グラストの派遣は、一人ひとりの中にある多様性が見えるまで、人間関係を深めていく

グラストの派遣は、一人ひとりの中にある多様性が見えるまで、人間関係を深めていく

2007年12月に人材派遣業を開始した株式会社グラストは、若年層の派遣を強みに急成長を遂げてきました。しかし2022年10月に突如として幅広い年齢層の派遣強化を表明します。

しかも初月から40代以上の派遣スタッフ就業数は前月比163%を記録。若く勢いある集団が、ミドルシニアでも躍進すると自信をもって言えるのはなぜなのでしょうか。

現場の先頭に立ってこの方針を推進する馬塲氏のインタビューからは、驚くほど地に足の着いた戦術と、「人」の深い内面にまで踏み込んで派遣会社としての役割をまっとうしようという信念が感じられました。

インタビュー対象者略歴

馬塲 奈津美
前職は百貨店で美容部員として、10年ほど勤務。販売・サービス業以外の仕事に挑戦したいと一念発起し、株式会社グラストへ入社。大阪オフィスにて、求職者の方にぴったりなお仕事を紹介するコーディネーターとして勤務。現在は、大阪府内の複数の拠点を統括するサブマネージャーとして活躍中。

企業情報

■株式会社グラスト
■所在地/東京都渋谷区渋谷3-10-13 TOKYU REIT渋谷Rビル6F
■設立/2005年10月
■従業員数/267名
■事業内容/人材派遣・人材紹介。(データ入力、コールセンターなど、オフィスワークの派遣の実績が多い)

進む少子高齢化。強みだった若手の派遣から、40~50代の派遣を推進していくことに

――グラストはもともと20代~30代の派遣を強みとしていたと伺っています。なぜ若年層をターゲットとしていたのでしょうか。

 

馬塲 奈津美(以下、馬塲):理由としてはシンプルなのですが、派遣先となるクライアントのご要望として「できるだけ若い方を派遣してほしい」という声が多かったからです。若い方はお仕事を覚えるスピードが早いケースが多いので、担当者が良いイメージを持たれているのだと思います。

 

――2022年10月から、40~50代のスタッフの派遣を強化する方針にした背景は?

 

馬塲:ここ数年で求職者の動きが変わり、若年層を採用できなくなっているのを私たちも実感していました。少子高齢化でその割合はどんどん減っていくので、採用のあり方を見直す必要があるのも理解してはいました。

そこでいくつかのクライアントに「40~50代に採用ターゲットを広げませんか?」と提案してみたところ、ほとんどの企業が賛成してくださったんです。クライアントも「実はそうしたいと思っていたけど、何をどう変えればいいのか分からない」という状態だったようです。

  株式会社グラスト 馬塲奈津美氏のインタビュー

年齢の幅を広げるのは誰もが賛成する。しかし変わるのは簡単ではない。

――採用ターゲットの幅を広げることを、クライアントが受け入れてくれた理由は何だと考えますか。

 

馬塲:クライアントが不安なのは、教育やマネジメントの点です。若い世代とミドルシニアの仕事・生活の価値観には大きな違いがあるのですが、それをうまく理解できずに失敗した経験をもつクライアントも少なくありません。

そこで私たちは、クライアントが受け入れやすいように2つの提案をさせていただきました。一つは、ミドルシニアを受け入れていただいた企業に対して20~30代のスタッフも優先的に紹介すること。もう一つは、ミドルシニアのメンタル面のフォローはすべて私たちに任せていただくこと。

もともと私たちグラストのスタッフフォローにメリットを感じてくださるクライアントも多かったので、信頼していただけたのというのも大きかったと思います。「40~50代の方を受け入れるのは初めてだけど、グラストさんがフォローしてくれるなら挑戦してみようかな」と、変化を受け入れてくれるクライアントもいらっしゃいました。

 

――より変化しなければならないのはグラスト自身ということになります。社内の反応はいかがでしたか。

 

馬塲:社員からも基本的には賛成の声が大きかったですね。ミドルシニアの派遣スタッフは、数は多くないですが初めてではなかったですし、その世代のスタッフは離職率が低いという事実をみんなが知っていました。

ミドルシニアの方は、転職リスクを感じていたり精神的な懐の深さもがあり、継続して頑張ろうと努力してくれる方が多いんですよね。そういう事実を知っている社員は、むしろ歓迎してくれました。

ただ、ネガティブな反応も少なからずありました。対応をガラッと変えなければならないですからね。業務経験が少ない若年層と、人生経験が豊富なミドルシニアとでは、対応方法がぜんぜん違います。経験が浅い社員のなかには「どういう風に接したらいいんだろう?」「どうフォローすべきなんだろう?」など、コミュニケーションの取り方で不安に感じている人もいました。

 

――ノウハウがないなかで対応を変えるのは、大変ですよね。

 

馬塲:実はそこに私の前職の経験が生きたんです。化粧品会社で美容部員をしていたのですが、ターゲット層がちょうど40~60代だったんですよね。そのときの経験から、ミドルシニアの方とうまくコミュニケーションをとるためのノウハウをもっていたので、他の社員にも共有していきました。

  株式会社グラスト 馬塲奈津美氏の前職とは  

――若年層とミドルシニアには、どういう違いがあるのでしょうか。

 

馬塲:グラストに応募していただいた方に限った話ですが、ある傾向が見られます。まず若年層の方は、仕事とプライベートのオンオフをきっちり分ける傾向があります。プライベートに踏み込んだ話をしてしまうと「どうしてそこまで話さないといけないんだろう」とセンシティブな反応をされてしまうんですね。そのため面談では、スキルや将来のキャリアアップの話を意識的にするようにしています。

逆にミドルシニアの方は、プライベートな面にも踏み込んで会話をするほうが、心を開いてくれる方が多い印象です。社会人経験が豊富なので細かいところにも気が付きますし、一つのテーマでもいろんな引き出しをもっているので、お話していただける時間も長めになる傾向があります。

 

――ミドルシニアの対応のポイントは、どのように考えるといいのでしょうか。

 

馬塲とにかく、「よく話を聞く」ということが大切だと考えています。人生経験が豊富だからこそ気づける深い部分の気づきや、違う生活をしていたからこそ見える違和感というのがあるので、スタッフが感じていることをしっかり聞き出して、ていねいな気遣いができるようにしています。

会話を引き出すポイントは、例えば帰宅後に夕飯づくりもしている方であれば「毎日の献立はどうされてるんですか?」、お子様がいる方だったら「最近の学校行事はどんな感じなんですか?」など。プライベートな話をするうちに心を開いてくれる方が多くて、グッとコミュニケーションが取りやすくなるんです。

これは私が前職で培った経験をもとにしたコミュニケーションのコツなのですが、「こういう会話ができるように心がけてほしい」と部下にも共有して、実践してもらっていますね。

年齢にかかわらず、仕事以外のこともしっかり話をして気持ちを掴むことが大切だと思うんです。まずは信頼してもらって、やる気を出してもらう。スキルは、あとから付いてくるので。

本当に必要なスキルはそれぞれ違う。その人にあったキャリアアップをサポート。

――グラストの公式HPでは“スキルアップのためのキャリアステップ”を紹介すると強調されています。実際にはどのようなサポートをしているのですか?

 

馬塲:私たちがこだわっているのは、なるべく「対面」でお話すること。オンライン面談の対応もしているのですが、直接お会いしているときに感じ取れる空気感や生身の温度感を感じ取りにくいので、求職者の方となかなか打ち解けられないことを課題に感じます。

なので、なるべく対面でお話して、まずは「仲良くなる」ことを目標にしています。心を開いてもらえれば、その人のことをよりよく理解することができ、良いキャリアステップとなる職場を厳選することができます。

お仕事をスタートされた後でも、定期的に対面でお会いして、職場での悩みを聞いたり、今後のキャリアアップの相談にのったりしています。そのうえで、実務的なスキルは現場で習得できるようなサポートしています。

  株式会社グラスト 馬塲奈津美氏がこだわる「対面」の会話  

――なるほど。現場で実務的なスキルを身に着けるためのサポートはあるのでしょうか。

 

馬塲:私たちからは、まず「自分でできること」ができるようにサポートをします。特別なセミナーや研修プログラムがなくても、今は無料のWEB講座でタイピングやExcelは学べます。その中から、一人ひとりのスキルレベルにあわせた講座やWEBツールや方法を紹介するというかたちです。

スキルというと資格や技術のことをイメージしやすいと思いますが、職場のマッチングで最も重要なのは、実は人間関係をきちんと構築するスキルなんです。前の職場で人間関係を理由に辞めた方は、また人間関係を理由に退職を考えることが多いんですね。これは人間関係構築スキルの問題なんです。

なので、職場の人間関係に関する悩みは面談でしっかり聞くようにして、アドバイスをしています。「職場でこういう風に言われて…」と悩んでいたら、「上司の方は、こういう意図でそういう話をされたんじゃないですか?こういう風に聞き返してみるのはどうですか?」と、コミュニケーションの取り方を提案するなど。

そういうサポートを繰り返しているうちに「気づいたら前よりもうまくコミュニケーションが取れるようになった」と言ってくれるスタッフもいるんですよ。

 

――厳選して紹介するとのことですが、スタッフも厳選するのでしょうか。

 

馬塲:そうですね。私たちが自信をもって送り出せるスタッフでなければ紹介はできません。ただ重要なのは、業務経験や専門スキルではなく、「ちゃんと目と見て話せるか」など人間関係を構築するためのお人柄の部分。「ありがとうございます」や「お世話になります」などの基本的な挨拶を目を見てできる人であれば、職場でも良い人間関係を構築していくことができるはずです。

専門スキルがなくても、これまでしっかりとして人間関係を築いて生きてきたということが大事。繰り返しになりますが、業務スキルの習得は私たちがしっかりサポートできますので。

対面でじっくり、何度も会話。真剣に向き合っていれば、熱意は相手にも伝わる。

――人ひとりに合わせたサポートというのを徹底していますね。

 

馬塲:大変ですが、派遣が始まることがゴールではなく、スタッフにとっては派遣がスタートしてからのほうが大事ですから。私たちもそれを一番大事に考えています。先ほど「対面」にこだわっているとお伝えしましたが、定期的なフォローも「対面」が基本です。スタッフが気兼ねなく話せるように、職場から少し離れたカフェでお茶したり、スタッフの仕事終わりに待ち合わせをして、ゆっくり職場での悩み相談をしてもらったり。

 

――どれくらいの頻度で、対面でお話しているのですか?

 

馬塲:基本的にはフォローに関しても直接お会いし、その方の表情や声のトーンなどを確認させて頂いております。会う頻度はルールを定めてはいませんが、各派遣先の業務において難易度の高い研修の前日やテスト後のフォローなどを意識しております。テストに合格したら担当営業から、ちょっとしたお祝いなども場合によっては実施しております。

だいたい1回30分ほどですが、長い方だと3時間ほど話し込むこともありますね。なるべく気軽に相談をしてもらえる関係性をつくりたいので、スタッフ全員に「メッセージアプリの連絡先を交換しませんか?」とお誘いしています。だいたい9割ぐらいのスタッフと交換していて、何かあればメッセージを送りあっています。

 

――たしかにアプリだと、電話やメールよりも、気軽に連絡をしやすいですよね。

 

馬塲:そうなんですよ。弊社で働いていた元スタッフと連絡を取ることもできるので、ときどき「最近どうですか?」とメッセージを送ったりもします。すると「ちょうど今、新しい仕事を探してて…」という返事をいただいて、アプリでのやり取りをきっかけに再就職されたスタッフさんもいたりしますね。


株式会社グラスト 馬塲奈津美氏のコミュニケーションのこだわり  

――気軽に連絡がとれるということは、スタッフとのやり取りも増えるということですよね。

 

馬塲:そうですね。社員はみんな驚くほど多くのやり取りしてくれていると思います。ただ、いつでも困ったときに助けてくれるという経験や信頼は、人間関係を一つ深いステージに進めてくれます。なので時間をかけてでも、一人ひとりと密なコミュニケーションをとるのに私たちはこだわり続けます。

逆に一斉送信のメルマガのような、多数の人に向けたお仕事紹介はしていません。一人ひとりに合った仕事を厳選し、メールやメッセージアプリでカスタマイズしてご連絡しています。スタッフの方にも、「私たちから送るのは、あなたに向けたオリジナルのメッセージなので、自分に合ってると思って読んでほしいです」と事前にお願いしています。

そのかいあってか返信率はすごく高く、「今回はご遠慮します」とわざわざメッセージを下さる方もいらっしゃいます。やはり、一人ひとりと真剣に向き合ってコミュニケーションを取ろうと努力すると、そのぶん応えてくれる方が多いと感じます。

一人ひとりの内面を見ることが、多様性を認めるということ。

――世の中の変化にあわせてやり方を変えてきたグラストですが、今後の展望を教えてください。

 

馬塲:求職者一人ひとりにとことん向き合うグラストのスタイルを継続し、一人ひとりの個性や価値観といった内面を大事にしながら、その人が一番活躍できる職場を紹介する、そんな派遣会社でありたいですね。

労働に関する法律は毎年のように変わっていますが、法が保証しようとするのは金銭面や条件面のこと。一人ひとりの内面に着目して、それをサポートできるのは「人」しかいないと思います。そしてそんな「人」でありつづけることが、私たちの役目なのではないかと考えています。

  株式会社グラストは一人ひとりのなかに多様性を見る 

――改めて「多様性」という観点で見てみると、グラストの考える「多様性」とはどいうことなのでしょうか。

 

馬塲:そうですね。一人ひとりに向き合うというのもそうですし、一人ひとりのいろんな部分、たくさんの面を見ていくっていうのが多様性を認めるということなのかなと思います。一人の人間の中に、いいところはいくつもあるし、そこを一つでも多く引き出してあげることを大事にしていきたいですね。

そして、グラストが間に入ることによって、これまで40代・50代・60代のスタッフ様を受け入れたことがないお客様が、徐々に受け入れられるようになってもらえるとうれしいですね。お客様と求職者の架け橋みたいな存在になっていければと思っています。

 

――本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

グラストのダイバーシティ実現は「人ありき」だからこそ~インタビューを終えて~

株式会社グラストは、大手派遣会社がもっているような「専門的かつ豊富な研修プログラム」や、分業化されたチームで「大規模かつ効率的なキャリアサポート体制」を持ち合わせてはいません。ミドルシニアの派遣への挑戦を始めたばかりで、ミドルシニアの派遣スタッフ数や割合、年齢の幅においても大手派遣会社にはまだまだ及びません。

しかしそんな“規模”がなくても、ダイバーシティの取り組みは十分にできる。それどころか、対面による生身の「人」にしかできないダイバーシティの取り組みがあるということを教えてくれます。

私たちはエンプロイアビリティの問題を考えるとき、職業能力を上げるための教育をするには相応の投資や専門知識が必要と思いがちです。しかし一部の教育システムや専門スキルはWEB上に既に存在しているので、あとは彼ら/彼女らが実践するように、あいだに「人」が入って推進すればインクルージョンも推進できるということも示唆してくれいます。

そして、仕事のマッチング問題の多くは人間関係である、という人材業界ではよく知られた事実に対しても、やはり「人」の介入が解決策になることを示してくれています。

DEIは、大きすぎて変えがたいものではなく、私たちの身近にあって一人の力で変えられるもの。みんなが一歩踏み込んでみるだけで、意外にガラリと変わってしまうものなのかもしれません。

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※インタビュー内容は、2022年12月時点のものです。


 

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