社説

リンゴカがオープン「地域を担う人づくりの拠点に」

 藤崎町にある旧弘前実業高校藤崎校舎が、「ふじさき産業文化交流施設 RINGOCA(リンゴカ)」に生まれ変わった。全国で唯一「りんご科」があった同校舎の建物やグラウンドなどを利活用した複合施設で、「ふじ」発祥の地といった歴史・文化に触れ、スポーツも楽しめるほか、農業と福祉の機能も備えているのが特徴だ。新たな交流拠点となり、産業育成や農福連携の促進につながることを期待したい。
 同校舎は少子化に伴う生徒数減少により2019年3月に閉校した。跡地利用に向け県は、10年間公共または公共用で使用することを条件に町に無償譲渡し、新たな施設は町が約4億円を掛けて整備、改修した。
 校舎は見て、触れて、体験できるミュージアムや農福連携の屋内ファームなどを備えている。1階には町や藤崎校舎の歴史・文化を伝える年表、リンゴにまつわるクイズやゲーム、フォトスポットなど幅広い世代が楽しめる「リンゴカ・ミュージアム」と町内外の人が利用できる食品加工室を設けた。2、3階は指定管理者のNPO法人が運営する障害福祉サービス事業所と屋内ファームがあり、事業所利用者らが青森きくらげ、シイタケ、ナメコの菌床を栽培し出荷する。体育館は全面人工芝化し、子どもたちが楽しめる屋外トランポリン「ふわふわドーム」を設けた多目的グラウンドも整備した。
 施設の愛称は、全国の高校で唯一、リンゴ栽培を専門的に学ぶ「りんご科」が同校舎にあったことにちなんでいる。旧校舎は黒石高校藤崎分校として開校し、五所川原農林高校藤崎分校時代の1972年度、りんご科が誕生した。74年に藤崎園芸高校、2008年度からは弘前実業高校藤崎校舎となり19年に閉校した。この間、地域やリンゴ産業を支える人材を多数輩出してきた歴史があり、日本一のリンゴ産地を守り、育て、未来を築く原動力として果たしてきた役割は大きい。
 リンゴ産業は農家の高齢化が進み、人口減少社会のさなかにあって後継者や担い手の不足が深刻化している。輸出が好調な一方で国内消費の掘り起こしも欠かせないなど、日本一の産地の維持発展に向けては課題が山積している。こうした中で、新たな施設がリンゴの魅力にさまざまな方面からアプローチするきっかけになれば幸いである。障害者らの社会参画と同時に農業の担い手確保につながる農福連携についても理解が一層進み、今後活発化することを願いたい。
 廃校利活用策の一つとしても注目されるだろう。かつて生徒たちが学び、にぎやかに過ごした場所が、今度は形を変えて老若男女問わずさまざまな人たちの学びや交流の場となる。地域を支える人材を育み、農業や観光といった産業振興を図りながら、魅力ある地域づくりに寄与することを期待したい。

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