「他人を思いやる」
夕飯後。
俺が寝室で待っていると、騎士達が女を連れてきた。
騎士は暴れる女をベッドに押し倒し、身動きできないように拘束する。
拘束された女は必死に叫ぶ。
「加護者様! 私の腹には既に夫の子供がおります!! どうか! 産まれるまでお待ちください!! やっと身ごもった子供なのです!」
女は涙ながらに訴える。
「もう子供が出来ないと諦めていたとき、やっと身ごもったのです! 今、激しく動いてしまうと、この子が流れてしまいます! どうか! どうか!」
屈強な騎士達に拘束され、身動き一つ出来ない妊婦はポロポロと涙を流し、懇願してきた。
そうか・・・。
お前は、そんな事になっていたのか・・・。
俺は、そんな状態の女を犯そうとしていたのか・・・。
・・・それは・・・、とてつもなく! 興奮するではないか!!!
久しぶりにみなぎって来る!!
お前達が必死に作った結晶を、俺の「信仰心」で貫いてやろう!!
翌朝。
隣で寝ていた妊婦は、既に冷たくなっていた。
そういえば、最初の頃は随分体温が高かったのに、途中からいきなり体温が低下したな。
何度か度数の高い酒を肛門から腸に入るだけ流し込んだが、結局体温は戻らなかった。
(・・・まあ、冷たくなった分、随分気持ちよかったのだが。
あれは新体験だった。
また今度やろう)
しかし、この妊婦はくたばっていたのか。
ああ、もったいない事をしたな。
肛門から流し込んだ酒はそこそこ高級品だったのだが。
まあ、どんな高級酒であっても簡単に補充できるし、同様に女も補充は容易い。
何故なら俺は加護者だからだ。
俺の行いは全てが肯定され、ゴミどもの尊敬を集める。
こんな妊婦が何人死のうが関係無い。
この国に住むゴミども全員よりも、俺のほうが価値があるんだ。
それにこの妊婦も幸福だったんじゃないか?
最後に加護者に愛されたんだからな。
今頃、女神様に祝福されているだろうよ。
良かったな。
おめでとう。
俺は寝室の外で待機していた騎士達に命じ、生ゴミの処理を任せた。
(やれやれ、あの程度で死ぬからゴミなんだ。
全く、俺はあの妊婦に粗相をされた絶対的な被害者だ。
このベッドはお気に入りだったのに、生ゴミが乗っていたとなると新しくしなくてはならないじゃないか。
仕方ない、今晩は隣の寝室で寝るとしよう。
いい迷惑だよ、本当に。
ちょっとはこっちの気持ちも考えて欲しいもんだね。
「他人を思いやる」という基本的な気持ちが欠如し始めている様に感じるよ。
それと多少の我慢くらい出来ないとだめだろう。
だからあの程度でゴミが生ゴミになるんだ。
これは女神教の信仰をもっと広めないと駄目だな。
はぁぁ~~~~、こいつらゴミどもの低脳っぷりには頭痛がしてくるよ。
本当に、世界には加護者以外はゴミしか居ないな)
俺は軽く頭を振ると、小さくため息を吐き出す。
(・・・さて、気を取り直して、朝食にケチを付けるとしますか)
騎士達が人間大の袋に生ゴミを入れて寝室から運び出すのを確認すると、俺は朝食を呼ぶベルを優雅に鳴らした。
チリンチリンと繊細な音が部屋に響く。