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「「神と呼ばれ、魔王と呼ばれても」」 作者:しまもん(なろう版)
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少女に届いたエースの決意

(また、防衛線を突破した。


すごいな、ここまで人工知能を手玉にとって戦うパイロットが居るなんて)


私は戦場の様子が表示されているディスプレイを見ていた。

そこには一機の戦闘用ロボットが表示されている。


そのロボットは既に、私が乗っている旗艦の目と鼻の先まで来ているのだ。



艦隊を指揮している人工知能は敵戦闘機の基本データを記憶し、それに対応するようにミサイルやビームを撃っている。

その為、大半の連盟ロボット達は私の艦隊に接触すると同時に撃破されている。


しかし、この機体は他の機体とは全く異なる性能を持っている。

他の機体よりも明らかに速く、そして機動性があるが、それだけではない。

操縦しているパイロットも多分エースなのだろう。

人工知能が敵機の回避パターンを記憶し終える頃には新しい回避パターンを繰り出すので、情報処理が追いつかない。


実際、この機体にドローンを進入させるのは本当に苦労した。

まるでネズミの様に、ちょこまかと動き回るのだ。

旧式の人工知能では処理するのに時間がかかるのも納得してしまう。


ロボットには一人の男が乗っていた。

ボロボロになった歯を噛みしめ、私に対して確固たる敵意を向けている。


そこには恐怖や不安といった感情は一切無い。

まるで生きるナイフの様なパイロットだ。

敵を切ることしか出来ないが、どんな状況になろうとも敵を切り裂こうと前進してくる。


そんな切れ味の鋭いナイフの様な男は、血の涙を流しながら機体を制御している。



(ああ、また防衛線を突破した。

人工知能の焦りが手に取るように分かる。


凄い! 凄い! 凄い!

ひょっとしたらここまで来れるんではないだろうか?


しかし・・・、来てどうするのだろうか?)



彼の機体を調べたが、機体には一切の武装が無かった。


それだけではない。

なんと彼自身も拳銃やナイフすら持っていないのだ。


これでは私の戦艦に体当たり位しか出来ないではないか?


旗艦より多少劣るが、他の戦艦も強靭な防御力を持っている。

そんな戦艦すら傷つける事は出来ないだろう。

その程度の攻撃では、この巨大な旗艦に傷をつけるなぞ、夢のまた夢だ。


もちろん彼もそれを承知なのだろうが、では一体どうやって? 何をしようというのか?

確かに私を殺そうとする強い意志を感じる。

しかし、彼に武装は無い。

矛盾しているのだ。


だが、私は知っている。

一見矛盾している様な事には、深い意味があることを。


多分、彼には秘策があるのだろう。

暗黒の宇宙で強い輝きを放つ男がどんな秘策を持っているのだろうか?


わくわくする。

興奮する。

まるで中身の見えないプレゼントを貰うかのように、私はディスプレイに注目していた。


そして終に、彼は私を見つけた。


既にロボットはボロボロだ。

エンジンは後10分程度で爆発するだろう。

いや、それより先に穴だらけの機体が空中分解するだろうか?


彼は必死に通信をしている。

耳を澄ますまでも無く、その全てが私の耳に届く。


彼の願い、想い、決意、そして秘策・・・、その全てが私の耳に・・・、そして私の心に・・・、届いた。




(ああ、そうか。

君もか。

君も・・・、そうなのか・・・)




「何故なんだ。

何故・・・、何故! 私をそこまで惹きつける!!

一体、誰が知っていただろうか!?


純粋な敵意が! ここまで心地よいなんて!!

確固たる決意が! ここまで温かいなんて!!

揺るがない殺意が! ここまで私を魅了するなんて!!


君は言うだろう! 俺を撃てと!!


早く言ってくれ!! そして私を攻撃してくれ!!

頼む言わないでくれ!! 投降してくれ!!


ああ! 君の決意が実を結ぶ瞬間が見たい!!

ああ! 君の意思が宇宙から消え去るのを感じたくない!!


嫌だ!! 嫌だ!!


感じる! 君の後ろからやって来る膨大な量の殺意が!!

聞こえる! 君の最後の声にならない囁きが!!!



君達の想いが! 私に近づいている!」



次の瞬間、男の機体は爆散し、旗艦に攻撃が直撃した。




既に惑星連盟艦隊は当初の3割近くまで落ち込んでいたが、それは数百万隻という残存艦隊の総力を挙げた攻撃だった。


巨大な塊となったビームやミサイルは攻撃の直線上に存在していた地球軍の戦艦を何隻も沈めると、勇敢な男の乗る機体を撃破し、私が乗る旗艦に直撃したのだ。


直撃した膨大な量のエネルギーに、旗艦のバリヤーは必死に耐える。


しかし、何重にも展開された強力なバリヤーであったが、彼らの想いは、その全てを突破した。

彼らの敵意が、男の決意が、私が居る艦橋に直撃したのだ。



それは、すさまじい衝撃であった。


バリヤーを突破した大量の光は艦橋の装甲に穴を開け、私が居る司令室に爆発を起こした。

様々な部品が飛び散り、司令室の中はグチャグチャになる。


しかし、その直後から旗艦は己の修復を始める。


黒煙をあげる司令室は即座に修復が始まり、飛び散った部品は回収され、破壊された回路とは別の回路が接続されてディスプレイは復活する。


攻撃が直撃した数分後には、旗艦は全ての機能を回復させていたのだ。

装甲に出来た小さな穴も修復され、既に旗艦にダメージは残っていなかった。


・・・そう・・・、「旗艦に」ダメージは残っていなかった。


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