持続可能な自治会活動とは
≪おごおりトーク18≫
前回「まちづくりは人づくり」で、まちづくりにおける地域の人材育成=「人づくり」について考えてみましたが、今回は、まちづくり=「持続可能な自治会活動」と仮定して、小郡市の自治会活動の実態について考えてみたいと思います。
現在、地域では自治会、老人クラブ、民生委員児童委員、消防団など様々な組織や団体における後継者や役員のなり手不足の実態が浮き彫りになっています。
いずれの組織においても人を育て、担い手を確保しなければ組織は存続し得ません。しかし、地域の担い手確保はますます難しくなる傾向にあり、今後も高齢化と人口減少によって担い手は減ることはあっても増えることはない状況となっています。
私たちは、この深刻化する地域の担い手不足の問題にどう対処すべきなのでしょうか?
小郡市の地域自治の基盤となるのは自治会を中心とした地縁組織です。この自治会の特性として着目したいのは「ルーティン化による活動の継続性」です。
これは、自治会活動に関わる住民の意識に関わらず、それが認識されているかどうかを問わず、一旦、自治会活動として位置付けられた活動は、役員の交代があってもルーティン化され継続されていくという特性があります。
私の経験上の話ですが、小郡市の自治会というのは極めて保守的な組織です(笑)。
役員交代が常態化している組織ではある意味しかたがないことなのですが…。
自治会においては、自治会長(区長)さんは真面目で責任感が強く、個人的に組織の変革の必要性を感じておられる方が多いという印象がありますが、自治会全体では必ずしもそうではなく、役員会では「新しいことはやりたくない」「余計なことはしたくない」という雰囲気が大勢を占めています。その中で、変革意欲が強く、やる気のある自治会長(区長)さんは、逆に敬遠される傾向さえあります。
しかし、そんな保守的な自治会にも“強み”があります。それは「決まったことはやる」「これまでやっていたことは続ける」という継続性です。
これは「これまでやっていたことを止める」「これまでのやり方を変更する」ということになると、「誰が止めたのか」「何で変えるのか」という非常にややこしい問題が出てくるので、それを避けたいという思いからくるもので、少なくとも決まったことをやっていれば誰からも文句を言われることはないし、「なぜ止めるのか」を説明する必要もない、というのが実情かもしれません。
まあ、理由はどうあれ着目したいのは、役員交代が常態化している自治会における特性として、これまでやっていたことは続けるという「ルーティン化による活動の継続性」この“強み”を活かさない手はありません。
しかし、この“強み”を活かすためには、二つの留意すべき点があります。
一つは、これまで自治会で運用されてきた組織体制(役員会や隣組・班など)やルールなどを踏襲することです。
間違っても、既存の組織体制を変更したり、従来のルールを見直したりしないこと。これはタブーです。もう一度言いますが、自治会は極めて保守的な組織です(笑)
自治会にはそれぞれ運営に関する独自ルール(規約、細則、申し合わせ等)があります。それは自治会活動に関する住民の負担や責任を極限まで最小化し、公平化し、ルーティン化したもので、公式・非公式、民主的・非民主的な手続きも含めてこれまで運用されてきた明示・暗黙の掟と言っても過言でないかもしれません。
自治会は共通の目的や活動理念に賛同して集まった人たちで構成する組織ではありません。自治会活動に協力的な人や否定的な人、活動に参加できる人や参加できない人、関心がある人や全く関心のない人、多様性ある価値観や考え方、様々な事情を抱えた幅広い年齢層の住民を「地縁(住む土地にもとづく縁故関係)」というだけで包括的に構成している組織であるため、その中で一定のルールを定めること自体が至難の業で、「誰かが賛成すれば、誰かが反対する」という世界で、その運営は苦難を伴うものであることは容易に想像できます。
これまで自治会がまがりなりにも運営されてきたのは、長い年月をかけた住民相互の協議や節目節目での課題整理、その時々の意思確認を踏まえて、規約やそれに付随する様々なルールが作られてきたことに他ならない訳で、現在の組織のあり様は良くも悪くも一定の到達点だといえます。
ここに到達するまで紆余曲折、多くの住民との関係性の中で、気の遠くなるような時間と労力が費やされてきたという壮大な歴史とドラマがあるのです(笑)。
その歴史とドラマの違いがそれぞれの自治会の個性や特徴であり、地域性と呼ばれるものです。現在、市内に62の自治会がありますが、自治会という形態は一緒でも、同じ組織は一つとしてなく、その内情は全く異なる組織だといえます。
以前、私が、自治会における福祉協力者の一律的な制度化はそぐわないとしたのも、自主防災活動において自治会の実情に合った仕組みを構築することが必要だとしたのも、すべてこの理由によるところです。
もう一つは、自治会は無理のきかない組織だということです。
自治会活動とは、地縁で組織された住民の善意と発意による任意のボランティア活動です。そのときに重要なのは、個々の活動で決して無理をしないこと、そして、頑張らないことです。
以前も書きましたが、なぜ自治会バスの活動が10年にもわたって住民の力で支え続けられているのか。それは、ボランティア運転手が自分の生活の中で無理なくできる範囲内で活動を行っているからです。
たとえ一個人が無理をして頑張ったとしても、その人が負担に感じて継続できなくなったとたん活動が成り立たなくなるという事例は数多あります。地域でのボランティア活動はついつい無理して頑張ってしまいがちですが、継続をするためには個々人が「頑張らない」というゆるい関係こそが秘訣なのです。
まちづくりと言っても様々な分野がありますが、今回は、まちづくり=「持続可能な自治会活動」と仮定しました。つまり、ここでいうまちづくりは地域自治の基盤となる自治会を中心とした地域活動のことであり、この自治会活動においては継続性こそが重要だといえます。
持続可能な自治会活動とは、イベントのように派手で単発的な打ち上げ花火ではなく、極めて地味で目立たないもので、住民の日常生活に密着したもの、あるいは、日常生活そのものといえるかもしれません。
だからこそ、その活動が継続されるためには、それを担う住民の日常生活の中に自治会活動が無理なく溶け込んでいること、言い換えれば、自治会活動が個々人の生活の一部になっていることが大事だと思うのです。
私は、まちづくりにおいて自治会活動の継続性が重要であること、そして、その主体である自治会は「ルーティン化による活動の継続性」という特性を有していることを考えたとき、この特性を活用しない手はないと思っています。
それはつまり、すでに小郡市に地域資源として存在している自治会の「地域住民の相互扶助による支え合いのシステム」を有効に活用していくことにほかなりません。
少子高齢化と人口減少により生じる新たな地域課題の解決と住民ニーズへの対応、深刻化する地域の担い手不足の問題、また、公共サービスを行政だけで担うことはすでに困難な状況となっている中で、行政はこの保守的で無理の利かない組織である自治会とどのように向き合っていくべきなのか?このテーマについては、いずれ稿を改めて考えてみたいと思います。
(2021.10.10)
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