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「「神と呼ばれ、魔王と呼ばれても」」 作者:しまもん(なろう版)
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戦いの始まり

特別神官は年に一回だけ、女神教の総本山に集まり、大きな会議をする事になっている。

この会議でそれぞれが一年間に感じた世界に対する所見を述べ、今後の方針を決めるのだ。


巨大な会議室に世界中から集まった様々な人種の特別神官が入っていく。

俺も指定された席に座り、会議が始まるのを待った。


そして、全ての特別神官が着席した事を確認すると、司会役の特別神官が大神官様を呼びに行く。

するとヨボヨボになった大神官様が、杖をつきながら会議室で一番大きな席に座った。


司会役が大神官様の着席を確認した後、今年の特別神官会議が始まる。


会議の進行は単純だ。

一人一人が起立して、世界に対する己の所見を述べていく。

ただ、それだけだ。


ベテランの特別神官達は、流石としか言いようが無い所見を述べ、そのうちのいくつかが会議の議題になった。

一方で俺みたいな新人特別神官に会議のテーマになりそうな重要な所見は無い。


まあ精々、


「最近は、他人を思いやる気持ちを持たない者が増えてきたように感じます」


という程度だろう。


この毒にも薬にもならない発言で会議が動くはずもなく、少数の特別神官が頷いただけだった。


これで俺の仕事はおしまい。

着席し、あとは会議が終わるのを待つだけだ。


夕方になれば一度解散して、翌朝から続きをやる。

こんな会議が1週間程度続くのだ。


正直暇で暇でしょうがないが、ここは女神教の総本山がある国だ。

もともと世界で一番大きな国だったところに、巨大な神殿が作られている。

という事は、この国には大量の美人な女どもがワンサカいるわけだ。


それだけではない。


神殿では大勢の下級神官どもが働いている。

その中には可愛い神官も大勢居る。

より取り見取りだ。


俺が声をかければ、女どもは嬉々として部屋についてくるだろう。

どうせ子供が出来ても世話をする必要なんか無いんだ、女とは気楽に遊べる。


実際、俺の子供を孕んだ女の一族代表が俺に会いに来た事があった。

いい年齢をしたおっさんが泣きながら感謝の言葉を言うのだ。


「ありがとうございます! ありがとうございます!

加護者様の子供を授かる事が出来るなんて!! これほどの幸せはありません!!

産まれる子供は我が一族の宝として大切に! 何不自由なく育てます!」


そしておっさんは「お礼の気持ち」として大量の高級品を貢物として持ってきた。


(いやぁ、好きなだけ女が抱けて、後腐れが無いというのは最高だ。

孕ませれば孕ませるほど感謝される。

特別神官というのは一度やったらやめられないな!!


時々偉そうに聖書の一文を読み上げるだけで、周りの無能どもは泣いて感謝する。

よく分からんトラブルに巻き込まれたら、黙り込めばいいのだ。

そうすれば周りが勝手に誤解して、勝手に解決する。


それもこれも女神様と大神官様のお陰だ!!

あなた方には、毎晩毎晩感謝しているんですよ?

女どもを布団代わりにしながらですがね!!)


俺は心の中でゲラゲラ笑いながら、外形は平静を保った。

この程度の事はお手の物だ。



夕方になり、今日の会議は終わった。

これで翌朝まで自由時間だ。


(さて、何をしようか??

町に出かけるというのも良いな。

護衛の騎士達に命じて好みの女が居たら連れて来させようか?


念のため媚薬は大量に持ってきた。

女どもにも効率的な注射を打つ方法を聞いておいたから、これだけ大量の媚薬を注射すれば効果は抜群だろう。


いや、それよりどこかの商会に出かけようか?

これほど大きな国であれば、「寄進」される品にも期待が持てる)


俺はわくわくしながら会議室を出ようとした。

そんな時だ。


既に太陽は半分姿を隠し、空には星がきらめき始める時間だというのに、何の前触れもなく、夜空に巨大な「光の玉」が現れたのだ。


そして、外はまるで昼間の様になった。




緊急事態発生により、会議は延長された。


時計は既に夜9時を示している。

しかし、夜空に次々と光の玉が現れるため、外は夏の昼間の様に明るい。


光の玉は音もなく唐突に現れ、数秒間太陽の様にギラギラと輝き、また音もなく消えていく。

夜空にはそんな光の玉がいくつも現れては消えていくのだ。

これを異常事態と呼ばずに何と呼べばいいのだろうか?


会議室は騒然としている。


「あの光は一体何だ!! 何が起こっているんだ!!」

「これはただ事ではない!! 世界の危機かも知れんぞ!!」


「もしや巨大な魔物が暴れているのか!?」

「夜空に輝く魔物が居るとでも言うのか!? 馬鹿馬鹿しい!! 夜空に輝いて一体何をしようというのか!!」


普段は平静を保っている特別神官達がうろたえ、お互いに怒鳴りあうように討論している。

そんな緊急事態が起こっている時、俺は何を考えていたかと言うと、


(何が起こったのかはわからないが、さっさと終わって欲しいもんだ。

こっちは今夜の予定を考えなくちゃいけないのに。


・・・そういえば、さっきチラリと見えた2級神官は中々可愛かったな。

よし、今夜はあいつで遊ぼう。


まあ、会議が終わるまで後6日もあるし、全力で楽しむのは禁物だ。

持ってきた媚薬には限りがある、大切に使って節約しないとな。


・・・ううううん・・・しかし俺の事だ、興奮したら一晩で使い切ってしまうかもしれん・・・。

それは困るな・・・、ううん・・・、どうすれば・・・。


ああ! そうだ!! この国でも媚薬は売られていないだろうか!?

世界で一番でかい国だし需要はあるはずだ!!

強力なヤツがあれば、箱単位で「寄進」させればいい!!


そうと決まれば持ってきた媚薬は今夜中に全部あの神官にくれてやろう!!

一度に大量投与するための特注して作らせた巨大な注射器も私物箱に入れてあるしな!!

十数人分の量を一度に、一番効果があると教えられた血管に注射しよう!!


あの神官は女神様に会えるくらい気持ち良くなるに違いない!!

さてさて、あの2級神官は「他人を思いやる気持ち」があるのだろうか??


まあ、無くてもそれはそれで楽しめるか!!

冷たくなった女というのも、中々気持ちが良い物だったしな!!

今夜が楽しみだ!!)



等と普段と大して変わらず、今夜の予定で頭が一杯だった。


そんな殺伐としている会議室に大神官様がやって来た。

大神官様は静かに着席し、一言


「静粛に」


と言い放つ。


その一言で騒然としていた会議室は静まり返り、会議室には特別神官達の呼吸音だけが残る。

会議室が静かになった事を確認した大神官様は立ち上がり、そして力強く宣言したのだ。


「今こそ! 我ら加護者の力を見せる時ぞ!」


この一言で俺の運命は決まった。


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