福岡県中間市の保育園でバスに取り残された5歳の園児が死亡した事故から、10月29日で3カ月が経った。なぜ命を落とさなければいけなかったのか…。遺族が現在の胸の内を明かした。
カメラの前で元気にポーズを取る男の子。2021年7月、中間市の双葉保育園で炎天下の駐車場に止められたバスの中に約9時間取り残され、熱中症で亡くなった倉掛冬生ちゃんだ。わずか5歳の命だった。
この記事の画像(16枚)冬生ちゃんの祖父:
バスの中を最終チェックしておいてくれれば、こんなことは絶対なかったと思う。それが歯がゆくてたまりません
事故後の調査で、バスを運転していた園長が降車確認をしていなかったことなど、園のずさんな安全管理体制の実態が次々と明らかになっていった。
「押し入れ部屋に入れられて…」元園児の姉弟が証言
さらに園内では“虐待行為”も…。
元保護者:
泣いている子どもの口に何回も飲み込んでないのにご飯を入れてたりとか、早く食べろって感じでした。みそ汁の中にご飯入れて、ガシャーって
こう証言するのは、3年ほど前、子どもを双葉保育園に通わせていた元保護者だ。さらに元園児にも話を聞くと、ある存在が浮かび上がってきた。
4年前に卒園した双葉保育園の元園児:
ちょっと椅子に当たって、それで倒れただけで押し入れ部屋に入れられて、倉庫みたいなところに閉じ込められた。そこに連れて行かれる人は多かったです
そう語るのは、4年前まで通っていた男の子だ。そして、その姉も…。
7年前に卒園した双葉保育園の元園児:
私も1回(押し入れ部屋に)入れられたことがあって…。床が濡れていたんですよ。私がその水に1番近いところにいたから…こぼしたのかみたいな感じになって。「違うんです」って否定したけど「いや、あなたしかいないんじゃん」みたいな
3カ所以上の“押し入れ部屋” 元職員が見たもの
罰として閉じ込められたという“押し入れ部屋”は、どんな部屋なのか?
元園児が見せてくれたのは、4年前に行われた卒園式の映像だ。そこに、押し入れ部屋が映り込んでいるという。
4年前に卒園した双葉保育園の元園児:
先生が座っている後ろが、押し入れ部屋です
ホールの右手に見える扉。ここが“押し入れ部屋”だったという。
その中の様子は…。
7年前に卒園した双葉保育園の元園児:
すごく狭くて暗くて、光が当たらないんですよ。すごく何か不気味で、そこにバンッって入れられて、反省しなさいってドア閉められて。最初は泣いてたんですよ。ごめんなさいしか言葉が出なくなって
7年前に卒園した双葉保育園の元園児:
時間は分からないんですけど、落ち着いた時に先生が来て「反省しました」って言ったら、「じゃあ外出ていいよ」って、やっと開放された
さらに、この保育園の元職員も内情を教えてくれた。
双葉保育園の元職員の証言:
押し入れ部屋は、1カ所だけではありません。2歳児用のトイレや別の倉庫など、3カ所以上ありました
双葉保育園の元職員の証言:
おととし(2019年)、2歳の子を布団です巻き状態にして、トイレに4時間以上放置しているのを見ました
元職員によると、“押し入れ部屋”に閉じ込める行為は、常態化していたという。
冬生ちゃんの親族「新しい保育園にならないと浮かばれない」
事故後、福岡県と中間市は、園に対して特別監査を実施した。
その結果、職員らによる複数の園児への体罰や「バカ」「あんた嫌い」などの暴言が繰り返されていたことが確認され、園は改善勧告を受けた。
福岡県 子育て支援課・浦田智子課長:
頭をたたく、げんこつでたたく、腕を強く引っ張るといった行為を日常的に職員が行っていた
一方、県から虐待の報告を受けた園側の弁護士は…。
双葉保育園代理人・石渡一史弁護士:
行政は、どこをどう認定したのか、過程が全然示されてないので分からないですが、我々の調べた範囲ではそういうものは出てきておりません。納得できない
事故から3カ月。遺族はどのような思いでいるのか。
冬生ちゃんの祖父:
体罰とかなんとかっていうのは全然、僕は夢にも思ってなかったです
冬生ちゃんの親族:
新しい保育園になってもらわないと、冬生の亡くなったことが浮かばれないと思います
今回の事故を受けて中間市は、送迎バスについて「利用は原則、満1歳以上とする」ことや「園児が無断欠席した際の連絡を徹底する」ことなどを明記した独自の安全管理マニュアルを作成し、市内にある6つの保育園に送付することにしている。
警察は、業務上過失致死の疑いで捜査を進めている。
(テレビ西日本)