鳥貴族の多様性を認め合うチームづくり。シニア採用も「トリキウェイ」とともに浸透

鳥貴族の多様性を認め合うチームづくり。シニア採用も「トリキウェイ」とともに浸透

「世の中を明るくしていく」を創業の精神とする鳥貴族は、働くスタッフも明るく楽しく働けることを大切にしています。そこで私たちは、年齢も国籍も多様性にあふれるスタッフが働いているなかでも、「串打ち」という職種で活躍しているシニアの方をテーマにインタビューを始めました。

ところが、人事総務部・部長の神山氏と道頓堀中座店・店長の山本氏に「スタッフの年齢」について伺うと、時折すこし困ったような表情を浮かべます。鳥貴族では「スタッフの年齢」を基準にして何かを考えるということがほぼなかったためです。

ここには、多様性を生かすチームを当たり前のようにつくってきたベテランと、ベテランたちの想いがつまった共通価値観「トリキウェイ」の言葉を頼りに成長する若者の姿がありました。

インタビュー対象者略歴

神山 大樹(写真・右)
管理本部 人事総務部 部長。2005年に鳥貴族へ入社。店長、エリアマネージャー、本社での教育担当、労務管理などを経て、2022年より現職。

 

山本 康輔(写真・左)

鳥貴族 道頓堀中座店 店長。蕎麦屋での修行を経て、「大きな飲食チェーン企業で店長ノウハウを学びたい」と考え2017年に鳥貴族へ入社。

企業情報

■株式会社鳥貴族
■所在地/大阪市浪速区立葉1-2-12
■設立/1986年9月19日
■従業員数/9,902名(パート・アルバイト含む)
■事業内容/全品均一価格の焼鳥屋。使用する食材は国産にこだわり、一本一本丁寧に串打ちした焼鳥を、手作りのタレで焼き上げてお客様に提供。価格・商品・接客・内装にこだわり、低価格・高価値なサービスを追求し、一過性の流行に左右されない一貫した強い店舗づくりを行っている。

大学生から70代まで。多様なスタッフが働く鳥貴族

――鳥貴族さまでは、どのような方が働いているのでしょうか。

 

神山 大樹 (以下、神山):鳥貴族は1986年に設立され、大阪府・兵庫県・東京都を中心に焼鳥屋「鳥貴族」などを展開しています。「鳥貴族」の店舗数は617(2022年10月現在)、従業員数は9,900名を越え、そのうち90%以上がアルバイト・パートのスタッフです。

 

――そんなにアルバイト・パートの方が多いのですね。

 

神山:ホール・キッチンスタッフとして働くのは10~20代の学生が中心ですが、鳥貴族では各店舗で一本一本串打ちすることにこだわっており、それらの仕込み作業は開店前の午前から夕方前にかけて専任のスタッフが行います。

その仕込みの仕事については以前から子育て中の30~40代の主婦の方や、子育てを終えた50代の方、シニアの方に活躍いただいており、現在では50~60歳の方が673名、61~65歳の方が186名、70歳以上の方も4名いらっしゃいます。

 

――鳥貴族でシニアの方がそんなに働かれているとは。驚きです。

 

神山:私も以前は現場で店長をしていましたが、最高齢だと68歳の方を採用したことがあります。もともとその方の妹さんが鳥貴族で働かれていて、「姉が仕事を探しているのですがうちのお店で働けますか?」と相談を受けたのがきっかけです。妹さんも10年以上鳥貴族に勤務いただいていた方で、その方が紹介するならきっといい方だろうと、迷わず採用しましたね。

 

――きっと、妹さんにとっても働き心地がよかったのですね。

 

神山:ちなみに、姉妹だけじゃなく、その方のお孫さんも鳥貴族でアルバイトをしていました(笑)。私がマネージャーで立ち上げたお店で見覚えのある苗字の方がいらっしゃったので、もしかしてと思って聞いてみたら実はお孫さんだということが分かって。うれしいご縁もあるものだなと感じました。


シニア採用を語る株式会社鳥貴族の神山大樹部長

年齢は重要じゃない。チームに必要なのは「協調性」

――年齢は特段気にしていないとなると、採用においては何を重視されているのでしょうか?

 

神山:私がとくに重視していたのは「協調性」です。たとえば同じスキル・経験で若い方からの応募があったとしても、協調性があればシニアの方を採用します。

 

――それはなぜですか?

 

神山居酒屋の運営はチームワークで成り立っているからです。たとえばお客さまが飲み終えたグラスを洗い場のスタッフへ渡す場合も、鳥貴族ではスタッフが洗いやすい位置・向きに置くことを心がけます。一つひとつは細かいことかもしれませんが、チームで働くにはそういったことの積み重ねが大切なんです。

串打ちにおいても同じです。一見個人プレーに思えるかもしれませんが、実際には1店舗あたり3~4人ほどでチームを組み仕事をするため、やはり「協調性」が大事になります。そのため、採用においても年齢やスキル・経験ではなく、「協調性はあるか」「今のチームメンバーとうまくやっていけそうか」を重視しています。

 

――スタッフの9割以上がアルバイト・パートという点でも、やはりスタッフ間のチームワークが大切ということですね。

 

神山:基本的には、スタッフのみなさんには明るく楽しく働いてほしいんです。せっかく働くからには、「お金以外の何か」も得てほしいと考えます。

 

―――お金以外の何か?

 

山本 康輔(以下、山本):たとえば鳥貴族で働かれている学生さんは、1日5時間くらい、長い方だと8時間くらい働きます。そこに対してすごく考えることがあって。

睡眠時間が8時間、生活や食事で4時間くらい、あとは5時間くらいは学校に行ってるとしますよね。そう考えると、残り時間の大半、20代の貴重な1日の大半を鳥貴族がもらっているんだなと思うんです。時給が1,000円だとしたら、1日で5,000円。20代にとっての1日って5,000円以上の価値は絶対にあるじゃないですか。

だから「お金以外」にも、たとえば僕がこれまでの経験で得たものや、考え方は、少しでもアルバイトの方に伝えていけたらなと思います。

 

神山:それはシニアの方にとっても同じです。たとえば串打ちの仕事が速くできるようになって「達成感」を得るでもいいですし、職場で家族以外の方と交流して、元気をもらうのでもいい。

最初は教わる側だったのに自分が教える側になれてうれしいとか、串を焼くアルバイトの学生に「●●さんの串は焼きやすかったよ」と感謝されてにんまりとか。

でもそういう喜びがすべてかというとそれも違和感はあって、黙々と仕事をするのが心地いいという人もいます。やはり年齢で何かが決まるわけではなくて、一人ひとり違うというだけなんですよね。


シニアに助けられていると語る株式会社鳥貴族の山本康輔店長

年齢・立場にかかわらず、お互いに「助け、助けられる関係」

―――年配の方を雇用するとなると、マネジメントをどのように行うかを気にされる企業も多いと思います。

 

山本:私の場合は、相手がシニアの方だからといって特別なことはしていません。しいて言えば「前に立たない」ことでしょうか。

 

―――前に立たない?

 

山本:私にとって、60代の方であれば人生の大先輩ですし、祖母に近いほどの年齢差になります。だから店長という立場であっても、私が上から「引っぱる」のではなく、「頼る」「お願いする」という姿勢を大切にしています。鳥貴族には多様な年代の方が働いていますから、みんなでひとつの家族になるような感覚ですね。

 

――コミュニケーション面以外ではいかがでしょうか?

 

神山:作業面において、なるべくスタッフに負担をかけない工夫をしています。作業手順のマニュアルを紙から動画に変えるというのはもちろんしています。串打ちにおいては、まな板が重いという意見があったので軽くして年配の方でも持ちやすいようにしたり、すこしでも調理がラクになるようにみじん切りにはみじん切り機を導入したり。

熱湯を使うとやけどの危険があるので、熱湯を使わなくていいように工程を変えたというのもありました。人を中心に考え、誰もが仕事をやりやすくなるよう、日々改善を進めています。

 

――コミュニケーション面でも、作業面でも、人と向き合い、働きやすくなる工夫をされていると。

 

神山:そう言われると大層なことをしているように思えるかもしれませんが、基本的にはこちらが助けられることが多いんです。たとえばミドル・シニアの方は、一度働くと10年以上働いてくださる方もいます。また、すでに子育てを終えられた年代の方だと、急なお休みなどもなく安定的にシフトに入ってくださいます。

串打ちは単純な作業のように見えて、実は熟練度のいる仕事です。慣れれば慣れるほど、たくさんの串が打てるようになります。だから、スタッフの方には長く安定的に働いてもらえるほうが、企業としても大変助かります。鳥貴族に新入社員が入った場合、串打ちを教えるのはたいていベテランのパートの方です。

 

山本:私も、店を離れないといけなくなった場合「ちょっと頼めますか?」とお願いしたり、ときには「このシフトだと回らないですよ」とベテランのパートの方にアドバイスをもらうこともあります(笑)。本当に、こちらが助けられてばかりですね。


株式会社鳥貴族の文化を残していくためのトリキウェイ”

企業が大きくなっても、文化を残していくための「トリキウェイ」

――最後に、今後の展望を教えてください。

 

山本:私もマネジメントについてはまだまだ試行錯誤中です。今はシニアの方に対して「頼る」「お願いする」という姿勢でいます。お孫さんやお子様と私が同じ世代なので、シニアの方も「育ててあげよう」という気持ちなんだと思うんですよね。

でも私の年齢が上がれば、同じように見られないのは間違いない。こうするべきというアイデアはまだありませんが、別の関わり方が必要になってくるはず。相手は人だからこそ、正解はありません。日々、人と向き合い、トライしながら、「よい成功例」を鳥貴族内でも浸透させていきたいです。

そのひとつの指針となるのが「トリキウェイ」だと考えています。とくに「正しい人間」「利他の精神」「プラス発想」「自己責任」の4つについては、アルバイト・パートの方とも同じ価値観をもてるように、いつもこの言葉を使って話しています。

この「トリキウェイ」は鳥貴族で働く全員が幸せになってほしいという想いを込めてつくられた共通の価値観ですが、私は「チームづくりの中心に立つためのノウハウ」でもあると解釈しています。学生からシニア、外国人の方まで多様な方が働いているからこそ、お互いの多様性を認め合いながら、チームワークを発揮する必要がある。その秘訣が「トリキウェイ」にあります。

 

――「トリキウェイ」を中心に多様な方が幸せに働く世界。楽しみです。

 

神山:今まで、鳥貴族としてはシニア採用などはとくに意識することなく、当たり前のように行ってきました。しかし、今後労働人口が減っていく中で、より意識的に多様性を活かした採用が必要になると考えています。

鳥貴族では現在「1,000店舗の出店」をひとつの目標にしていますが、そういった意味でも各々が現場で当たり前に取り組んできた文化・取り組み・マネジメントを、きちんと言語化し、組織として再現性を高めていくことが重要です。人事として、今後はそういったことにも取り組んでいきます。

トリキウェイの浸透とシニア採用~インタビューを終えて~

私たちがなぜ存在するのか、多くの企業がそれをフィロソフィーやパーパスという言葉で表現するようになりました。その言葉の中には、創業者の想いが込められているというものも少なくありません。鳥貴族が掲げる「トリキウェイ」という共通価値観は、まさに創業者の試行錯誤の経験によって紡ぎ出されたものになります。

ただ言葉として掲げると、同時に課題になるのは、その真意が正しく社員に伝わっているかということ。企業規模が大きくなればなるほど、従業員数が多くなればなるほど、いかに社員に浸透させるかに企業は頭を抱えます。

しかし鳥貴族は、店長とアルバイト・パート、店長とエリアマネージャーの日常的なコミュニケーションやフィードバックに「トリキウェイ」の言葉をつかうことで、創業者の想いがしっかりと現場に浸透しています。「トリキウェイ」の1番目にある「正しい人間」にとって、シニア採用はあまりに当たり前のことでした。

一人ひとりを大切にすることは誰もがわかっているけれど、いざ話を始めると不思議と「シニア」というカテゴリで話してしまう私たちに、「トリキウェイ」は多くの示唆を与えてくれるように思います。



※インタビュー内容は、2022年11月時点のものです。


 

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