など多岐に渡る。

製造現場で働く女性は、まだ3割。みんなの想いで始まった女性活躍推進

UTグループ株式会社 (UTエイム、UTコネクト)辰口健介

――製造業の女性採用は長年の課題です。今回のUTグループの取り組みは、これまでと何が違うのでしょうか?

辰口 健介(以下、辰口):この取り組みは、2021年に策定されたUTグループの長期経営ビジョン「UT VISION2030」が発端になります。2018年11月から2019年3月まで、役員と14名の社員で「2030年、どんな姿でありたいか」の議論を重ね、「これからのはたらき方のプラットフォームになる」という決意を固めました。そのなかの取り組みの一つが、ダイバーシティ推進プロジェクトです。

これからは女性やシニア、外国人といった新しい属性を取り込んでいく必要があるけれど、まだまだ多様な人が働ける組織ではない、という声が社員から挙がったのです。

具体的に言うと、これまで私たちが求職者に提供してきた職場の多くは、「転勤が当たり前」かつ「力仕事」といった、若年層男性が働くことを前提としているような現場でした。事実、現場で活躍する社員の7割が男性です。

これまでとの違いは、女性にとって働きやすい職場を生み出すこと、そして女性社員・女性管理職の在籍数増加に具体的な目標を掲げていることです。社員の属性や性別、年齢を問わず、すべての人からの「働きたい」に応えられることを目指して、まず女性に焦点を当てて取り組みを進めています。

製造現場の壁は、コミュニケーションと受け入れ後のサポートで越えられる

――製造現場で女性が働くには、どういう難しさがあるのでしょうか。

辰口:いくつかあるのですが、まず場所の問題があります。圧倒的に男性が多い職場だと、女性が着替えられる場所がなかったり、女性用トイレが少ないといったことは珍しくありません。重いものを運ぶ仕事があると、採用した女性に合わせて個別の対応をしなければならないのではないかという懸念も持たれます。

それだけではなく、受け入れ側の心理的なハードルも存在します。「何か特別な配慮が必要になるのではないか」「男性社員にハラスメントの教育を行うべきなのか」といった、これまでとは異なる受け入れ体制をつくることに抵抗を持つクライアントは多いです。

こうしたインフラ整備、受け入れ側の負担といった壁がある中で、私たちが一方的に「女性を現場に入れましょう」と言っても、クライアントにはなかなか受け入れてもらえません。

私たちUTグループのほうにも少し思い込みがあります。お客様との取引が長期であるほど、「どういう人を求めているのか」「女性採用にどんな不安を抱えているのか」を聴いた経験があるため、そういう過去の記憶から、「受け入れてくれないだろう」と先入観をもってしまう。

お客様のほうから「女性採用を進めたい」と相談いただくのは現在もレアケースですが、お客様も日々変化しています。特に人事や採用担当の方の女性採用に対する温度感は決して低くありません。

UTグループ株式会社(UTエイム、UTコネクト) 米倉雅恵

――たくさんの壁がありますね。どのように乗り越えようとしているのでしょうか。

米倉 雅恵(以下、米倉):グループ内でも規模の大きいUTコネクト株式会社とUTエイム株式会社を中心に改善を進めています。

まず地域に根差した中小企業をお客様にもつUTコネクトは、「案件ありき」から「人ありき」へ、根本的に視点を転換させました。大きな案件があるところに人をなんとか集めてくるのではなく、人がいる場所の近くや働きたいと希望する条件の案件を増やしていく、という方針です。具体的には、食品製造やクリーニング工場など。こういった工場は大規模な現場と比較すると力仕事が少なく、女性も活躍しやすい環境が整っています。

またUTコネクトで扱う職場の多くは、都市圏ではなく地方にあります。地域にしっかりとした地盤のある派遣事業者との連携やM&Aを通じて、地域内の案件の網羅性を高めることにも成功しつつあります。そうすることで、「転勤せずに地元で安定して働きたい」「家から通える範囲で働きたい」といった多様な働き方のニーズにも応えることができるようになっています。

――価値観やライフステージに合わせていくということですね。UTエイムではどんな取り組みを?

米倉:UTエイムが扱う案件は、工場の規模が大きく、在籍する人も多い案件です。それぞれの現場で、就業環境も仕事内容も違う大型案件を一挙に変えていくことは難しいので、特定の事業所に絞って改善を進めています。

事業所選出の基準は、第一に、女性の受け入れに前向きなクライアントであること。女性比率を増やしていくにはどうすればいいか、お客様もパートナーとして一緒に考えていただけることが大事です。

そして、女性でも性差を感じることなく働ける仕事内容であること。家事も忙しい人が働ける日勤帯の勤務であったり、重いものを持つことのない検査工程の現場であったりですね。性別で適性が決まるわけではないですが、繊細で正確さが求められる工程では、女性を配属して生産性が上がったという嬉しい事例もあります。

大規模な工場であれば、女性用の更衣室やトイレも整っています。少ないながらも大規模工場は女性が在籍しているので、実は男性中心であっても大規模工場であれば女性活躍を推進しやすい側面ももっています。

――まずは受け入れられやすいところから、ということですね。

辰口:受け入れていただいた後のフォローも大切です。女性社員が職場で孤立してしまうことのないよう、安心して長く働き続けられる職場づくりのサポートをしています。研修制度や教育係の常駐、管理職からの積極的な声かけ。一言でいえば、女性社員を放っておかない、ということです。

女性社員を受け入れることが、現場の負担になってしまっては女性活躍推進はできません。私たちが現場の管理職社員へのハラスメント講習や業務のサポートも同時に行い、受け入れられる側・受け入れる側双方にとって働きやすい職場づくりを目指しています。

女性管理職が、スタッフのモチベーションを上げた

UTグループ株式会社(UTエイム、UTコネクト) 辰口健介と米倉雅恵が語る女性管理職の増加による変化

――独自のビジネスモデルである「工程一括請負」の現場でも、UTのスタッフをまとめる女性の現場管理者および管理職の数を増やしていくとお伺いしました。
(※工程一括請負…顧客の工場内の生産工程の一部を、UTグループの社員で一括して請け負うビジネスモデル)

辰口当初は全体の11%しかいなかった女性管理職ですが、2022年の人数目標はすでに達成し、2025年には15%にまで増やす目標を掲げています。全体の伸び率は大きくはありませんが、事業部門での女性管理職の比率を高めていきたいと考えています。

実は、女性がどうこうという以前に、現場管理者のはたらき方にも課題がありました。おかげさまで一現場当たりのスタッフ数は増えており、工場は毎日休むことなく動いています。そのため、トラブルや悩み事のフォローや、深夜のシフトを終えたスタッフから連絡をいただくなど、長時間労働にならざるを得ない状況が深刻になってきていました。

しかしそうやって24時間365日、いつ誰から連絡が来るかもわからずスマホを手放せないような働き方では、出産や子育てと両立しながら働くビジョンは見えませんよね。根本的に働き方を変えていく必要がありました。

――忙しい管理職の働き方を、どのように変えていったのでしょうか。

辰口:まだ課題は残っている状態なのですが、業務の標準化や新しいシステムの導入で効率化に取り組んでいます。地道なプロセスになりますが、一人ひとりの管理職の業務の棚卸しを行ったんです。

業務の目的を明確にし、本当に管理職が行うべき業務と、そうでない業務を整理する。そして他のスタッフに任せられる仕事は任せる、もしくはアウトソーシングする。業務量の削減と働き方改革を行うことで、ライフスタイルの変化があっても働き続けられる仕組みをもっと整えていかなければなりません。

女性管理職が増えたことで、社員のモチベーションが上がるという変化も見られました。
あくまで傾向の話ですが、男性管理職は「やる気がある」「素直」といった性格の人を評価する傾向があります。一方、女性は、「周りのことがよく見えている」「周囲と協力できる」「自分からアピールせずともやるべきことをきちんとやっている」など、個人の成果よりもチームへの貢献をよく見て評価してくれる傾向があるようです。

女性の管理職を増やしていくことで、これまで評価できていなかった面が見えてきて、事業所の「当たり前」が変わるような、新しい変化が起きています。

――それは、良い変化ですね。

米倉:ただ、それでもまだ女性社員の数は非常に少ないのが現実です。職場単位で見れば、女性がたった一人しかいないというケースも少なくありません。そこでつい先日、女性社員限定の社内イベントを開催したんですよ。

――どのようなイベントですか?

米倉:現場の女性社員が主導して企画したのですが、働き方のロールモデルとなるような管理職社員、子育てと両立しながら働く女性社員に登壇してもらい、パネルディスカッションやフリートークを行うというものです。社内全体で大々的に広報したわけではなく、女性社員からどんな反応が寄せられるかも未知数だったのですが、結果は大盛況。

質疑応答コーナーでは「忙しいときの夜ごはんは、何を作っているか」「クライアント先でのトラブル対応はどうしたらいいか」といった、思いもよらない質問や悩みが飛び交いました。男性社員や上司がいない場だからこそ、非常に盛り上がれた部分もあったのだと思います。

参加者からのアンケートでも、「社内にこんなに女性社員がいたんだ、と驚いた」「これからもUTで働くイメージがついた」といった声が寄せられ、私たちとしても女性社員のリアルな本音を知ることができたと同時に、改めて女性社員の繋がりを強化していくことの必要性を実感させていただきました。

クライアントを知るUTだからこそ実現できた、現場の課題解決のための女性活躍推進

UTグループ株式会社(UTエイム、UTコネクト) 辰口健介が語る女性活躍推進

――なぜUTグループは、派遣先である事業所の人も巻き込んで、変えていくことができるのでしょうか。

辰口:「共同雇用・共同経営」という考え方に共感いただいているのが大きいと思います。私たちのビジネスモデルは、クライアントの工場にただ働き手を派遣するのではなく、クライアントの製造現場で必要とされる人材の採用から定着、育成、そしてときには業務改善までを一貫して担うものです。

生産の責任だけでなく人材の責任も負っているからこそ、ともにいい職場をつくるパートナーでありたい。その想いで、私たちはクライアント自身が気づくことのできない現場のニーズを発見してきました。

そうして積み重ねてきた関係性のなかで、現場の人材不足や作業の質向上といった課題を解決する手段の1つとして、女性の活躍推進をご提案することができています。「じゃあ、話を聞いてみようか」「UTさんの言うことなら」といった反応をいただけるのは、信頼関係という前提があるからだと思います。

――その信頼関係の土台にある「人に向き合い、人に寄り添う」というUTグループのダイナミックな変化を私たちは目の当たりにしてきました。具体的にどのような仕組みで日々改善されているのでしょうか?

辰口:それは、「PCP(プロフェッショナルキャリアパートナー)」という、専門のスキルを持ったキャリア形成支援パートナーが、現場をよく知っているからです。20名ほどのPCPが、毎日面談やカウンセリングをしているので、現場の生の声がリアルタイムで更新されていくんです。

求められるスキルが変わればプログラムを変えますし、共通ニーズが見えてきたら新たなプログラムを開発する。現場に課題があれば解決策を考える。この仕組みが、私たちがつねに変化し続けられる動力源になっていると思います。

理想は、「働きたい」と思う全ての人が働ける社会

――今後の課題は。

辰口:現在はまだ、力仕事の現場や習熟に時間のかかる業務において、女性採用は避けられがちです。次の段階では、ここにも手を入れていかなければならないと考えています。

今力仕事とされているものは、機械の導入や作業の細分化といった業務プロセスの改善を行うことで、体力的な負荷を軽減できるはずです。また、習熟に時間がかかる業務というのも、研修プログラムを工夫すれば、一日の勤務時間が短くても十分に習熟した労働力に育てられるはず。

ある半導体製造を例に挙げると、そこでは通常3ヵ月フルタイムで働けば業務に必要なスキルを身につけることができます。しかしパートタイム勤務で1日あたりの勤務時間が4~5時間となると、独り立ちまでにかかる期間は2倍になってしまう。そうなると最初の数ヵ月で同僚との差がどんどん広がっていき、結果として早期離職に繋がってしまう。こうしたフルタイム勤務を前提としたスキル習得体制の改善にも、これから取り組んでいきたいです。

――まだまだ、取り組むべき課題がありそうですね。最後に、DEIを推進する企業に伝えたいことはありますか。

辰口:私たちは「女性」に着目してはいるものの、こうした取り組みは女性のためだけに限ったものではありません。ダイバーシティという観点に立ったときに、職場でマイノリティの方が抱える悩みを解決することが、同時にマジョリティの方たちの悩みを解決することにも繋がります。

マイノリティの課題に着目し、組織の構造改革に挑戦することで、全ての人にとって働きやすい職場を作っていくことが、真のダイバーシティ推進ということだと思います。

――ダイバーシティといっても、どんな人でも受け入れることは無理なのでは?

辰口:現実的に考えればそうかもしれないのですが、私たちは、決してできないとは考えません。UTグループの始まりは「働く意欲のある全ての人に働く機会を提供したい」という想いから。過去の経歴や意欲のレベルにとらわれず、今働きたいのであればそれを受け入れ、長く働き続けられる職場を提供することが私たちの存在意義だと考えます。

もちろん応募者には面接を行いますし、全員が合格するわけではありません。でもそれは、ご本人に問題があるのではなく、私たちが持っている職場がまだまだ限定的なのが問題なのです。私たちがもっと多様な職場を持つことができていれば受け入れることができたのに…という考え方なんです。

現在、応募者の3割ほどは女性であるのにも関わらず、なかなか採用に至らない理由の多くは、勤務時間や転勤の有無など、就業条件に関するミスマッチです。「昼に働きたい」「家の近くで働きたい」といった普通のニーズに応えられるだけの案件が、まだ少ないのです。

全ての人にとっての「働きたい」に応えるためには、地道に課題を解決していくしかありません。それこそ、泥をかきわけるように。難しさは承知の上で、少しでも「働きたい」と思っている人がいるのなら、全員受け入れていきたい、というのが私たちの想いです。

UTグループ株式会社(UTエイム、UTコネクト) 辰口健介と米倉雅恵が語る理想の未来

これは業界イメージとの戦いでもある~インタビューを終えて~

UTグループの取り組みを知れば知るほど、いつももどかしい気持ちに襲われます。「はたらく力で、イキイキをつくる。」という創業の原点にいつも立ち返り、UTグループは日々進化しているのに、製造業がもつネガティブイメージはなかなか変わらない。UTグループの想いを誰にどう伝えたら、正しく伝わるのかわからない。メディアをつくる私たちの力不足も突き付けられます。

驚くほどの急成長を続けているUTグループには、ほころびもあります。想いが社員全員に届くわけではないし、うまくいかないこともある。それはある程度大きな企業であれば避けられないこと。でも製造業や人材派遣がもつイメージがあいまって、いいイメージはなかなか浸透していかない。

インタビューの最後にうかがった、「少しでも『働きたい』と思っている人がいるのなら、全員受け入れていきたい」という想いに、取材スタッフの一人は思わず涙をうかべました。UTグループを語りつくせる余白はこの記事にありません。もしUTグループに興味をもっていただけたなら、公式HPなど、UTグループが発信するコンテンツを覗いてもらえると幸いです。

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※インタビュー内容は、2023年1月時点のものです。

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