セルジオ越後 発案「エラシコ」誕生秘話 リベリーノ・ロナウジーニョらが普及

サッカー

2020.8.19

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世界的なフェイント「エラシコ」を発案したセルジオ越後


【セルジオ越後の言いたい放題】
今回は「エラシコを開発したのはセルジオ」という都市伝説を検証。ロナウジーニョなど世界のトップ選手たちが使うようになったエラシコにまつわるエピソードを語ってもらった。


ー「エラシコを開発したのはセルジオ」という都市伝説は本当ですか?

当時、僕にとってのアイドルが2人いました。1人はブラジル代表の右ウイングのガリンシャというとんでもない選手。もう1人は世界的に神様と言われるペレ。

ガリンシャは右ウイングをやっていたから、アウトサイドで瞬発力を使って外にしかフェイントをかけない。反対に、ペレは外に出るフリをしてぴょんっと内側に返して中に入る。それで僕は遊びながら、「ガリンシャとペレのフェイントを組み合わせたらこうなるな」とやっていたら技ができました。

それを、コリンチャンスの選手時代に紅白戦でポンポンとやったら、相手のセンターバックがびっくりして、周りのみんなも「何?何?それ何?」と驚いていました。エラシコというのは輪ゴムという意味なんですが、伸ばして戻すからそんなニックネームがつきました。

ブラジルでは遊びの中で気楽にやっている中でそういうフェイントが生まれたんです。練習の中では生まれないですね。

子どもの世界は目から情報が入りますから、遊んで周りに見せる中で学んでいくことが大事だと思います。僕も色々な人のフェイントを自分のものにしたと同時に、自分が作ったフェイントを人に見せました。

ただ、(エラシコが)有名になった一番の理由は、僕の同僚のリベリーノという選手が世界的に有名になったんですが、彼が色々とフェイントをやっていてみんなは彼がエラシコを作ったと思っていました。

一番反響があったのは、日系人が、日本人の子がエラシコを作ったという事実ですね。

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ロベルト・リベリーノ 写真:PICS UNITED/アフロ


今でもロナウド(元ブラジル代表)がテレビ番組に出て「ありえないよ。ブラジル人が日系人にフェイントを教えられるなんて」なんてことを言っています。そいうところで話題にはなるんですが、僕からしたらあくまで技術の一つ、フェイントの一つです。数え切れないくらいの足技がありますから。今は子どもたちも平気で足技をやりますね。

リベリーノとロナウドとジーコらが出演したある番組で、リベリーノが「あのフェイントはどうやって作った?」と質問された時に、「俺じゃないんだ。俺と一緒にプレーしていた友達で、セルジオ越後という日系人が作ったんだ」と言ったんです。

そうしたらロナウドが「ブラジルのサッカー選手が日系人にフェイントを習うのはありえないよ」と言って番組で紹介されたことで、僕の名前が広まりました。

そこから、ロナウジーニョが覚える、みんなが覚える、という風に世界中に広まっていきました。だから僕はいつも言うんです、「フェイントでロイヤリティーを貰えたら、僕は金持ちになる」って(笑)。

それまでは日本でサッカースクールをやっても誰も僕のことを知らないんです。だから歳を取ってから有名になりましたね。体操では人の名前が技の名前につくけど、残念ながらサッカーには人の名前がつかないですよね。


ーブラジルで使われているサッカー用語を教えてもらえませんか?

上手い選手のことを「ボラシェイア」と呼びます。空気がいっぱい入っている、元気なボールという意味です。

反対に、下手な選手のことを「ボラムシア」と呼びます。空気が抜けたボールという意味です。意図した通りに動かないからです。ボールに空気が入っているかどうかの違いで、上手か下手かのニックネームをつけるんです。

試合中に使われる言葉としては、日本ではそういう言葉は使わないように指導されますが、例えば周りが見えていない時に相手選手が背後からボールを取りに来たら「泥棒が来た!」と味方の選手に教えます。

盗みに来た、という意味です。短くて的確にその状況を示す独特の言葉が、サッカーには多いですね。